スズメのおお通夜
雨上がりの土か草の香りが漂う、決して空気の喉ごしが良くない盆明けのある日。
北国の、そこそこ都会と思い込んでいる小さな地方都市の郊外。
仕事帰りの買い物に立ち寄ったスーパーの駐車場で、1羽のスズメの死を知った。
スズメの死を誰も知らないのかもしれない
スズメは1羽だけで亡くなっていた。
「まだ生きているかも」
柔らかな体はまだ温もりがあり、風邪でなびく羽は今にも動き出しそう。
けど、心臓の動きは止まっていて、触れても驚いて逃げ出すこともない。
周りに1羽の他に鳥も動物もおらず、誰かに狙われていたわけではなさそう。
もしスズメが誰かの親だったら、子どもは父親か母親の死を知らないのかもしれない。
もし誰かの最愛の1羽だったら、待ち合わせをするはずだった誰かはいつまでも待っているのだろうか?
スズメの死は、私の他に誰も知らないのかもしれない。
スズメの生にも死にも理由はあった
1羽だけで、駐車場に横たわり亡くなったスズメ。
卵の頃から、親の愛情を受けて育ったのだろう。
兄弟たちと、賑やかに囀ったはず。
愛する相手はいたのかな?きっといたはず。
子どもは授かっていたのかな?もしかすると、巣立ちして地方に行った子どもと帰省自粛で会えなかったのかも?
何で死んだのだろう?
見た目に怪我はしていない、襲われたわけではないようだ。
どこかにぶつかったような様子もない。
近くに街路樹はあるけど、避けられるはず。
電線も、きっと生活の一部のはず。
わからない死の理由。
けれど、スズメの生にも死にも理由はあった。
次もどかで会いましょう
私とスズメが出会ったのは、最後の時を終えてからだった。
スズメが次、何に生まれ変わるかはわからない。
きっと仏様だけが知っていること。
「埋めてあげよう」
せめて亡骸が車に踏み潰されないように、カラスや野良猫に食べられてしまわないように、命を失ったスズメにとっては気にすることでもないのだけれど。
駐車場そばの街路樹の下に、空き缶を潰した手作りのスコップで穴を掘り、自然のお墓を作った。
いっぱい生きたのかな?お疲れさまでした。
また次もどこかで会いましょう。
次の一生へいってらっしゃい。
スズメの来世を仏様に祈った、傾きかけた暑い日の夕方。