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ジェノサイド 高野和明 それぞれの存在する理由

ジェノサイド 高野和明

著者 高野和明
出版社 角川書店
分類 サスペンス小説 SF小説
出版日 2013/12/25
読みやすさ ☆★★少し読みづらい


高野和明さんといえば、死刑囚の最新事件を描いた『13階段』が有名ですよね。

今日は、『13階段』より後に出版された『ジェノサイド』を取り上げてみました。

スピード感があるサスペンスの世界をお楽しみくださいね。

傭兵と大学院生の2人の主人公

非日常に身を置く傭兵イェーガー

主人公の1人はジョナサン・ホーク・イエーガー民間軍事会社に所属してイラクで活動する現代の傭兵。

経歴はアメリカ軍の特殊部隊グリーンベレー出身という生粋の軍人。

戦場という非日常に身を置く彼は難病を抱える息子の日常を取り戻すために、あえて自分の手を汚す頼もしい“父親”。

息子や家族、仲間以外から見ると冷酷で恐ろし軍人の2つの面を持つ男性。

日本という平和の中で暮らす私たちの生活からはかけ離れた存在でしょう。


身近な大学生古賀研人におこる常識外の出来事

もう1人の主人公は薬学を専攻する大学院生、古賀研人。

一見何か特異な才能があるわけでも、特殊な活動をしているわけでもない日常を送る学生です。

元々確執のあった父親を突然亡くし、葬儀が終わった彼に訪れた非日常は父親の残した仕事を引き継ぐことでした。



奇妙な物語の始まり

イエーガーに舞い込む高額な任務

イラクで活動するイエーガーに雇用先の民間軍事会社から、高額の任務が舞い込んできます。

イエーガーは傭兵経験から、『暗殺』などの公にされない危険な任務であろうと考えますが、難病の息子の治療費のため高額の報酬と引き換えに引き受けることになります。

そして、アフリカのある国へ任務を引き受けた仲間とともに向かうことになります。


研人が巻き込まれる父親の残した仕事

一方、父親の葬儀からしばらく経ったある日、研人は生前の父親から遺書ともいえるメールを受け取ります。

そこには父親の残した仕事を引き継いでほしいこと、危険を伴うことが書かれています。

亡くなる前の父親の不自然な生活に疑問を持っていた彼は、父親の生活を知るために仕事を引き継ぐことにします。

そこから、日常を送っていた大学院生から今まで経験したこともない非現実的な出来事に出くわしていくことに………。


2つの物語はリンクする

国も仕事も生活も全く接点の無い2人の主人公。

彼らは、物語の中盤からそれぞれの仕事を通じて巡り会うことになります。

そして、お互いがお互いを救える存在にまでなれることを知ります。

サスペンスの紹介ですので、物語の内容はこれまでにしますね。



ジェノサイドのテーマは「それぞれの存在する理由」


ジェノサイドの意味は『1つの存在、人種、民族、国家、宗教などを末梢すること』、一般的には戦争や紛争で起こる大量虐殺のことを意味します。

大量虐殺の目的はさまざまですが、される側の存在理由を、する側が認めないために行うのでしょう。

作品の中でも度々取り上げられるテーマは、まさに『存在する理由』です。

それぞれの所属する国であったり、人種であったり、仕事をであったり、1つの生き物としての人としての存在であったりします。

その存在する理由は、誰かに一方的に決められるものではないはずです。

その答えは、物語の結末にあります。


高野和明さんの『ジェノサイド』は、地域も登場人物も異なる2つの物語がリンクするサスペンス。

一見異なる物語に見える傭兵イェーガーと大学院生 古賀研人の物語は、ジェノサイドで問われる「それぞれの存在する理由」を巡り1つの結末を迎えます。

文庫版も出版されてますので、ぜひ読んでみて下さいね。





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