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後輩指導の悩みを解決!行動科学マネジメントの本の紹介

行動科学を使ってできる人が育つ 教える技術

著者 石田淳
出版社 株式会社かんき出版
分類 ビジネス書
出版日 2011/6/21
読みやすさ ☆☆★

今回は、私が初めて手にした後輩や新社会人の方の指導や育成に関する本を紹介させていただきますね。

後輩指導の悩みに役に立つ1冊

リーダーの心得本の次は後輩指導や育成に悩んでいた


以前紹介した『シンプルだけど重要なリーダーの仕事』で、プロジェクトリーダーとしての心構えを勉強した私は実践で使えるノウハウ本を探していました。

その時に数冊見比べて購入した本が、石田淳さんの『行動科学を使ってできる人が育つ 教える技術』でした。


指導の悩みに応じた事例は若手のリーダー、専門分野の研修生指導向き

「教える」ということは、学び手に結果を出すための望ましい行動を身につけさせたり、望ましい行動に変えたりすることだからです。
p10 はじめに


この本で特徴的な考え方に『行動科学』という指導の方法があります。

後で補足しますが、行動科学では教える側の感情を抜きにして伝えることを大切にしていました。

教えることは「技術」に当たるそうです。

人生経験も未熟で、人としても考えの浅い20代の私が「年の近い後輩を偉そうに指導していいものか?」という悩みもありました。

そこを「技術」と割り切るなら、技術職でもある私にも受け入れやすかったですよ。

同じように年の近い若手のリーダーの方や、専門分野で数歳しか離れていない研修生を指導する方の悩みを解決できると思いますよ。



著者の石田淳さんと行動科学


石田淳さん


著者の石田淳さんは、社団法人行動科学マネジメント研究所と株式会社ウィルPMインターナショナルを運営されています。

サラリーマンを経験された失敗から、アメリカでの行動分析学という学問を勉強して帰国し、ご自身が提唱する『行動科学マネジメント』を使った人材育成のコンサルティングをされているそうです。


行動科学って?


コーチンセミナーに通われている方は見聞きすることもある、『行動科学』、私は知りませんでした。

行動科学は『行動分析学』と呼ばれアメリカで研究と実践が積み重ねられている、人の行動を分析していい方向に導く法則を編み出した学問です。

アメリカでは有名な学問で、ボーイングなどの大企業で取り入れられ成果を上げているようです。

石田淳さんがアメリカで学んだ行動分析学を日本の社会に合うように改良したものが『行動科学マネジメント』、略して行動科学と呼ばれています。

私が石田淳さんの本を選んだ理由に、「日本の社会に合うように改良」したとあったからです。

海外のビジネスモデルや仕組みは素晴らしいものがあります。

ですが、日本の習慣は独自のものがありますよね。

日本だけが独特のような気もしますが、そのため海外の技術は応用するためには改良する必要があるのはどの業界でも共通することでもあります。

そこを既に改良してから出版してある、『行動科学を使ってできる人が育つ 教える技術』に取り入れる手軽さを感じていました。


石田淳さんの他の著書


短期間で組織が変わる行動科学マネジメント


続ける技術


会社を辞めるのはあと1年待ちなさい


経営者や部長・課長など上級の管理職の方向けの行動科学マネジメントの著書。

他にも働いている一般職向けの考え方を伝える本が出版されています。




『行動科学を使ってできる人が育つ 教える技術』の構成と読みやすさ

構成

Chapter1 「教える」前に心得て欲しいこと
Chapter2 上司がやるべきことは
Chapter3 部下のためにできることは
Chapter4 どう伝えるか
Chapter5 どのくらい教えればいいか
Chapter6 ほめることが大切
Chapter7 「叱る」と「怒る」は違う
Chapter8 継続させるために
Chapter9 こんな場合はどうするか?
Chapter10 大人数に教える場合

