ひかりの魔女
著者 山本甲士
出版社 株式会社 双葉社
分類 エンタメ小説
出版日 2016/10/16
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
タイトルと表紙がほっこりしていて、思わずBOOK OFFで衝動買いした『ひかりの魔女』。
山本甲士さんの描いた物語は高齢化社会で、多くの方に訪れるお年寄りとの同居。
物語の中でも気になるのが、魔女のおばあちゃんの引き起こす魔法。
魔法の正体と効果を楽しむミステリーの要素もある素敵な物語ですよ。
大学受験浪人の青年と80代のおばあちゃんが主人公
真崎光一
大学受験浪人2年目の真崎光一。
浪人仲間とたまに会う程度で、ほとんど外出はしない宅浪の生活を送る20歳の穏やかな青年。
ばあちゃん真崎ひかりの起こす、数々の魔法と出会うことに………。
真崎ひかり
魔女と呼ばれる、ばあちゃん真崎ひかり。
光一の住む地域で書道教室を開き、若くして亡くなった夫に変わり光一の父親と叔父を育てた後、田舎で農業を営む叔父と暮らしていたひかり。
その叔父が亡くなり、お年寄りの1人暮らしを心配した親戚から光一宅で暮らすことになる。
昔ながらに七輪で火を起こし、釜でご飯を炊く生活。
突然都会で暮らすことになったばあちゃんの起こす魔法の正体は?
突然ばあちゃんが引っ越してくる身近な日常
主人公の真崎光一は会社員の50代の父、家計をパートで支える母、中学生の妹と4人で都会の住宅街でくらすごく一般的な中流家庭。
田舎で同居していた叔父が亡くなり、ばあちゃんと家族の暮らしが始まる。
どの家庭にも起こりそうな、高齢で田舎暮らしをしているおじいちゃんとおばあちゃんとの同居。
家族との折り合いや、介護など家庭が変化する「あまり良くないこと」として耳にすることもあります。
身近に起こりそうな家庭のことが、『ひかりの魔女』の世界をより身近に感じることができますね。
見える生活と見えない幸せ
健在な両親と一般的な収入。
真崎光一の暮らしは、世間的には幸せに見える家庭。
父と母の仕事のこと、妹光来の中学生ならではの反抗期。
建物と同じく年月を重ねて浮き彫りになる、家庭内のほころび。
同居をはじめた、ひかりばあちゃんの不思議な体操と交友関係。
暮らしが変わりゆくことが、家庭をどう変化させるのか………。
世間体(せけんてい)、今の時代でもきにする方が多い世の中から見た自分たち家族の暮らしを図る指標。
世の中の世間体は、家族構成や収入が一般的か?といった「見える生活」が中心。
家族構成が変わっていても、収入が低くても幸せな暮らしは多くあります。
それは、家族が暮らしをどう感じるかの「見えない幸せ」の大きさではないでしょうか?
キーワードは魔法、テーマは人?
物語のテーマはタイトルの通り魔法。
魔法は、もちろん目には見えない世の中を変化させる力。
ひかりばあちゃんが引き起こす数々の魔法で訪れる真崎家に関わる人の変化。
光一たち家族の暮らしの行方は…?
世の中を変化させる、ひかりばあちゃんが持って魔法の正体は…?