大衆文学で「ジャンルを問わない」中編小説を公募する新人文学賞
純文学の6つの新人文学賞を除いて、作品を公募する文学賞を調べてみると、あることに気がつきました。
公募の新人文学賞はたくさんあるのですが、中編小説で「ジャンルを問わない」としている文学賞が予想していたよりも少なかったことです。
大衆文学の中編小説を募集する新人文学賞は多い?少ない?
大衆文学全般のジャンルでは、中編小説を募集している新人文学賞は決して少なくはありません。
ただ、400字詰め原稿用紙換算で100枚から300枚の原稿規定のある新人文学賞は、ほとんどが推理小説・ミステリ作品、ライトノベルのジャンルに偏っています。
その他の青春小説や、「ジャンルを問わない」としている新人文学賞は、400字詰め原稿用紙換算で300枚以上の長編小説、もしくは原稿用紙換算10枚から100枚までの短編を募集しています。
中編小説という分け方では、純文学の6つの新人文学賞のよりも、ジャンルが偏っていることが特徴になっているようです。
出版社主催の新人文学賞
出版社が主催する、「ジャンルを問わない」中編小説の新人文学賞は、KADOKAWAの小説野生時代新人賞、ポプラ社のポプラ社小説新人賞、集英社オレンジ文庫 ノベル大賞、電撃文庫とメディアワークスの電撃小説大賞の4つがありました。
ポプラ社小説新人賞
対象:誰かに届けたい〝面白さ〟が凝縮されたエンターテインメント小説(ジャンルは問わず)
主催: 株式会社ポプラ社
選考:ポプラ社編集部
締切:2021年6月30日
発表:2021年12月 ポプラ社 公式サイト
原稿規定:400字詰め原稿用紙換算200枚~500枚
賞金:新人賞 正賞、副賞200万円/特別賞 正賞、副賞30万円/奨励賞 正賞、副賞10万円/ピュアフル部門賞 正賞、副賞10万円/時代小説部門賞 正賞、副賞10万円
書籍化:あり、出版後の印税
公式サイト: ポプラ社
小説野生時代新人賞
対象:広義のエンターテインメント小説(ジャンルは問わず)
主催: 株式会社KADOKAWA
選考:冲方 丁、辻村深月、森見登美彦
締切:2021年8月31日
発表:2022年5月 小説「野生時代」誌上
原稿規定:400字詰め原稿用紙換算200枚~400枚
賞金:新人賞 正賞、副賞100万円
書籍化:あり、出版後は規定の金額の支払い
公式サイト: 第14回 小説 野性時代 新人賞|KADOKAWA
集英社オレンジ文庫 ノベル大賞
対象:幅広く楽しめるエンターテインメント作品(ジャンルは問わず)
主催: 株式会社集英社 一ツ橋文芸教育振興会
選考:桑原水菜、今野緒雪、三浦しをん、吉田玲子
締切:2022年1月10日
発表:2022年8月 オレンジ文庫 公式サイト、チラシ誌上
原稿規定:400字詰め原稿用紙換算100枚~400枚
賞金:大賞 正賞、副賞300万円/準大賞 正賞、副賞100万円/佳作 正賞、副賞50万円
書籍化:文庫化、出版後の印税
公式サイト: 集英社 ― SHUEISHA ―
電撃小説大賞
対象:(ジャンルは問わず)
主催: 電撃文庫、メディアワークス
選考:三雲岳斗、三上 延、吉野弘幸、小原信治、電撃文庫編集長、メディアワークス文庫編集長
締切:2022年4月10日
発表:2022年10月 電撃各誌、公式ホームページ上
原稿規定:
・長編、400字詰め原稿用紙換算250枚~370枚
・短編、400字詰め原稿用紙換算42枚~100枚
賞金:大賞 正賞、副賞300万円/金賞 正賞、副賞100万円/銀賞 正賞、副賞50万円/メディアワークス文庫賞 正賞、副賞100万円
書籍化:あり、最終選考作品には編集担当がつきサポート
公式サイト:電撃文庫・電撃の新文芸公式サイト
地方自治体・民間団体主催の中編小説
地方自治体・民間団体が中編小説を公募する文学賞は東京都千代田区のちよだ文学賞、秋田県のさきがけ文学賞、福岡県北九州市で小島信夫文学賞の会が主催する芙美子文学賞の3つがあります。
ちよだ文学賞(東京都千代田区)
対象:未発表の小説(千代田区縁の人物や区内の名所・旧跡、歴史などを題材にした作品を歓迎)
主催: 東京都千代田区
選考:逢坂剛、唯川恵さん、角田光代
締切:2021年4月30日
発表:2021年10月
原稿規定:400字詰め原稿用紙換算120枚以内
賞金:大賞100万円
書籍化:あり、著作権は主催者
公式サイト:千代田区ホームページ - 第17回ちよだ文学賞募集の概要
中編小説の出版を目指すなら出版社主催の新人文学賞
「ジャンルを問わない」中編小説の新人文学賞は少なく、推理小説・ミステリ小説に偏っていることがわかりました。
文庫化の多いポプラ社小説新人賞、出版が約束されている小説野生時代新人賞の原稿規定が長編小説までを含んでいることもあり、作品を出版することに何かの理由がありそうです。
例えば、短編小説なら「短編集」のように何人かの作家さんの作品を合作にできるなどでしょう。
出版社の情報を詳しく調べてみる必要がありそうです。
花水(hanami)のように中編小説の出版を目指したい方は、集英社オレンジ文庫 ノベル大賞、電撃小説大賞のように出版社が主催する新人文学賞を目標にすると、道筋が具体的になるのかと思いますよ。