ゼロからはじめる力〜空想を現実化する僕らの方法
著者 堀江貴文(ホリエモン)
出版社 SBクリエイティブ株式会社
分類 ビジネス書、一般教養・雑学
出版日 2020年4月15日
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
ホリエモンがロケット開発を語ってくれる1冊から、事業や仕事の役に立つ2つのことを選んでみました。
それは、目標に合った「必要なこと」を選んで「地図に沿って」進むこと。
ホリエモンがロケット開発で大切にしている2つなこと
ホリエモンこと堀江貴文さんが熱心に取り組まれているロケットの打ち上げ。
宇宙に憧れて、ロケット開発の仲間を集めてから小型ロケットMOMOの打ち上げが成功するまでの多くのエピソードが『ゼロからはじめる力〜空想を現実化する僕らの方法』には書かれていました。
全く何の知識もない立ち上げ当初から、専門家を集めて大樹町の空にMOMOが打ち上がるまで、そして今も大切にしている2つのことが書かれていました。
ロケットの世界にいない私たちにも、事業や仕事に役立つはずです。
必要なことに的を絞る
最高の○○に的を絞る。
事業やプロジェクトを成功させるために大切なこととホリエモンはいいます。
日本的な建前が邪魔をする
ひとつの事業を立ち上げるには、色々な要素を考慮してうまく行動しないといけない。特に人の世の事情というのはなかなかやっかいで、例えば「技術としてはこうするのが正しいけれど、今はあっちにしてこの人たちに恩を売っておかないと事業が前に進まない」というようなことがあり得る。
・第1章 なぜ、僕は宇宙を目指すのか〜ISTはただしいことしかしない p58
ホリエモンさんの携わる大事業ではなくても、私たちの働く会社にも仕事が前に進まないことはよくあります。
1つの企画書やプロジェクトを通すだけでも、若手の会社員の方なら「お世話になっている先輩」「部署内のご意見番」「直属の上司」「関係部署のベテラン社員」「課長や部長」、多くの人の間を通ってようやく「社長」にたどり着くことは珍しくないでしょう。
プロジェクトの失敗や関係部署とのトラブルを防ぐためには、必要な流れではあります。
このような「日本的な建前」は、画期的なプロジェクトが遅れたり、テレワークが普及しない原因でもあります。
最高の「場所」「環境」に的を絞る
ロケットビジネスでそれ(p58)をやってしまうと、失敗が「お友達になろうよ」と近づいてくる。
ロケットビジネスにとって「最高の場所に、最高の環境を作る」というのは絶対条件だ。その後に「最高のロケットを開発する」という課題だけが残るようにして、開発に携わる技術者がベストを尽くすことができるようにしなくてはならない。
・第1章 なぜ、僕は宇宙を目指すのか〜ISTはただしいことしかしない p59
ホリエモンさんは、「日本的な建前」を全く捨ててしまおうとは書いていません(思ってはいるかもしれませんが…)。
ロケットビジネスのように、技術者が建前に惑わされて思うように動けない仕組みは失敗につながると書いています。
これは、私たちの働く会社でもあることなのではないでしょうか?
若手社員の方が「必要な流れを踏まずトラブルが起きた」なら、プロジェクトそのものの失敗ではないはずです。
ロケットビジネスの場合は、最高の「場所」「環境」にだけ的を絞ることが大切とあります。
会社の扱う商品やサービスで違いはありますが、最高の「質」「コスパ」、最高の「量」「速さ」に的を絞ることも1つの目線なんですね。
「必要なこと」に的を絞る
「俺は必要なことしかやらない。逆に必要なことならなんだってやってやる!」
『なつのロケット』あさりよしとお
これは僕らのポリシーでもある。
・第1章 なぜ、僕は宇宙を目指すのか〜ISTはただしいことしかしない p60
ロケットビジネスでは、もう1つ「必要なこと」に的を絞ることが大切と書いています。
1つのプロジェクトでも、「必要なこと」を絞り込むことで人手と時間の無駄を省くことができるはずです。
目標に向けた失敗は失敗ではなくなる
失敗しながら挑戦して、生きたノウハウを手に入れて、次に行く。
ホリエモンは、目標に向かう試行錯誤が大切といいます。
目標からズレた試行錯誤(trial and error)には否定的
ホリエモンさんは、今までの著書や発言から「試行錯誤(trial and error)」には否定的です。
有名な発言が「寿司職人に修行は不要」というものがあります。
寿司職人に弟子入りした人が仕事の実践や知識を先輩から学ぶことができず、雑用をこなしながら「見て盗む」働き方を否定したエピソードです。
私は、この「寿司職人に修行は不要」にとても賛成です。
寿司職人を目指す人は、掃除のプロになるわけでも盗み見のスペシャリストになりたいわけでもありません。
目標は、「寿司職人になること」
そのために、魚のさばき方やシャリの炊き方で試行錯誤を重ねることをホリエモンも否定していません。
試行錯誤の目標は「ノウハウを手に入れる」こと
確かに知識や経験はあった方が早い。が、結局、僕らは1つひとつ試しながら宇宙を目指した。僕らのロケット開発は、「自分たちで手を動かして、失敗しながら挑戦して、生きたノウハウを手に入れて、次に行く」ことの連続だった。
教科書なんてなくても、まずやってみることだ。
・第2章 ゼロから始めたロケット打ち上げへの道〜やりたいことがあれば、経験は関係ない p73
「目標に向かう試行錯誤」は認めているホリエモン。
認めているというより、ロケット開発で実践しています。
その目標は、「ノウハウを手に入れる」こと。
寿司職人を目指す方なら、魚のさばき方を「どうすれば成功できるのか」につながることが「目標に向かう試行錯誤」なのでしょう。
私のように会社員なら、「どうすれば部長の許可がもらえるか」ではなく「プロジェクトを成功できるか」が目標に向かう試行錯誤なんですね。
失敗でも「前に進む」ということ
結局、成功しても失敗しても、どちらも前進。現状維持が1番よくない。だから、稲川君(IST株式会社 現社長 稲川貴大)は打ち上げに失敗した記者会見でも、「この事態は、大きなロードマップから見たらこんな意味があって、こんな進歩があった。だから、次はこんなことに挑戦しますよ」という話をしようと心がけているそうだ。
失敗は同時に学びだ。足踏みせず前に進むことで、初めて見えてくるものがある。
・第2章 ゼロから始めたロケット打ち上げへの道〜やりたいことがあれば、経験は関係ない p84〜p85
試行錯誤は、試してみて→失敗して→工夫して→また試してみる流れを繰り返してノウハウを手に入れていきます。
大切なポイントは、「失敗しても前に進む」と社長の稲川貴大さんは考えていました。
起きてしまった失敗に「次につながる課題」があるのかが重要なんですね。
目標に合った「必要なこと」を選んで「地図に沿って」進む
ホリエモンがロケットビジネスで大切にしていることをまとめると2つのことが見えてきました。
「必要なことを選ぶ」
「地図に沿って進む」
1つ目の「必要なことを選ぶ」ことは、事業や仕事の流れの中から、本当に大切なことに的を絞ることでしょう。
2つ目は、事業や仕事の目標をゴールにして、それまでの道のりを地図にしてみることです。
ビジネス用語では、ロードマップと呼ばれているようです。
このロードマップからズレていないかは、次につながる失敗だったのかの目安になるはずです。