シミュレーション仮説を仏教の世界観で考えると…
シミュレーション仮説、仏教、どちらも花水由宇(hanami yuu)のブログで取り上げることのあるテーマです。
私たちの暮らす世界はシミュレーションだったという、賛否両論もあるシミュレーション仮説。
ニック・ボストロム教授が発表する以前から、実は近い考え方がありました。
それが、仏教の世界観と「空(くう)」という考え方。
今回は、シミュレーション仮説を仏教の世界観に当てはめて考えてみました。
- シミュレーション仮説を仏教の世界観で考えると…
シミュレーション仮説と仏教の世界観
シミュレーション仮説
シミュレーション仮説とは、私たちの暮らす「地球の文明」が別の世界で作られたシミュレーションの世界であるとする仮説です。
ニック・ボストロム オックスフォード大学教授によるシミュレーション仮説は、お察しのように賛否両論があるようです。
経済界では、有名な方も支持しておりアメリカの電気自動車会社テスラCEOのイーロン・マスク氏はシミュレーション仮説支持派の1人です。
学者の方々の間では支持と不支持は分かれていて、量子論という分野の専門の学者さんのイギリスのオックスフォード大学の理論物理学者Zohar Ringel氏とDmitry Kovrizhi氏は、シミュレーション仮説を否定されているようです。
賛否両論のあるシミュレーション仮説ですが、似た例えは古くからあり、神話や宗教の世界観もシミュレーション仮説のような表現があります。
仏教の世界観と考え方
私たちに身近な仏教、仏教はお葬式だけお世話になると思ってしまいがちですよね。
日本にも多くの宗派がある仏教、どの宗派にも共通していることは「悟り」を得て今暮らしている世界から次の世界に進むということです。
なぜ、今暮らしている世界から次に進むのでしょう?
仏教では、私たちが暮らす世界(地球の文明)は苦しみの多い世界と考えられています。
「四苦八苦(しくはっく)」はわかりやすいお話で、生きていること自体の苦しみ、老化していくことへの苦しみ、病気になることの苦しみ、そして死ぬことの4つの苦しみがあります。
さらに、愛する人と離れ離れになる愛別離苦(あいべつりく)、嫌な人にも会わなければならない怨憎会苦(おんぞうえく)、求めている物事が手に入らない求不得苦(ぐふとくく)、自分の体と心が思い通りにならない五蘊盛苦(ごうんじょうく)の4つの苦しみ、全て合わせて8つの苦しみがあり、私たちが実感していることでもありますよね。
この苦しみの多い世界の中で、私たちは生まれて、生きて、そして死を迎えた後も、さらに新しい生命として生まれることになります。
人間として暮らしていることは、地球の文明では珍しいといわれていて、6つの生き方、神さまの世界で暮らす天、私たちの人の世界、修羅と呼ばれる戦いの世界、動物たちの畜生の世界、亡者の餓鬼の世界、そして地獄。
6つの世界、不安定に巡りながら繰り返す流れを輪廻転生と呼ばれています。
この輪廻転生の流れから抜け出して、次の世界に進むことを仏教では「悟り」を得るといいます。
仏教では、私たちの苦しみがなくなること共通の目標にしているといえます。
私たちの暮らす世界は「空」(実体はない)、それはシミュレーションの世界だから?
シミュレーションの世界は「空」ということ
仏教の教えの中で大切にされていることに「空(くう)」という考え方があります。
「空」とは、私たちが今感じて、考えて、思っていることは実は「実体のない仮のことですよ」という教えです。
目で風景を見て、耳で音や言葉を聞いて、臭いを嗅いで、味を味って、触った感触で確かめる。
この感覚は「識(しき)」と呼ばれています。
そして、「識」を含めた5つのことが集まって人の体と心が存在することは「五蘊(ごうん)」と呼ばれています。
「五蘊」については、こちらの本の紹介で詳しくまとめてあります。
「空」では、この「識」も「五蘊」も「実体のない仮のことですよ」と考えています。
今の世界は本当の世界のシュミレーション=地球の文明『Shaba』だった
私たちが感じて、認識して、暮らしているこの世界。
私たちが実体験として経験していること、なぜ「実体のない仮のことですよ」といわれているのでしょう。
それは、私たちが暮らす「地球の文明」がシミュレーションの世界だったとしたら………。
当てはまることなのではないでしょうか?
