本当に本が読みたくなる読書のブログ

読書好きのための本当に読みたい本が見つかる書評ブログです。小説、実用書、ビジネス書ジャンルを問わず紹介。読書にまつわる豆知識のお話、文章の書き方のお話もありますよ。

読書をする人は人生の「深さ」を見つけられる

読書をする人だけがたどり着ける場所

著者 齋藤孝
出版社 SBクリエイティブ株式会社
分類 読書の豆知識と読書術の本
出版日 2019/1/15
読みやすさ ☆☆★読みやすい

今回は、読書ブログを続ける花水(hanami)の勉強のために読んだ『読書をする人だけがたどり着ける場所』を紹介させていただきます。

この本は、読書に興味がある方、読書を続けていて「どうやって人生に活かそうか」考えている方、これから読書を始めてみようと思う方におすすめの1冊です。

読書の価値観を深めるために


読書について書かれている本は、大きく2つに分けられると思います。

1つは、著者が考える「読書の価値観」が書かれた本。

もう1つは、速読術や本選びなど読書の技術「読書術」について書かれた本です。

読書ブログを続けている花水由宇(hanami yuu)は、文学部で本格的に文学を学んだわけでもなく、特別な技術があるわけでもありません。

読書の効果や読書術について、お話をさせていただくためには、読書の専門家が書かれた本から専門的な読書の知識を知る必要があるなぁといつも感じています。

以前、紹介させていただいた小説家の森博嗣さんの『読書の価値』読書の価値観を探す 森博嗣さんの『読書の価値』より - 本当に本が読みたくなる読書のブログとは違う目線で「読書の価値観」が書かれた齋藤孝さんの『読書をする人だけがたどり着ける場所』を選んでみました。



齋藤孝さんの紹介


最近は教育番組やトーク番組だけではなく、幅広い知識を活かしたクイズ番組で世の中に知られるようになった作家の齋藤孝さん。

執筆された本は数知れません。


齋藤孝さんの経歴

実用書やビジネス書の作家さんとして、テレビでの教育に携わるコメンテーターとして齋藤孝さんは有名ですね。

本業は、明治大学文学部で教授をされていて教育学、日本語教育学、身体論、コミュニケーション技法と人間の成長に携わる分野が専門。

読書に関しても、豊富な読書歴と執筆歴から専門の本を書かれていて、日本国内や世界中の優れた文学から生き方の知識を手に入れる「教養主義」と呼ばれる大人へ向けた教育論を持論とされています。


齋藤孝さんの本の紹介

齋藤孝さんの実用書は、ビジネスマンの方に限らず多くの方の暮らしに役立つ本が多くあります。

出版されている本が多いので、今回は読書に限って3冊を紹介させていただきますね。


大人のための読書の全技術


大人のための書く全技術


1冊読み切る読書力



実用書を多く執筆されている齋藤孝ならではの読みやすさ

「普通の読みやすさの本」でも、内容がコンパクトでとても理解しやすい本。


『読書をする人だけがたどり着ける場所』の構成

・まえがき p3〜p9
・序章 なぜ、いま本を読むのか p16〜p24
・第1章 読書をする人だけがたどり着ける「深さ」とは p26〜p42
・第2章 深くなる読書 浅くなる読書 何をどう読むか p44〜p66
・第3章 思考力を深める本の読み方 p68〜p92
・第4章 知識を深める本の読み方 p94〜p122
・第5章 人格を深める本の読み方 p124〜p140
・第6章 人生を深める本の読み方 p142〜p158
・第7章 難しい本の読み方 p160〜p187

187ページのコンパクトな本で、1つの章も20ページとさらにコンパクトです。

それぞれの章の最後には、テーマに合わせ齋藤孝さんの取り上げた名著が紹介されています。


読みやすさ

『読書をする人だけがたどり着ける場所』は、「普通の読みやすさ」ではないでしょうか。

読みやすさは普通でも、書かれていることはとても理解しやすいと感じます。

テーマで問題を示したすぐ後に、答えの結論から書き始めて、その後で解説する。

このとてもわかりやすい文章構成は、実用書を多く執筆されている齋藤孝さんの特徴でもあります。

読書の習慣のある方は2時間くらい、読書の習慣がない方でも休憩を取りながら4時間くらいで読むことができます。

通勤通学の合間や、休日のちょっとした時間に読み進めやすい本ですよ。



読書とは?


読書とは、私たちにとって何なのでしょう?