ページ数は190ページで文字も大きく、適度な空白もあります。

章にあたるChapterは全部で10あります。

1つのChapterに4〜7の項目があり、シンプルにまとまっているなぁと感じました。


読みやすさ


見開き1ページから2ページで1つの項目が取り上げられ、10ページに1つ程度の図解があります。

重要な箇所はカラーで強調されており、読みやすい本ではあると思いますよ。

完読することで石田淳さんの提唱する行動科学を知ることもできますが、自分の必要な内容を辞書のように引く読み方にも向いた本です。




お勧めの理由

実績がある行動科学マネジメントの方法


行動科学マネジメントを詳しく勉強したことはありませんが、アメリカの大企業で実績があることは事実です。

その方法を基にして石田淳さんが考えた行動科学マネジメントは、確かな裏付けがあるといっていいと思いますよ。


人材育成セミナー主催者の石田淳さんの著書


そして著者の石田淳さんにサラリーマン経験と挫折の経験があることも大切なところです。

「人を指導していくことに悩んでいた」1人の若手リーダーでもあったわけですよね。

本を手に取った当時の私のような新米リーダーと同じ経験をした先輩のような存在でしょう。

本を読むことで、先輩の経験を学ぶことと同じになりませんか。


1つだけある注意点


ただ、『行動科学を使ってできる人が育つ 教える技術』を実際の仕事の現場で活用するには注意点があります。

それは自分が行動科学マネジメントの考え方を受け入れていないと全ては使いこなせないことです。

そして、自分より上の上司の考え方にそぐわないこともあります。

特に上司に精神論の考えがあって「とにかく失敗させて量をこなせ!」といった考えを持っている場合、自分が後輩に丁寧に指導している姿を受け入れてもらいずらいでしょう。

実際に私もプロジェクトチームのメンバーの育成では全ては活用していませんでした。

辞書のように必要な内容を仕事と照らし合わせて使うのが、すぐに行いやすい方法だと思いますよ。


先輩の悩み、後輩が育たない3つの問題

日本の古い習慣

この国で古くからある「仕事は細かく教えてもらうのではなく、盗んで覚えるものだ」という考え方が、未だに人々の意識の中に根強く残っているということ。
p7 はじめに

これは最近よく言われる話題でもありますね。

以前、堀江貴文さんが寿司職人の育成の効率が悪いことが寿司職人を目指したい人が不足する原因になると言っていたことも最近の話題でもあります。

全ての習慣が悪いものではありませんが、時代の求めるものが変わるなら求められる側も変わらなければならないことは事実ではないのでしょうか。


企業の求める人材の変化


石田淳さんは、現在の経済状況から「会社の命令をコツコツこなす」働き方から、「現場がその場で提案や問題解決をしていく」働き方に変わってきたことに触れています。

そのために育成しなければならない人材は「自分で考える力がある」自分です。


働く人の考え方の多様化


これは現在の政府の『働き方改革』にも当てはまるのではないでしょうか?

ひたすら労働時間をかけて働いて給料を多くもらう価値観が全てではないことは確かですよね。

上司や先輩に当たる人が労働時間をかけて働く価値観を新卒の方に伝えても受け入れてもらえないのも事実です。

『行動科学を使ってできる人が育つ 教える技術』では後輩が育たないのは、後輩だけに問題があるのではなく元々の習慣が「育てる」仕組みになっていなかったことや社会の変化の影響も含めて考えなければならないこと。

そして、「教える」スキルを身につけることの重要性が書かれた本です。




教えるということ

そもそも「教える」とは?

「教える」とは、相手から“望ましい行動”を引き出す行為である。
p25 Chapter1 「教える」前に心得ておいてほしいこと


この項目では、「望ましい行動」を調理にたとえて紹介しています。

ハンバーグを作る手順に照らし合わせて、材料を細かく切りそろえる→混ぜ合わせて形が崩れないように丸める→火加減を調整して焦がさないように焼く、この一連の流れができることが「望ましい行動」になるわけです。

この一連の流れが大切で、例えば焼く場面ばかり伝えてもハンバーグは出来上がりませんよね。

そのためには、仕事を細かく分解することの大切さも後の項目で触れています。


知識と技術は別物

教える内容を「知識」と「技術」に分けることで、指導手順の決定や、その人にはどこからどこまで教える必要があるのか?の見極めが、すっきりと体系的にできるようになります。
p55 Chapter3 部下のためにできることは


この項目では、教える内容を知識と技術に分けてスポーツと照らし合わせています。

知識はルールや手順に当たり、聞かれたら答えられること。

技術は実際に行うべきことに当たり、やろうとすればできることと分けています。

教える仕事の内容を事前に知識と技術に分けておくことで、後輩が仕事に行き詰まった時に「知らないのか(知識)」「できないのか(技術)」を把握することができ、それが何を教えれば良いのかにつながることになりますよね。


行動を言語化してみる

MORSの法則
・Measured 計測できる
・Observable 観測できる
・Reliable 信頼できる
・Specific 明確化されている

この4つの条件を満たしていないものは「行動」ではなきということなんです。
p72 Chapter4 どう伝えるのか?


いきなりこの「MORSの法則」を見てしまうと専門書のように思えてしまいますが、ある1つの共通点があります。

「あいまいなことを具体的に伝える」ことです。

例えば、「親密にコミュニケーションを図る」は目標としては良いのですが、聞いた後輩はそのままでは何をすれば良いのかわからなくもなります。
そこで、「親密にコミュニケーションを図る」ことを2つの行動に置き換えてみます。

「週末には○○の部署に報告のメールを送る」

「担当する顧客に月に1度メールマガジンを送り返信をまとめる」
などになります。




後輩指導に活用してみて

私も1から行動科学マネジメントを学んで活用したわけではありません。

そこまで活用するには石田淳さんのセミナーでしっかり学ばなければなりませんよね。

実際には、後輩の行動がどう変わっていったかを知識と技術に分けて判断していたこと、やるべき行動をMORSの法則のように具体的に伝えるようにしたこと、紹介はしていませんが伝える仕事を細かく分解してから教えるようにしていたことです。

結果は、知識と技術に分けたシートを使うことで教えるときのチームの後輩とのやりとりが伝わりやすくなったこと、困っているときにどこを教えると仕事が上手くいくのかを私自信が把握しやすくなった効果がありました。


4月から昇進した若手リーダーや主任さん、新しくプロジェクトを任されたプロジェクトリーダーの皆さん、後輩指導の参考書としてお勧めですよ。



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