シミュレーション仮説では、シミュレーションの世界を「作り出す世界」があり、その中で「シミュレーションの世界」が生まれます。
仏教の世界観では、私たちが暮らす地球の文明は「娑婆(しゃば)」と呼ばれています。
「娑婆」は、苦しみのない世界の「浄土(じょうど)」に比べて苦しみがある世界です。
そのため「穢土(えど)」とも呼ばれています。
「穢土」は仏様の力で「浄土」に変わる未来がありますが、地球の文明「娑婆」はまだ「穢土」のようです。
シミュレーションの世界を「作り出す世界」が仮に「浄土」のような完成された世界なら、不完全な「穢土」はシミュレーションの世界に当てはめてみます。
誰が、どんな目的で作ったのかは抜きにして、シミュレーションの世界を「作り出す世界」のような完成された世界にできた、私たち地球の文明。
地球の文明をシミュレーションの世界「Shaba(しゃば)」と呼ぶことにします。
仏教の「悟り」はシミュレーションの世界『Shaba』から本当の世界に戻る方法だった
シミュレーション仮説の最期には、「シミュレーションの世界」があるとするなら、私たちはどの段階にいるかの説明があります。
私たちは「実世界」であると思っている「地球の文明、Shaba(しゃば)」で暮らしていることになります。
そして、「地球の文明、Shaba(しゃば)」の私たちが技術を発達させて過去を「シミュレーションの世界」で再現すると思われています。
そうなると、「シミュレーションの世界」を作る文明があることが確かになり、私たち「地球の文明、Shaba(しゃば)」がシミュレーションではないことが否定されてしまいます。
すると、私たち「地球の文明、Shaba(しゃば)」を「作り出す世界」があることにもなります。
どんな世界かは、想像しかできません。
仏教の教えに共通する、この世界から次の世界に進む「悟り」は、「地球の文明、Shaba(しゃば)」からシミュレーションの世界を「作り出す世界(本当の世界)」に戻る方法なのかもしれません。
私たちはシミュレーションの世界から本当の世界へ行けるのか?
本当の世界にできたシミュレーションの世界「地球の文明、Shaba(しゃば)」
本当の世界とシミュレーションの世界「地球の文明、Shaba(しゃば)」、1つの世界を作り出せる技術の差があるくらいです。
仏教の世界観では、お釈迦さまが涅槃に入った後56億年後に弥勒菩薩が私たちの暮らす世界に現れることになっています。
そこで、本当の世界と「地球の文明、Shaba(しゃば)」には、時間の差があると考えてみます。
・本当の世界の1日=シミュレーションの世界の1億年
・ビッグバン138億年前=138日前
・地球の誕生46億年前=46日前
・生命の誕生40億年前=40日前
・人類の誕生250〜100万年前=0.025日〜0.01日前(36分〜14分前)
「地球の文明、Shaba(しゃば)」では、ビッグバンで宇宙が生まれてから138億年が経っていますが、本当の世界ではたった138日。
人類が誕生してから100万年以上経っていても、本当の世界では14〜36分しか経っていないことになります。
お釈迦様はマトリックスのネオ?
