SF小説の定義と指標
今回の読書の豆知識では、多くのジャンルがあるSF小説をまとめさせていただきます。
調べていて思ったことは、SF小説は歴史も設定も奥が深いということ。
SFの4つの指標と細かなジャンル分けが、SF小説選びの参考になれば幸いです。
SF小説とは?SFの定義と歴史
SF小説の細かな設定の前に、そもそもSFとはどんなジャンルで、いつ頃生まれたのかをおさらいしてみますね。
SF小説とは?
SF(英語: Science Fiction、サイエンス・フィクション)は、科学的空想に基づいたフィクションとされています。
SF小説で取り扱われるテーマは、未来の科学技術、宇宙を舞台にした物語、最近ではAIと人の心の交流を描いた舞台設定と多くのジャンルが登場しています。
SF小説は古典の歴史から
科学的空想というと、宇宙開発やAIなど最先端技術が思い浮かびますがSFの歴史は古く古典の時代から描かれていました。
SF小説の歴史は、19世紀から20世紀初めにヨーロッパでタイムマシンや宇宙旅行の設定が確立した時代を「創世期」と位置づけています。
その後、20世紀半ばにかけてアメリカでSFのジャンルが増えた「黎明期」が訪れ、映画化やアニメ化で映像化されるようになります。
日本国内では、古典の時代の『竹取物語』で描かれる月、『浦島太郎』の時間の流れが変わる設定はSFの要素があるとされています。
時代は進み、戦後にアメリカから輸入された作品の翻訳から、本格的にSF小説が流行し、1960年代には日本のSFの基礎を作ったSF作家さんが大勢デビューされます。
その後は、漫画やアニメのブームとともにSFは日本の文化を代表する創作ジャンルとして令和の現代まで発展を続けています。
SFの4つの指標
SF小説の書評家・SF翻訳家として名高い大森望さんは、SFの4つの指標を示しています。
1.科学的論理を基盤、現実とつながっている
2.現実では起きないことが起きる
3.読者の常識を覆す独自の発想
4.既存の(擬似)科学的アイデアが登場
出典:『21世紀SF1000』大森望
はじめの「1.科学的論理を基盤、現実とつながっている」は、ホラー小説・ファンタジー小説とSF小説を区別する大切な指標です。
SFは科学的論理が元にされていて、現実世界の科学技術の延長や関連技術とされています。
ホラー小説の怨念や祟り、ファンタジー小説の魔法のように科学技術とは関係のない設定とは区別されています。
「2.現実では起きないことが起きる」点は、ミステリー小説と区別するために必要な視点です。
時間差トリックや心理トリックで説明がつくなら、SFとは別のジャンルの設定とされています。
「3.読者の常識を覆す独自の発想」は、日本SF作家クラブの「これ(SFの科学技術)がなかった以前の世界が想像できない」という指標と近い考え方です。
SF小説を読んだことで、遠い宇宙のことを身近に感じたり、いずれAIを搭載したロボットが世の中の中心になるかもしれないといった読者自身の変化です。
最後の「既存の(擬似)科学的アイデアが登場」は、ジャンル的なお約束とされています。
既存の科学的アイデアは現実に存在したり開発中のものごとで、ロボットやAI、宇宙開発技術を指し示しています。
疑似科学的なアイデアは、現代科学では否定されていたり、未だ説明ができないものごととされています。
SFの4つの指標を満たしている作品が、いわゆる狭い意味でのSF小説とされています。
科学的論理の設定とは?
