むらさきのスカートの女
著者 今村夏子
出版社 朝日新聞出版
分類 小説、純文学
出版日 2019/6/30
読みやすさ ☆☆★読みやすい
今日は、第161回芥川賞受賞作品の『むらさきのスカートの女』。
そういえば、芥川賞受賞作品を紹介させていただくのは初めてですね。
ネタバレしないように、今村夏子さんの描く世界に少しだけ触れてみます。
2人の主人公
『むらさきのスカートの女』のタイトルのように、物語の主人公 むらさきのスカートの女。
彼女の知られざる暮らしを教えてくれるのが、物語の語り部 黄色いカーディガンの女。
むらさきのスカートの女
いつも同じ服をきていて
髪の毛はしばらく切っていない
仕事を始めたかと思えば1カ月もたたないうちに辞めたように見えて
求人応募は拾った雑誌
年代に似合わず携帯電話も持たず
家賃を払っているかもわからない
きっと世の中に溶け込めていないんだろうなぁ。
近所の子どもたちからはお化け扱いで、こう呼ばれていた。
「むらさきのスカートの女」
黄色いカーディガンの女
「黄色いカーディガンの女」
こう呼ぶ人は、街の中にはいない。
暮らしている地域にも、仕事場にも、その中の一部のように溶け込める。
彼女にもまた、異質な心の一部はあった。
それは、「知りたい」こと。
近所で有名な「むらさきのスカートの女」の全てを知るために、全てを調べぬく執念のような思いが秘められていた。
気になる存在を知るために…
街の不思議な存在、むらさきのスカートの女。
彼女の謎に迫り、住んでいる場所、毎日の日課、その日の体調まで見つめる主人公。
物語は、黄色いカーディガンの女の見つめる目線で進んでゆく…。
公園に隣接するアーケードの商店街
物語の舞台は、下町の雰囲気のある商店街。
アーケードに覆われ、八百屋さんから薬屋さん、むらさきのスカートの女が好きなクリームパンを買うパン屋さんが軒を連ねる。
商店街の外れには公園があり、いつもの子どもたちが学校帰りに集まる。
ほんの少しだけ懐かしい風景が広がっています。
どちらが主人公なのか?
ほとんどの人が知らないような、不思議な暮らしのむらさきのスカートの女。
彼女の暮らしを静かに見つめ、少しだけ手を出す黄色いカーディガンの女。
物語な主人公は、いったいどちらの女なのでしょう。
むらさきの女の姿が、黄色いカーディガンの女の目線を通して伝わる不思議な世界が広まっていました。