齋藤孝さんの答えは、大きく4つの考えを示されています。

・情報にたどり着く深さ
・思考力を深める
・知識を深める
・人格を深める

4つの段階をたどって、「人生を深める」読書に行き着く。

私は、まだ1つ目から2つ目の段階かなぁと思います。


読書は人生を豊かにしてくれる

いまこそ本を読むべきだ。
読書の楽しみや効用について、私はこれまでも繰り返し語ってきました。
いつの時代も、読書は素晴らしいものです。
思考力を伸ばし、想像力を豊かにし、苦しいときも前進する力をくれる。
自己を形成し、人格を豊かにするのに欠かせないのが読書です。
その価値はずっと変わらないのですが、あえて「いまこそ」と言いたいと思います。
まえがき p3

読書に慣れ親しんでいた私も、読書で得られたことが生き方の役に立つと実感できたのはここ数年のことです。

もっと早くに、生き方に役に立つ読書に出会っていたらとも思います。

だから、こうして花水(hanami)のブログを訪れて下さった方には、ぜひ読書をおすすめしたいといつも思います。


ネットと本の違い

ネットで文章を読むことと、本を読むことは違う
ネットで読むことと読書には重大な違いがあります。
それは「向かい方」です。
ネットで何かを読もうというときは、そこにあるコンテンツにじっくり向き合うというより、パッパッと短時間で次へいこうとします。
中略)
ネットで文章を読むとき、私たちは「読者」ではありません。
「消費者」なのです。
こちらが主導権を握っていて、より面白いものを選ぶ。
「これはない」「つまらない」とどんどん切り捨て、「こっちは面白かった」と消費していく感じです。
消費しているだけでは、積み重ねができにくい。
中略)
浅い情報は常にいくつか持っているかもしれませんが、「人生が深くなることはありません。
・まえがき p4〜p7

私のブログも、インターネットのコンテンツの1つ。

読みやすかったり、読者さんにタメになると思われる記事は多くの人に読まれ、読みにくい記事は情報の中に埋もれていく。

私自身がインターネットのコンテンツを読むときも、齋藤孝さんが書かれているように次々と関連ページに移動しているような気がします。

齋藤孝さんは、インターネットの情報を否定しているわけではありません。

実際に、検索されて表示されるWebサイトを3つ以上読むと、調べたいことに必要な情報は十分に得られると書かれています。

さらに、関連情報を3つ以上読むと、深い知識にたどり着くこともできるといわれています。


読書を通した擬似体験

読書は「体験」なのです。
実際、読書で登場人物に感情移入しているときの脳は、体験しているときの脳と近い動きをしているという話もあります。
体験は人格形成に影響します。
中略)
自分一人の体験には限界がありますが、読書で擬似体験をすることもできます。
読書によって人生観、人間観を深め、想像力を豊かにし、人格形成を大きくしていくことができるのです。
・まえがき p8〜p9

読書をしているときの私たちの脳は、実際に出来事を体験しているときに近い働きをしている。

これは、齋藤孝さんの他にも研究結果として発表されていることでもあります。

読書によって得られた登場人物の体験が暮らしに役立つことは、池上彰さんも著書の中で「ビジネス小説が仕事のイメージトレーニングに最適」考える力がつく本 池上彰 考えることとは何か? - 本当に本が読みたくなる読書のブログと書かれていることと同じではないでしょうか?



読書はなぜ必要なのか?


暮らしの中で読書はなぜ必要なのか?

インターネットが普及して、難しい知識でも簡単に「まとめサイト」が見つかる現代。

読書で得られることはあるのでしょうか?

齋藤孝さんは序章から第2章までの50ページをかけて、インターネットと読書の違い、読書で得られる「認識力」、メッセージを読み解く「人生としての読書」について書かれています。



情報を自分のものにする「深さ」

映画を見た感想やニュースに対するコメントにしても、聞く人が刺激される面白い話ができる人と、みんなが言っているような一般的なことしか言えない人がいます。
中略)
では、その浅い・深いはどこからきているのでしょうか。
それは一言で言えば、教養です。
教養とは、雑学や豆知識のようなものではありません。
自分の中に取り込んで統合し、血肉となるような幅広い知識です。
カギとなるのは、物事の「本質」を捉えて理解することです。
バラバラとした知識がたくさんあっても、それを総合的に使いこなすことができないのでは意味がない。
単なる「物知り」は「深い人」ではないのです。
教養が人格や人生にまで生きている人が「深い人」です。
深い人になるためには、読書ほど適したものはありません。
本を読むことで知識を深め、思考を深め、人格を深めることができます。
・序章 なぜ、いま本を読むのか p26〜p27