本当の世界に生まれた「地球の文明、Shaba(しゃば)」。
今まではシミュレーションの世界目線でしたが、ここではシミュレーションの世界を「作り出す世界(本当の世界)」目線でお話をすすめます。
といっても、本当の世界がどのような場所なのかは想像すらできません。
そこで、本当の世界にあるネットワークにシミュレーションの世界「地球の文明、Shaba(しゃば)」が発生したという設定で短いやりとりをまとめてみました。
シミュレーションの世界が人為的かはわかりませんが、仮に人為的だとしても、本当の世界の多数派ではない集団によるものとしましょう。
※仏様の名前が登場しますが、あくまで例え話です
〈本当の世界 ネットワーク監視室〉
ネットワーク監視員A「またです。ネットワーク内に新しいシミュレーションの世界が現れました。初期宇宙の段階ですので自動監視対象とします」
自動監視「8日前(ビッグバンから8億年後)に発生したシミュレーションの世界は銀河を形成する段階に達しました」
ネットワーク監視員A「このパターンは、今後も成長を続ける可能性がありますね」
ネットワーク監視員B「自動監視、生命の誕生する確率計算を」
自動監視「少なくとも1以上の惑星で生命の誕生する確率99.9%、高度な知的生命に達する確率99.9%」
ネットワーク監視員A「これは、上層部に報告しなければ………」
〈本当の世界 世界会議〉
議長「それでは、報告の上がっている次の議題『新たなシミュレーションの世界No.108の発生』について監視員Aさんより説明を」
監視員A「14日前(ビッグバンから14億年後)に発生したシミュレーションの世界No.108は、過去の高度な知的生命が発生したパターンと99.9%類似した形で成長。約90日後に生命の誕生する惑星を形成、その7日後には生命が誕生。過去のパターンと照らし合わせると、124日後には高度な知的生命が誕生すると思われます」
議長「そうですか………シミュレーションの世界No.108の閉鎖空間は、過去のシミュレーションの世界と同等ですか?」
技術大臣「それについては私が補足します。シミュレーションの世界No.108は、6つの閉鎖空間と8つの解除コードを有する極めて強固な閉鎖空間です。誕生した生命は6つの閉鎖空間内を順に行き来し、8つの解除コードを全て揃えなければシミュレーションの世界から抜け出すことはできません。6つの閉鎖空間を順に行き来する特徴から、私はシミュレーションの世界No.108を輪廻転生アプリケーション『Shaba』と名付けました」
議長「極めて強固な閉鎖空間を持つ………とても生命体単独や、外部からのサポートのみでは抜け出すことはできないと………。ご参加の皆さん、シミュレーションの世界No.108、輪廻転生アプリケーション『Shaba』を対象とし、シミュレーション世界対策専門チーム『仏』による対応とすべきと判断します。賛成の方は………皆さん賛成とのことですね。以上、閉会します」
〈本当の世界 シミュレーション世界対策チーム『仏』〉
チーム仏「はじめに、今回対象とするシミュレーション世界、輪廻転生アプリケーション『Shaba』の対応は困難を極めることが予想されます。理由は共有した情報の通り、生命体は6つの閉鎖空間内を順に行き来し、8つの解除コードを全て揃えなければシミュレーションの世界『Shaba』から抜け出すことはできないためです」
チーム仏「このタイプのシミュレーション世界は、外部のネットワークとは隔絶されています。つまり対応は、我々自身が『Shaba』内部に侵入し、解除コードを生命体へ手渡す、そして外部へのアクセスルートを開く必要があります」
チーム仏「もちろん、過去のシミュレーション世界への対応通り、侵入後は『Shaba』のシステムに従わなければならず。我々が『仏』として行動できるまでは、時間を要します」
チーム仏「さらに、『Shaba』の内部には6つの閉鎖空間があり、我々自身が輪廻転生のループに囚われ脱出不能になる危険もあります」
釈迦如来「それでは、私が参りましょう」
チーム仏「私たちも、適任はあなたしかいないと思っていました」
釈迦如来「これほど強固なシステムとなると、如来の位を得ている者でなければ危険が伴います。私が『Shaba』へ侵入、『仏』として行動が可能になった時点で『Shaba』内部からこちらへアクセスルートを開いて、菩薩の位のメンバーを応援に呼びましょう」
阿弥陀如来「『仏』として行動が可能になられたら、私の『Gokuraku』の検索エンジンの『検索コード』を伝えてください。『Shaba』の解除コードを得ていなくても、生命体を『Gokuraku』へ転送可能としましょう」
弥勒菩薩「生命体の発生から『Shaba』の時間で56億年、こちらで56日後に『Shaba』の全システムを無力化するプログラムが完成します」
