一切なりゆき〜樹木希林のことば
著者 樹木希林
出版社 株式会社文藝春秋
分類 エッセイ
出版日 2018/12/20
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
今月の本は樹木希林さんの『一切なりゆき〜樹木希林のことば』。
第2回は、実際の希林さんの言葉に触れてみますね。
人生は思い通りにならない
嫌な出来事、辛い出来事、世の中は自分の思い描く通りにはならない。
辛いとき苦しいときに振り返りたい言葉を選んでみましたよ。
思い通りの価値は?
人生なんて自分の思い描いた通りにならなくて当たり前。
私自身は、人生を嘆いたり、幸せについて大げさに考えることもないんです。
いつも「人生、上出来だわ」と思っていて、物事がうまくいかないときは「自分が未熟だったのよ」でおしまい。
こんなはずでは………というのは、自分が目指していたもの、思い描いていた幸せとは違うから生まれる感情ですよね。
でも、その目標が、自分が本当に望んでいるものなのか。
他の人の価値観だったり、誰かの人生と比べてただうらやんでいるだけなのではないか。
一度、自分を見つめ直してみるといいかもしれませんね。
第1章 生きること p24〜p25
人生は思い通りにならない。
私も痛感していることでもあります。
楽観と悲観の両極端で、どちらでもない中間が起こる。
「最悪にならなくてよかった」
そう思えればいいのに、つい思ってしまう。
「何で思い通りにならないんだろう」
そんなとき、思い出したい言葉。
「人生、上出来だわ」
今がありがたいとということ
「もっと、もっと」という気持ちをなくすのです。
「こんなはずてはなかった」「もっとこつなるべきだ」という思いを一切なくす。
自分を俯瞰して、「今、こうしていられるのは大変ありがたいことだ、本来ありえないことだ」と思うと、余分な要求がなくなり、すーっと楽になります。
もちろん人との比較はしません。
第1章 生きること p24〜p25
いい方にも、悪い方にも傾く人生。
「こうなりたい」希望
「こうしたい」欲望
「こうありたい」こだわり
自分の考え方のクセが強すぎると、今がある幸せが見えなくなるのかもしれない。
「今、こうしていられるのは大変ありがたいこと」
今がある幸せを大切に思いたいなと思える言葉でした。
相手にやさしいと思ってもらえること
生きていく中で、向き合わなければならないのは周りの誰か。
相手があるから自分もある。
やさしい気持ちになれる言葉を選んでみました。
相手の嫌なところは自分の嫌なところ
愛とのマイナス部分がかならず自分の中にもあるんですよ
どの夫婦も、夫婦となる縁があったということは、相手のマイナス部分がかならず自分の中にもあるんですよ。
それがわかってくると、結婚というものに納得がいくのではないでしょうか。
ときどき、夫や妻のことを悪く言っている人をみると、「この人、自分のこと言ってる」と、心の中で思っています。
第5章 女のこと、男のこと p157
嫌だなぁと思うことって、どこかしら自分にもあるのかもしれない。
自分は認めたくないから、相手のせいにして嫌だなぁと思うのかもしれない。
もし、そうならとても自分勝手な思い込み。
誰かの嫌なところを1つ見つけたら、自分の嫌なところを1つ直せるようになりたいな。
まず謝ることから始める
「向こうが悪いんだ」と言い続けて、何が生まれるのでしょう。
外国で自動車同士がぶつかったら、互いに絶対に謝らないところからスタートするというけれど、私は昔から日本人がもつ、自分が悪いかどうか分からなくても「ごめんなさい」という気持ちが好きです。
「とんでもない。向こうが悪いんだ」と言い続けて、何が生まれるのでしょう。
私は体力が無いから、戦うエネルギーの無駄を考えてしまいます。
第2章 家族のこと p94〜p95
まず謝ること、これは私も大切にしていること。
争うことで、物事が良くなることは少ないのかなと思います。
理不尽な交通事故や犯罪被害でもない限り、きっと自分が気がつかないだけで落ち度があるはず。
だから、先に「ごめんなさい」を言いたい。
相手を責めたり、言い訳が出てしまう前に…
本当のやさしさ
「やさしさ」という言葉でもどれだけ違うか
私、何人かの人間とつきあって、その人が死ぬときに「あいつ、やさしい人間だったな」と思ってもらえるような、そういう添いかたをそれぞれにしていきたいなというのが私の理想なのね。
そういうふうになっていったときに、すごく色っぽい女になるだろうなと思うんですよね。
中略)
“生まれ、生まれ、生まれ、生まれて生の初めに暗く”という空海の言葉があるんです。
“死に、死に、死に、死んで死の終わりに冥し”っていう。
自分の人生の中でいろんな文章に出くわすとその都度感動したりするんですけど、いつまでもひとつもわかっていないというところへ、ふわっと行っちゃうんですね。
第1章 生きること p29〜p30
やさしさって何なのだろう?
私は、相手を受け入れてあげれる気持ちがやさしさだと思う。
他にも、相手のためにあえて厳しいことも伝えて向き合うこともやさしさという人もいます。
希林さんのやさしさは、相手にやさしいなと思われる人になること。
どれも正解で、答えはないんだと思う。
希林さんのやさしさ、相手にとって1番やさしいのかもしれませんね。
現代の仏さまのような存在
『一切なりゆき〜樹木希林のことば』を読み終えて、素直に浮かんだ感想があります。
こんなにも、自分の人生と、出会った人と向き合った人がいたんだ。
誰でも自分と、出会った人と向き合っいるはず、それは私も同じ。
それでも、多くの人に心の中の言葉を飾りなく語るのは、そうできることじゃないですよね。
飾りがないから、まるで電気の消えた街から見上げた星空のように………エピソードの1つ1つが、人生の後輩へのメッセージが伝わるのかもしれない。
樹木希林さんって、1人の女優さんで、1人の奥さんで、1人のお母さん出会ったけれど、生きる意味を理解された、なんだか仏さまのよう。
もっと語って欲しかった、そう思える1冊でした。