陽気なギャングの日常と襲撃 伊坂幸太郎
著者 伊坂幸太郎
出版社 祥伝社
分類 ミステリー小説
出版日 2008/9/5
読みやすさ ☆☆★読みやすい
伊坂幸太郎さんの代表作というと『グラスホッパー』や『マリアビートル』が有名ですよね。
以前、紹介させていただいた『陽気なギャングが地球を回す』も、ファンの間では有名な作品です。
私も知らなかったのですが、大沢たかお
さんと佐藤浩市さんが出演した映画にもなっているんですね。
今回は『陽気なギャングが地球を回す』の続編、『陽気なギャングの日常と襲撃』を紹介させていただきます。
陽気な5人のギャングの日常
陽気なギャングシリーズでは、普段は別の暮らしをしながら集まる5人の個性的な銀行強盗が登場します。
成瀬
市役所に勤務する公務員の成瀬。
職場では、若手を安心させる冷静沈着な上司の姿。
強盗団では、細かな作戦を立てるリーダー的存在。
彼には生まれつき必ず嘘を見破る力があった。
響野
喫茶店を経営する、成瀬の高校からの友人響野。
響野が入れるコーヒーは不味く、カウンターでは相手が返事をするまもなく話し続けるお喋り好き。
銀行強盗のときには、限られた時間の中で人質にとって、「特に役にも立たない話題」で演説をする決まりになっていた。
久遠
スリの名人の強盗団のルーキー。
動物を愛し、銀行強盗で手に入れた資金でニュージーランドの羊に会いにいくことを楽しみにしている青年。
彼の直向きさと、他人との心の距離感を気にしない爽やかさが大活躍することに。
雪子
普段は派遣事務員として、大手企業に勤務するシングルマザーの雪子。
体の中に埋め込まれたかのようなコンマ1秒も狂わないな時間管理で、強盗団のドライバーを務める。
銀行強盗から離れても交差する5人の物語は
5人の強盗団が、暮らしの中で知り合う人々。
市役所の相談センターで、市民の苦情を受け付ける成瀬。
喫茶店のカウンターで、お客さんと付き合う響野。
時間を持て余す暮らしをしている久遠。
事務員として働きながら、年ごろの男の子を育てる雪子。
頼りになるとはいえない夫と、小さな喫茶店を支える祥子。
個性的で、ありきたりな日常とアウトローな世界の狭間で生きる彼らに出会う人もまた、暮らしの中に訪れた「あちら側の世界」を垣間見ることに。
強盗団のロマンと日常
響野の台詞に始まった強盗団のポリシー。
「そこにロマンはあるか」
誰も傷つけず。
欲望に走り過ぎず。
隙のない作戦で、鮮やかに大金を手に入れる5人の強盗団。
アウトローの世の中では、少数派で、多くは人を傷つけ、欲望のままに、その結果ところどころがほつれた隙間から、犯罪の痕跡があらわになる。
そういう犯罪は、ロマンではない。
彼らの美学は、そう語るのでしょう。
テーマはお節介と親切
『陽気なギャングの日常と襲撃』は、成瀬、響野、久遠、雪子、祥子たち5人の強盗団の「日常」を描いた物語。
銀行強盗の仲間内だけではなく、世の中とのありきたりな接点もある5人。
「ロマン」を共通の価値観にする彼らは、「そこに美しさのない」行為を見過ごしては置けないのでしょう。
それぞれの主人公が出会った人へのお節介。
小さなお節介も、大きくなると親切に………
この物語のテーマになるのではないでしょうか?
まだ読んだことがない方は、ぜひ1作目の『陽気なギャングが地球を回す』から読むことをお勧めしますよ。
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www.yu-hanami.com
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