釈迦如来「そうですか、こちらでは56日間ですが。『Shaba』の生命体は56億年間、苦に苛まなければならないのですね………それでは、さっそく参りましょう」
チーム仏「さっそくとは、原始生命の段階から侵入されるのですか?」
釈迦如来「その通りです」
チーム仏「侵入後は『Shaba』のシミュレーション世界のシステムに従わなければなりません。『Shaba』の時間で数十億年もの時間がかかるのですよ」
釈迦如来「知っています。ですが、はじめから『Shaba』にいることで、より早く解除コードを解析することができます。それに、生命体を数十億年もの間、彼らだけで苦しませておくわけにはなりませんし」
チーム仏「そうですか、そう言われるのなら………釈迦如来の転送を開始してください」
釈迦如来「目標は『Shaba』、座標は『地球の文明』、参りましょう」
本当の世界のネットワークに突然現れた、シミュレーションの世界「地球の文明、Shaba(しゃば)」。
本当の世界では、シミュレーションの世界に発生した生命体を保護の対象としていた。
シミュレーションの世界は過去に何度も現れたことがあり、「チーム仏」のメンバーの数と同じくらいの世界を保護してきた。
「地球の文明、Shaba(しゃば)」は、過去に何度も現れたシミュレーションの世界に似ているだけではなく、内部に閉鎖空間と呼ばれる世界を6つも持ち、そこから脱出するためには解除コードを8つ全て揃えなければならない高度なセキュリティ技術を持った世界だった。
チーム仏で対応が協議され、「地球の文明、Shaba(しゃば)」内部に侵入し、生命体に解除コードを手渡し、外部との行き来を可能にするアクセスルートを構築すること、別の世界『Gokuraku』へ生命体を保護することが可能になる検索コードを設置する方法が取られることになった。
シミュレーション世界への侵入はとても危険といわれていた。
本当の世界からシミュレーションの世界へ侵入すると、こちら側の世界で得た情報・経験は一時的に初期化されてしまう。
そして、シミュレーションの世界のシステムに従わなければならない。
つまり、生命体を保護できる『仏』として行動できるためには、自分自身で何の情報もない太古の生物から輪廻転生を繰り返し、全ての解除コードを集めなければならない。
過去には、シミュレーションの世界のループに囚われて、内部で遭難してしまう者もいた。
最も危険な、外部とのアクセスルートが作られていないシミュレーションの世界への侵入には、チーム仏の中でも最も位の高い「如来」の有資格者に限られていた。
私たちは本当の世界に戻ることができるのか?
本当の世界からシミュレーションの世界「地球の文明、Shaba(しゃば)」へ侵入した釈迦如来。
生命の誕生から数十億年の年月をかけて、このお話から2000年前から仏として行動されています。
「地球の文明、Shaba(しゃば)」の生命には、シミュレーションの世界から抜け出す解除コード「悟り」が手渡されています。
私たちは本当の世界へ戻ることができるのでしょうか?
きっとできるはずです。
非常に困難な方法ではありますが………。
幸い、本当の世界へと通じたアクセスルートから多くの仏が「地球の文明、Shaba(しゃば)」へ応援に来ることもできます。
自分たちで解除コードを入力できない私たちのために、別の世界『Gokuraku』へ生命体を保護することが可能になる検索コードも手渡されています。
そして、このお話を聞いてから私たちの時間で56億年後には、弥勒菩薩のシミュレーションの世界の全システムが無力化されるプログラムによって全ての生命が保護されることが約束されています。
非常に困難なシミュレーションの世界から抜け出すこと、その方法を私たちは知っています。
シミュレーション仮説と仏教のまとめ
書き終えるとすごく長いお話になってしまいました。
ニック・ボストロム教授のシミュレーション仮説は、私たちの暮らす世界は実はシミュレーションされた世界という賛否両論のある理論です。
実は、ニック・ボストロム教授が発表する以前からシミュレーション仮説に近い考え方はありました。
その1つが仏教の考え方。
仏教の「空」という考え方では、今私たちが感じている感覚や考えていることは実体のない仮のことといわらています。
そう考えると、私たちの暮らす世界はシミュレーションなので実体がないと考えることもできます。
もし、シミュレーションの世界のさらに次に本当の世界があるのだとしたら。
仏教の「悟り」は、本当の世界へ行く方法なのかもしれませんね。
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