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冬季うつと吸魂鬼ディメンターの共通点と対策

どちらもイギリス発祥、冬季うつとハリーポッターシリーズの吸魂鬼ディメンター


ハリーポッターシリーズに登場する魔法生物「ディメンター」。

実は、イギリスや北日本のように緯度の高い地域で多い「冬季うつ」と驚くほどそっくりな共通点がありました。

冬季うつの名前は季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder; SAD)


冬型うつの正式名称で、他にも冬季うつ病、季節性気分障害とも呼ばれています。



冬季うつ、症状の特徴


冬季うつとディメンターを比べる前に、冬季うつの特徴をまとめてみます。


①冬にだけ起こる

冬型うつは、名前の通り冬にだけ起こるうつ。

季節性気分障害には夏にも起こるうつもありますが、多いのは冬型うつのようです。

日本を含む北半球では、10月から11月にかけて症状が出始め3月頃には良くなる特徴があります。


②うつの症状

冬型うつのうつ症状は、他のうつ病と同じです。

気分が優れない抑うつ、体が怠い倦怠感が主な症状です。


③仮眠と過食

冬型うつが他のうつ病と異なるところは、仮眠と過食です。

うつ病は不眠になりやすいのですが、冬型うつでは仮眠になりやすくなり眠気が晴れない日々が続きます。

そして、糖分を含んだ甘いものを食べたくなる過食も他のうつ病と異なる特徴です。



冬季うつの原因は日照時間が短くなること


冬季うつは、うつ病とは少し症状に違いがあります。

それでは、冬季うつの原因は何なのでしょうか?


セロトニンが減少する

また、日光を浴びる時間が減ることで人の体の中のセロトニンが減ってしまうことも原因と考えられています。

セロトニンは気分を安定させる働きがあり、減ってしまうことで気分が下がり抑うつになってしまいます。


⑤体内時計が狂う

日照時間が短くなるため、人の体の中のメラトニンと呼ばれる睡眠に関係する物質が狂うことが原因の1つと考えられています。


冬季うつの地域性


冬型うつでは、北に位置する地域ほど発症率が高いようです。

日本国内では、北海道、東北、北陸地方で発症率が高いと言われています。



冬季うつの治療


冬季うつには、日光浴が効果があるといわれ、日光浴用品を紹介されるページを多く見かけます。


①光療法

冬季うつの治療では、日光浴が効果があると言われています。

日光に当たる時間が少ないことが原因ですから、日光に当たる時間を増やすことでセロトニンを増やして気分を安定させて、体内時計を整えるわけですね。

医療機関では専門の機械を使って、外にいるときと同じ強さの光を浴びる高照度光照射療法(こうしょうどひかりしょうしゃりょうほう)と呼ばれる治療もあります。


薬物療法

冬季うつには薬を飲む治療もあります。

病院で処方される薬は2種類。

1つ目は抗うつ薬、正式にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる薬で、体の中のセロトニンが減ってしまうことを抑える薬。

2つ目は抗不安薬と呼ばれる薬で、名前の通り不安を抑える働きがあります。

抗不安薬は依存症が起こりやすく飲み方が難しいため、抗うつ薬が処方されることが多いようです。


心理療法

心理療法は物事の認識の仕方や考え方を、抑うつな気分にならないように整理する認知行動療法が行われることが多いようです。

医療機関では精神科医や心理士などの専門家が行っています。

他にも、気分が前向きになる考え方を身につける行動活性化療法という方法もあるようです。




吸魂鬼ディメンター


吸魂鬼は地上を歩く生物の中でももっとも忌まわしい生き物の一つだ。もっとも暗く、もっとも穢れた場所にはびこり、凋落と絶望の中に栄え、平和や希望、幸福を周りの空気から吸い取ってしまう。
リーマス・ルーピン 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人


