小説のジャンルを作品のページ数で分類
普段何気なく読んでいる小説ですが、実は長さでいくつかに分けられています。
私は何となく長いのは長編小説、短編集などにある短い作品を短編小説ぐらいにしか思っていませんでしたが、出版社の文学賞の募集要項では細かな分類がありました。
今回は、作品のページ数の長さごとに分けられる長編小説、中編小説、短編小説と連載小説についてまとめてみましたよ。
作品の長さで長編小説、中編小説、短編小説の3種類、発表される方法で連載小説に分類される
小説は、作品のページ数の長さで長編小説、中編小説、短編小説の3種類に分けられます。
また、雑誌やWeb配信で数話ごとに発表される小説は連載小説と呼ばれ、人気作品は長編連載小説、短編連載小説といった形で1冊の本として出版されています。
長編小説・中編小説・短編小説と連載小説のページ数
長編小説は300ページ前後以上、中編小説は120〜200ページ前後、短編小説は10〜70ページと大まかな目安があります。
ページ数の違いは、作品を募集する文学賞の募集要項の原稿用紙の枚数で分けられています。
原稿用紙は40字×34行、400字詰め原稿用紙の2つがありますが、パソコンでのフォーマットは公募する出版社ごとの違いがあるので今回は400字詰めとしました。
ページ数と文字数は、身近な文庫本では1ページ550前後〜750前後と余白や改行で違いがあります。
今回は、中間のおおよそ1ページ600文字とさせていただきます。
長編小説
長編小説は、作品の長さでは最も長い小説です。
多くの出版社では、原稿用紙300枚以上を長編小説として募集していました。
文字数は、300枚で最大120000文字。
『ポプラ社小説新人賞』は、未発表の長編エンターテインメント小説が対象で、400字詰め原稿用紙換算200枚~500枚とあります。
よく知られたミステリー小説の賞『江戸川乱歩賞』では、ワープロ原稿は1行30字×40行115~185枚(400字詰め原稿用紙で350~550枚)とあります。
長編小説の原稿用紙の文字数では、100000文字から120000文字程度の166ページから200ページですが、台詞の余白と改行で300ページは超える文字数です。
厚めの単行本か文庫本なら上巻と下巻に分かれている小説は、ページ数では300ページ以上になり、長編小説として紹介されています。
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中編小説
中編小説は長編小説に次ぐ長さのある作品です。
400字詰めの原稿用紙100〜300枚、文字数40000〜120000文字が中編小説になります。
『このライトノベルがすごい!』大賞では、40字×34行の書式で80~140枚(400字詰め280枚〜470枚)とあります。
純文学が対象の『すばる文学賞』では、400字詰め原稿用紙100枚程度〜300枚とあります。
400字詰め原稿用紙200枚の文字数は80000文字になり、ページ数は133ページになります。
こちらも、台詞の余白と改行のためページ数が120〜200ページ前後が中編小説に分類されます。
薄めのハードカバーの単行本や文庫本1冊で完結する小説の長さが中編小説に当てはまります。
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短編小説
短編小説は、中編小説よりもさらに短い小説で400字詰め原稿用紙10〜100枚、文字数4000〜40000文字の作品です。
短編小説の中でもさらに短い作品は、ショートショート・ショートストーリーと呼ばれているようですが、短編小説でまとめた方がわかりやすいと思い、今回はまとめてしまいますね。
例えば、『小説現代ショートショートコンテスト』の募集要項は、何と400字詰め原稿用紙5枚以下とあります。
ショートショートの文字数は2000文字、ページ数ではわずか3ページになります。
ショートショートはもちろん、ページ数が10〜70ページの短編小説のみでは、1冊の本として出版することが難しいため、複数の短編小説を集めたり、他の中編小説と合わせて出版されることがほとんどです。
連載小説
小説の長さでは、長編小説、中編小説、短編小説と違いがありました。
他にも連載小説と呼ばれる作品があります。
こちらは、かつては雑誌や新聞での連載、最近ではWebサイトでの連載で発表される作品です。
1話毎に発表され、出版社のWebサイトで定期的に更新されています。
連載が完結すると、知名度のある作品では1冊の本として出版されることも多い作品です。
実際に出版されている長編小説・中編小説・短編小説
それでは、ページ数と出版情報を元に読書ブログで紹介させていただいた小説を長編小説・中編小説・短編小説に分類してみましょう。
長編小説
ページ数が300ページ前後以上あり、厚めの単行本か文庫本なら上巻と下巻に分かれている小説が長編小説に分類されています。
『1985年の奇跡』五十嵐貴久 352ページ
『砂漠』伊坂幸太郎 416ページ
『忍者に結婚は難しい』横関大 368ページ
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾 385ページ 長編小説・長編連載小説(『小説 野性時代』KADOKAWA)
『1985年の奇跡』五十嵐貴久~そこで奇跡が起きるわけは? - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
長編小説の多くは、厚さの違いはありますが1冊の本として出版されています。
中には単行本でも1つの「章」より大きな「編」があり上巻と下巻、文庫本になると3巻以上に分けて出版される作品もあり、超長編小説と紹介されることもあります。
中編小説
ページ数が120〜200ページ前後で、薄めの単行本や文庫本は中編小説に分類されています。
『ムラサキのスカートの女』今村夏子 160ページ
『夕闇通り商店街 コハク洋菓子店』栗栖ひよ子 218ページ
レトロな商店街を訪れる物語『夕闇通り商店街 コハク洋菓子店』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
有名な文学賞の芥川賞では、中編小説の作品をノミネートの対象としています。
芥川賞受賞作品の『ムラサキのスカートの女』は160ページで、薄めのハードカバーの単行本として出版されています。
また、栗栖ひよ子さんの『夕闇通り商店街 コハク洋菓子店』は218ページの薄めの文庫本として出版されています。
こちらは、栗栖ひよ子さんが受賞された「小説家になろう×スターツ出版文庫大賞」が中編小説を公募の対象としていることもあり、中編小説に分類に当てはまります。
短編小説・短編連載小説・短編小説集
ページ数が10〜70ページの短編小説は、小説誌に連載された同じストーリーの連載作品をまとめた短編連載小説、同じ作家さんの短編を何作かまとめた短編小説集として出版されています。
『阪急電車』有川浩 221ページ 短編連載小説(『papyrus』幻冬舎)
『ツナグ』辻村深月 316ページ 短編連載小説(『yom yom』新潮社)
『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ 258ページ 短編小説集(『小説現代』講談社)
ツナグ 辻村深月 想いは、伝えられる環境のうちに伝えたい - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
辻村深月さんの『ツナグ』シリーズは、出版された本のページ数は長編小説の分量がありますが、1章ごとに登場人物と舞台設定が変わる作品のため、短編連載小説として紹介されています。
小説を作品の長さで分類することのまとめ
小説は長さによって、長編小説・中編小説・短編小説・連載小説4つの分類がありました。
読んでいる私たちは、なんとなく厚めの小説が長編小説で、短編集で出版されている作品が短編小説と感じるくらいではないでしょうか?
書いている作家さんは、応募する賞によって細かく作品の長さを考えて書かなければならないんですね。
今年、文学賞に原稿を送った花水(hanami)も、書き終えた作品の文字数調整のために、お話をカットしたり書き加えたりと作業を繰り返していました。
いつか、長編小説が書けるようになりたいものです。