『読書をする人だけがたどり着ける場所』を1回だけ読んだとき、私はこの序章は好きになれませんでした。

表面的な会話を楽しむ人を「浅い人」、会話の内容を掘り下げる人を「深い人」と区別して、「浅い人」といわれる人をバカにしているように感じたからです。

ですが、読み返してみると「深い」か「浅い」かは相手と接している場面の表面的なことで、どう受け取るかは相手次第。

自分自身が、どう暮らしの中で活かすかの大切さについて書かれていると後で気づきました。

単純に「コレはこう」「アレはこうなっていて」というように、「いわゆる頭のいい人」の姿ではなく、「自分の考え」を持っているかといった意味に思えます。


「深さ」と「認識力」

「深さ」を手に入れるには、深くその物事を捉える力、「認識力」が必要です。
読書をすることで、著者の認識力が身につきます。
中略)
一流の認識力の持ち主の本を読むと、私たちの認識力も磨かれていくのです。
剣豪・宮本武蔵の代表的な著作『五輪書』は、世界でも広く知られており評価が高い兵法書です。
武蔵は「60回以上勝負をして負けなし」という剣術の達人ですが、強さの秘密は類まれなる剛力や豪快さではありません。
熟練工のように剣術を吟味し、工夫を重ね、最高の技を生み出していることです。
中略)
姿勢一つにきても、「額にしわを寄せずに眉間にしわを寄せて、目玉が動かないようにして、瞬きをせず、目を細めて、鼻筋をまっすぐ、下あごを少しだす……」という具合。
こんなにも細部にわたって意識をめぐらせ、それを言語化しているのか、と驚かされます。
命をかけて剣術を磨き、まさに達人の域に達した人の認識です。
武蔵のような一流の認識力を持った人の書いたものを読むと、私たちの認識力も深まっていくというものです。
中略)
一流の認識力を持った人は、自分のやっていることにはまだまだ終わりがないと考えます。
普通の人が「ここまで到達したらいいだろう」「もう先は見えた」と思うところでも、認識力のある人ほど、まだ挑戦すべきことがあると感じる。
それだけ奥深さを認識しているのであり、だからこそ人生を楽しみ続けることもできます。
・第2章 深くなる読書 浅くなる読書 何をどう読むか p44〜p46,p49〜p50

ここで、「認識力」という言葉を使われています。

認識力の辞書的な意味は、「対象を正確に把握する能力」とあり、哲学的な意味と心理学的な意味では内容が違います。

哲学的には、「人はどのようにして物事を正しく知ることができるのか」という問いの答えとして使われています。

心理学的な意味には、感覚を通して得られた情報を意識(思考)に上がるという意味があります。

齋藤孝さんは、宮本武蔵の剣術での取り組みから人生のあり方が変わることを例にされているので、哲学的な認識力という意味でいいのだと思います。

歴史的に優れた認識力を持った人が書き残された本を読むことで、その人が「物事をどう捉えて、どうやって答えを導き出した」のかを知ることができます。

歴史上の偉人、宮本武蔵を例にされていますが、私は「ハッ」っと閃いた人物がいます。

それは、現代のリアル宮本武蔵イチローさんです。

イチローさん自身が『イチローの書』のような本はまだ書かれていませんが、『夢をつかむイチロー262のメッセージ:Ichiro's message since 2001』はアスリートの方のバイブルとして読まれています。

野球で偉業を成し遂げたイチローさんも、齋藤孝さんのいわれる「一流の認識力のある人」のはずです。

きっと、今の世の中で応用しやすい考え方を読書で取り入れることができたら。

自身の生き方と照らし合わせて、より良い方向に向かうきっかけになるのかなぁと思います。


情報としての読書と人生を豊かにする読書

読書には大きく分けて二つあります。
情報としての読書と、人格としての読書です。
ノーベル物理学賞受賞で話題になった「重力波」について知りたいと思って、情報がコンパクトにまとまっている新書を読もうとするのは、情報としての読書。
中勘助の自伝的小説『銀の匙』を読み、自分の子どもの時代と重ね合わせながら世界観を味わうのは人格としての読書。
情報としての読書の場合、著者が誰であるかはさほど重視しないこともあるでしょう。
その人の世界観というより、事実を知りたいと思っているからです。
ただ、情報と人格は、最終的にはあまり切り分けられません。
・第2章 深くなる読書 浅くなる読書 何をどう読むか p50

情報としての読書は、実用書を読んで身近なことを知ったり、ビジネス書を読んで仕事に活かしたりする本の読み方が身近です。

もう1つの、人生を豊かにする読書は小説の物語に入り込んだり、エッセイの著者のエピソードから生き方を学ぶ本の読み方。

齋藤孝さんも言われているように、私も2つは切り離せないかなぁと思います。

1つは、情報としての読書で本を読むトレーニングを繰り返すと、著者が作品に込めたメッセージを読み取る力がついてくるでしょう。

簡単に書くと「本に慣れる」ということ、メッセージを読み取る練習を実用書で繰り返すうちにエッセイからも具体的なメッセージが読み取れるようになるはずです。



読書について改めて知りたい方におすすめ


読書の専門家で作家でもある齋藤孝さん、読書の価値観が綴られた『読書をする人だけがたどり着ける場所』。

コンパクトな1冊に、「現代でも読書が役に立つ理由」から「人生を深める読書の価値」まで読書の価値観が奥深くまとめられています。

1回だけで、全てを紹介させていただくのは花水(hanami)には難しく、今後「読書コラム」や「読書の豆知識」で普段の読書と照らし合わせながら紹介させていただきますね。



「読書の効果と読書術」の本はこちらもどうぞ↓
www.yu-hanami.com
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