吸魂鬼ディメンターが人に与える影響


それでは、いよいよ吸魂鬼ディメンターの特徴に迫ってみますね。


①人の幸福を吸い取る

ディメンターはフードに隠された口の辺りから、人の幸せや希望など幸福を吸い取り食料にしている。

ディメンターが人に与える影響は凄まじく、ディメンターが近くにいるだけで人は何もやる気が起きなくなってしまいます。

ディメンターに長い間幸福を吸い取られ続けると、人の中から幸福が抜けきってしまい心に最悪の気持ちだけが残ってしまう。


②人を昏睡状態にしてしまう

また、ディメンターは人の魂を吸い取ることができます。

リーマス・ルーピンによると魂を吸い取られても心臓や脳が無事であれば生きていることは可能だそうです。

現実的には、肉体的には生きてはいますが精神的に何の活動も行えない状態になってしまうことでしょう。



その他の吸魂鬼ディメンターの特徴


ハリーポッターシリーズを読み解くと、ディメンターには他にも細かな特徴があります。


③魔法使い以外にも影響がある

ディメンターは物語の中の魔法使い以外にも、魔法使いと同じように影響を与えます。

魔法使い以外には見えませんが、ディメンターの持つ陰気な気配は感じることができるようですね。


④周囲が霧に覆われる

ディメンターは人だけではなく、気候にも影響しています。

ハリー・ポッターと死の秘宝』では、イギリス中にディメンターが現れたためロンドンが霧に覆われてしまいました。


⑤周囲の気温が下がる

ディメンターが現れると、周囲は冷気に包まれたように気温が下がるようです。

映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』では、窓ガラスの結露が凍り、屋外では湖が凍っているシーンが印象的でした。



吸魂鬼ディメンターの対策


小説でも映画でも恐ろしいディメンターですが、もちろん対策はあります。



①守護霊の呪文エクスペクト・パトローナムを唱える

恐ろしいディメンターにも、ちゃんとした対策があります。

それが、ハリー・ポッターシリーズで最も有名な呪文「エクスペクト・パトローナム」。

この守護霊の呪文は高度な呪文とされていて、大人の技術の高い魔法使いしか使えません。

また、呪文の特徴に杖の振り方や呪文を唱える技術だけではなく、「気持ちを高めること」が必要です。

リーマス・ルーピンが『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』でハリー・ポッターに指導している場面では、「自分が1番幸せに思える出来事」を思い浮かべる必要があります。


②動物に変身する

動物は人間ほど感情が複雑ではないため、ディメンターは動物の感情を吸い取ることができません。

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』で登場するシリウス・ブラックは、ディメンターが看守を務める刑務所アズカバンに収監されていたときに実践していました。


③幸せや希望以外の感情を持つ

ディメンターが食料にするのは、人の幸せや希望など幸福な感情。

誰かを憎んだり、怒りを持つ感情をディメンターは吸い取ることができません。

シリウス・ブラックはアズカバンでは、憎しみと怒りに満たされていたためディメンターの影響は大きくなかったようです。


④チョコレートを食べて休養する

もし、ディメンターに幸福な感情を吸い取られてしまったら……。

考えるだけで嫌ですね。

ですが、ちゃんとした対策もあります。

それが、チョコレートを食べて休養すること。

リーマス・ルーピンが『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』で行った対処法は、学校医のマダム・ポンフリーにも「正しい対処法」と言われていました。


