世にも奇妙な君物語
著者 朝井リョウ
出版社 株式会社 講談社
分類 ミステリ小説
出版日 2018.11.15
読みやすさ ☆☆★
今日は、「そろそろ新しいミステリ小説を読みたくなった」「少しだけ刺激が欲しい」方におすすめの本を紹介させていただきますね。
『桐島、部活やめるってよ』で、2009年にデビューされた朝井リョウさんのミステリ作品『世にも奇妙な君物語』。
一気読みできる、4つの短編作品が楽しめる1冊です。
「今どき」がテーマの4つの物語
世にも奇妙な君物語には、今どきの話題をテーマに描かれた4つの物語が広がっています。
シェアハウさない
自身が経験した悲劇をテーマに、ノンフィクションの出版を夢見るライターの田上浩子。
初めての特集企画が決まった夜、嬉しさでグラスが進み、頭まで回った酒でそのまま眠りについてしまう。
目が覚めたのは、40代にも見え、さらに若くも見える女性の暮らす一戸建てのリビングだった。
そこは、年代の違う4人の男女が暮らすシェアハウス。
4人の人間関係に少しの不安を覚えたものの、新しい特集企画の記事のテーマにぴったりのネタを思いついた浩子は、そこに5人目の住人として暮らすことを願い出た…。
心の底をそれぞれの個性で包み、カーテンのように見えない4人の住人が暮らしている理由とは………。
リア充裁判
コミュニケーション能力が求められる企業が増え、政府も予算をかけて子どもたちのコミュニケーション能力を育てる政策を打ち立てた。
「コミュニケーション能力促進法」
この法律が適用されたコミュニケーション特区では、サークル活動、女子会、シェアハウスが奨励され、18才以上の国民は「能力調査会」で活動を調査されるようになった。
小学生の知子が慕っていた、清楚で優しくて面倒見のいいお姉ちゃん。
お姉ちゃんは、「能力調査会」に呼ばれてから知子の知らない性格に変わってしまった。
こんな「コミュニケーション」は間違っている。
高校を卒業した知子は、「リア充裁判」とも呼ばれる能力調査会を、今まさに受けることになる。
立て!金次郎
元気な好青年 金山光次郎は、子どもに慕われて保護者からも好かれる幼稚園教諭、だった。
4月の入園とクラス分けから、9月の文化祭までは保護者の印象が良かった金次郎。
文化祭を境にクレームも増え、保護者の信頼を失いかけているようだった。
計算式の組み込まれたワークシートを使い、園児を細かく管理する先輩の須永からは、同じように園児たちの管理を求められていた。
それでも、園児たちに寄り添い、失いかけた信頼を取り戻そうと自分の考えを貫こうとする金次郎。
クレームが増え、保護者の信頼が下がった本当の理由とは………
13.5文字しか集中して読めない
ネットニュース配信会社の本田香織は、読者の興味を引きつけるキャッチフレーズと短い要約文でアクセスを集めるメディアライター。
大手企業に務める夫と小学生の息子を育てながら、家庭と仕事を忙しく両立していた。
新聞や書籍離れが進み、長い文章を読み慣れない世代の人気を集めたネットニュースにも、競合するライバル会社の成長もあって変化が求められていた。
13.5文字のキャッチフレーズと短い要約文の配信スタイルにこだわりたい香織、上司で憧れのライターでもある板野と意見が食い違うようになる。
それは、平穏なペースで刻まれていた暮らしにも変化を起こすことに………。
物語の真実は…
これ以上はネタバレになってしまいますが、1つ付け加えるなら。
それぞれの物語は、はじめの方に謎解きのキーワードが散りばめられ、後半の数ページで一息でパズルが組み合わさるように描かれてました。
そして、読者を気持ちよく裏切ってくれる驚きの展開が楽しめる物語ですよ。
登場人物に注目したい作品
世にも奇妙な君物語は、それぞれの物語の登場人物にも細かく注目して読みたい小説です。
1つ1つの物語の登場人物を覚えているほど、最後の「脇役バトルロワイヤル」を楽しめることにつながるからです。
そろそろ新しいミステリ小説を読みたくなった、少しだけ刺激が欲しい方におすすめの小説です。