SF小説は、ロボットやサイボーグなど空想の科学技術が発達した舞台設定が定番とされています。
空想の科学は、今現在は開発されていない科学技術という位置つけで、実は科学そのもの。
科学的論理の解説はとても長くなってしまいますが、「適切な証拠から、適切な推論過程によって推論されている」とされ、数値で仕組みが明らかにされていることが必要です。
もし、魔法を使える舞台設定の作品があったとします。
魔法が一部の人に偶然現れる超能力とされるなら、ファンタジー小説に分類されるでしょう。
もし、○○の法則に基づいて「特有の遺伝情報」「細胞のエネルギー器官が異なる発達」「体の中のエネルギーを電気エネルギーとして外に移動できる」、魔法の力は○○の数式に反比例するといった設定があるなら、SF小説として扱われるでしょう。
科学的論理の設定別のSF小説のジャンル
SF小説のジャンル分けは、専門家の方の間でも議論が絶えないようです。
読者さん目線で、「科学的論理の設定別」と「舞台設定別」で大まかに分けさせていただきました。
科学的論理の設定別は、作品の中で扱われる理論の元になる科学の分野で分けられています。
ハードSF
物語に登場する科学的論理を、細かく具体的に設定し尽くした作品はハードSFと呼ばれています。
登場人物の中に、具体的な内容を解説してくれる解説役の科学の専門家が登場する作品も少なくはありません。
時間SF、歴史SF、タイムトラベル
時間をさかのぼり自分のルーツを探ったり、会いたかった人に会う物語は時間SFと呼ばれています。
SFにはタイムトラベルができる理由を説明しなければならないため、タイムマシンのように体ごと行き来する乗り物や精神だけを過去に飛ばす装置が必要です。
実在する物理学から生み出された○○理論、機械工学や電気・電子工学で作られた発明品が登場するSF小説です。
サイバーパンク
体の一部を機械に置き換えるサイバー技術は、現代でも実用化が進んでいます。
サイバー技術が行き過ぎた結果、もはや人と呼べるのかどうかまで機械化された世界を描いた作品はサイバーパンクと呼ばれています。
現代では、人の心をメモリーチップに移すようなソフトウェアのサイバーパンクも増え、情報科学や情報工学、医学の知識が元になるジャンルです。
ロボットSF
SFらしいSFは、やはりロボットSFではないでしょうか?
小説ではありませんが、ガンダムのように精巧なロボットを作り出す創作文化は日本の宝なのかなぁと思います。
ロボットSFには次世代のエネルギーに必要な物理学の研究、ロボット本体の設定には機械工学が欠かせないジャンルです。
舞台設定別のSF小説のジャンル
舞台設定別には、空間と時間別に分類れたSF小説のジャンル分けです。
スペースオペラ
宇宙空間を舞台にしたSF小説は、宇宙SFと呼ばれています。
中でも、住んでいる惑星を超えた距離の舞台設定がされた作品がスペースオペラです。
主人公にルーツのある惑星の他にも、生き物が暮らす星があり、宇宙全体の文明が細かく設定されています。
近未来もの、遠未来もの
未来の世界を描いたSF小説は、未来の年代で2つに分けられています。
数十年先の「想像しやすい未来」は近未来もの、数百年で「現代とは価値観が異なる未来」を描いた作品が遠未来ものとされています。
ロストフューチャー、スチームパンク
遠い未来から見た現代、現代から見た過去を想像する作品もSF小説のジャンルの1つとされています。
ロストフューチャーは、「失われた文明があった」と仮定して、当時の社会を細かく描く作品です。
スチームパンクは、蒸気機関(スチーム)が普及した19世紀前後のヨーロッパの風景を舞台にした作品です。
レトロ、ノスタルジックといった表現が似合うSF小説です。
ディストピアSF
荒廃した世界を描く作品は、ディストピアSFと呼ばれています。
核戦争、地球温暖化、行き過ぎた機械化で現代の文明は失われ、絶望の中に少しの希望を夢見ながら生きる登場人物の葛藤が描かれています。
学園SF
学園を舞台にしたSF小説は、大きく学園SFとしてまとめられています。
舞台設定が学園というだけで、取り扱われる内容は様々のようです。
SFの世界であっても、生き生きとした学生の暮らしが描かれている作品は青春小説に分類されることもあります。