冬季うつと吸魂鬼ディメンターの3つの共通点


前置きが長くなりましたが、いよいよ今回のテーマに迫ります。


共通点⑴抑うつ気分と幸福を吸い取られる気分

辛い抑うつ気分

冬季うつの特徴は、②うつの症状でしたね。



幸福を吸い取られる苦しさ

そしてディメンターの特徴は、①人の幸福を吸い取ること。


どちらも幸せや希望が心の中からなくなっていく辛いことが、冬季うつとディメンターの共通点といえます。


共通点⑵冬にだけ起こる冬季うつと霧と寒さを起こす吸魂鬼ディメンター

冬にだけ起こる冬季うつ

冬季うつ病は名前の通り、10月から11月にかけて①冬にだけ起こる辛い気分。

ウィンタースポーツが好きな方には、たまらない季節ですよね。

ですが、昼の時間が短く日光に当たる時間が減って、寒くなる冬は誰でも良い気分ではないと思います。

そして、冬季うつは日照時間が短くなることで④セロトニンが減少する、⑤体内時計が狂うことが原因と言われています。



気候を冬にするディメンター

ディメンターが現れることで、④周囲が霧に覆われる、⑤周囲の気温が下がる特徴があります。


冬季うつは冬に起こること、ディメンターは周囲を冬のような気候にしてしまうことが2つ目の共通点です。

寒くて暗い季節、私は好きじゃないなぁ。


共通点⑶甘い物を食べたくなる冬季うつと吸魂鬼ディメンターに襲われた後にチョコレートが有効なこと


冬季うつは甘いものを食べたくなる

冬季うつでは糖分を含んだ甘いものが食べたくなる③仮眠と過食の特徴があります。

冬季うつでは体の中のセロトニンが不足しており、人の体はセロトニンを作る原料の1つの糖分を取り入れるために甘いものを食べようとするそうです。

さらに、甘いものにはもう1つの効果があります。

それは、甘いものを食べることで脳の中に分泌されるβ-エンドルフィンという物質。

このβ-エンドルフィンは、幸せを感じさせてくれる物質。

ですが、麻薬並みの依存性があることから、最近話題の「炭水化物依存」を起こすことにもなるようですよ。


ディメンターに襲われた後にチョコレートを食べると良い

ディメンターに襲われた後には④チョコレートを食べて休養することが有効なようです。

ハリー・ポッターの世界にも魔法薬学という薬品を扱う専門分野がありますから、おそらく有効な薬はあるはずです。

チョコレートを食べるのは、脱水のときにスポーツドリンクを飲むような緊急の対応でしょう。


冬季うつで甘いものを食べたくなるのは、β-エンドルフィンを分泌させて幸せを感じさせて欲しいから体が求めているのでしょう。

ディメンターに襲われた後にチョコレートを食べるのも、同じような効果があるから。

魔法使いも体は人ですしね。



冬季うつとディメンターに共通の対処法


原因と特徴に共通点があるなら、対処法も似ているのでは?


光が効果的

冬季うつの治療の1つに、日光に当たる時間を増やすことでセロトニンを増やして気分を安定させる①光療法というもよがありましたね。

そして、ディメンターを追い払う①守護霊の呪文も眩い光で周囲を照らしています。

光によって気分を安定させるセロトニンが増えることも確かめられています。

気分が晴れない日には日光浴で太陽の光を浴びることにはちゃんとした効果があったんですね。


幸せな出来事を思い浮かべる

冬季うつでも行われる③心理療法に行動活性化療法というものがありました。

行動活性化療法は、積極的に気分が前向きになる考え方を身につける方法です。

これは、ディメンターに有効な①守護霊の呪文を唱えるときに、「自分が1番幸せに思える出来事」を思い浮かべることに似ていますね。

落ち込みがちな抑うつ気分のときに、明るい未来は思い描けないものですよね。

それなら、今までの出来事の中から思い出すのも1つの方法。

そして、今まで物事が上手くいったときのことを思い返し、今なにをやるのかを決めるのが良い選択なのだと思います。



冬季うつとディメンターが似ている理由


ディメンターが描かれるハリーポッターシリーズの生まれたイギリスでは、冬季うつが多い高緯度地帯でもあります。


J・K・ローリングさんもうつ病の経験があった


冬季うつとディメンターは、共通点がかなり多いですね。

実はハリー・ポッターシリーズの著者のJ・K・ローリングさん自身に、うつ病の経験がありました。

J・K・ローリングさんは、お母さんの闘病の末の死を目の当たりにし、ご自身も流産でお子さんを失う辛い経験をされてきました。

そして、おひとりで幼いお子さんを育てる疲労と貧困から、うつ病になってしまったと語られています。

うつ病の経験が今回取り上げた吸魂鬼ディメンターの恐ろしい存在として、ハリー・ポッターシリーズに登場させたとご自身で語られています。


イギリスは日本のどこよりも北国


J・K・ローリングさんが「ハリーポッター」シリーズを執筆されたイギリスのロンドンは、北緯51度30分と日本のどの街よりも北にあります。

南北どちらかに近いほど、夏と冬の日照時間の差は大きくなります。

例えば6月の夏至の日、東京の日の出は4時45分、ロンドンは3時45分。

日の入りは東京が19時00分、ロンドンが20時20分。

夏はロンドンの方が2時間20分も昼の時間が長くなっています。

逆に12月の冬至の日、東京の日の出は6時45分、ロンドンは8時00分。

日の入りは東京が16時30分、ロンドンが15時55分。

冬の間は、ロンドンの方が2時間昼の時間が短くなります。

日本国内でも、九州など南の方にお住いの方は実感しにくいかと思いますが、北の方に住んでいる私は、ロンドンに暮らす方の気持ちがよくわかります。

どんなに燃料を使ってもいいから、「昼間のように明るい街灯」と「街全体を暖めるビルのような暖房」を作って欲しい、そう本当に思っているのは花水(hanami )だけではありません。



花水由宇も冬季うつっぽい自覚があるから


今回、冬季うつとディメンターの共通点を取り上げたのは、花水(hanami)自身も「冬季うつかもしれないなぁ」と思うところがあったからでもあります。

北国に住む私たちにとって、冬に気分が優れないのは珍しいことではありません。

冬の日照時間が短くなる雪国では、発症率が10%程度あるようで、気がつかないだけで冬季うつの人の多くは普通に暮らしています。

ですが、気分も雪と寒さに閉ざされた感覚は嫌な気分です。

そんなときには、「自分が1番幸せに思える出来事」を思い浮かべて、必ず春は来ることを自分に言い聞かせてみますね。

ある人が言いました。

「冬が終わらないことはない」

またある人は言いました。

「冬が寒くて辛い分、春の暖かさと花や草が茂るのが楽しめるものだよ」

それでは、長い考察記事でしたが読んでいただきありがとうございました。

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