2000年王国の秘宝と不死の支配者
最も豊かで、科学と技術が集まる小さな国は、たった1つの島から世界中へ大きな影響を与えていた。
温和な大統領と世界中で最も優秀な国会議員が治める国では、国民は働かなくても最高の暮らしを保証され安心に過ごすことができる。
2000年王国
2000年間続く安定した国は、こう呼ばれていた。
2000年間政権が変わらない国
大洋に浮かぶいくつかの小島に2000年間政権が変わらない国がある。
世界中の富と力が集まる2000年王国では、国民は世界中で最高の暮らしが保証されていた。
「国の外に出てはいけない」「政権中枢の島に入ってはいけない」の2つを守るだけ。
穏やかで国民思いと噂される大統領を見た国民は、歴史上誰もいない。
世界中で最も優秀な人が集まる国会議員1人の姿も、国民は見たことがない。
なぜなら、何もしなくても世界中で最高の暮らしが保証されていたから。
世界支配と政権の腐敗
大統領は「人の心を忘れた暴君」、2000年王国は海外の植民地で人を酷使し富を吸い上げる「世界支配の国家」。
こうした記事が掲載された雑誌を、国民はオカルトのように笑い、信じたりはしなかった。
仮に真実であったとしても、自分たちは豊かな暮らしを続けられていることに変わりはないからだ。
数年前に消息を絶った雑誌記者の父を探す青年トトは、父の書いた記事「世界支配と政権の腐敗」は真実なのでは?と取材を進めていた。
父の消息をたどりながら取材を進める中で、2000年間国会議員を務め、何かの理由で失脚させられた元支配者の娘ポポと出会い、2000年王国の秘密に迫る元支配者の日記を見つけた。
不死の支配者の秘密
元支配者のポポの父親の記録には、まさにオカルトじみたことが書かれてある。
日記は、トトの父親の書いてきたオカルトと蔑まれる記事を裏付ける内容だった。
・人魚の肉を食べた
・人魚が生き続ける限り命を失わない
・人魚を生かすため、政権中枢の島の生命維持の生け簀に監禁している
大統領と取り巻きの国会議員は、世界と同じだけの長さの命を持つとされる種族人魚の肉を食べ、2000年王国が建国された頃から生き続けている。
人魚の肉を食べた者は、その人魚が生き続ける限り命を失うことはない。
そのために、肉を食べた人魚を2000年間も監禁し続けていると書かれていた。
また、王国は2000年間で培った科学力を背景に、国境の外で多くの植民地を支配し、そこに住む人を奴隷のように働かせているとある。
そのため、海外で暮らす人は2000年王国の大統領と国会議員を「不死の支配者」と呼んでいる。
海外を知らないトトとポポには、信じられないようで、十分にあり得そうな話でもあった。
日記の最後のページは、こう締めくくられていた。
『2000年前の秘密を探せ』