アルスラーン戦記第一部のまとめ
初版から40年に迫る『アルスラーン戦記』(アルスラーンせんき)は、『銀河英雄伝説』でも有名な田中芳樹さんが描く長編ファンタジー小説です。
全16巻の作品は、ストーリーで第一部と第二部に分けられています。
今回は、『アルスラーン戦記 第一部』のあらすじから登場人物、物語の出来事までをまとめて紹介させていただきます。
※こちらのページでは、紹介作品の【ネタバレ】が含まれております。小説のストーリーを楽しみたい方は、作品の紹介記事を先にご購読いただきたくお願いいたします
- アルスラーン戦記第一部のまとめ
物語の構成
田中芳樹さんの名作ファンタジー小説『アルスラーン戦記』は、文庫版第1〜7巻の第一部、第8〜16巻の第二部で構成されています。
第一部と第二部の構成
第一部では、主人公アルスラーンのパルス国がルシタニア国による首都エクバターナの占領を受け、侵略者からの国の奪還を描く物語です。
第二部は、第19代パルス国王になったアルスラーンに率率いるパルスと恐怖の蛇王ザッハークとの戦いを描いた物語です。
出版社とレーベル
1986年8月から2017年12月にかけて出版された『アルスラーン戦記』は、KADOKAWAの角川文庫、光文社のカッパ・ノベルスから出版され、出版時期によって同じ内容でも違う呼び方をされています。
「オリジナル版」と呼ばれる本は、1986年8月から2017年12月にかけて角川文庫と光文社のカッパ・ノベルスから出版された全16巻の文庫版です。
「新装版」と呼ばれている本は、光文社のカッパ・ノベルスから文庫2巻を1巻として2003年2月から2004年2月にかけて出版された全10巻の新書版です。
「文庫版」と呼ばれている本は、2012年4月から2020年8月にかけて光文社文庫から全16巻が出版された文庫本です。
2024年の時点で本屋さんやAmazonで販売されているのは、「新装版」と「文庫版」がほとんどで「オリジナル版」は古本屋さんでも見かける機会はほとんどない貴重な本です。
あらすじとストーリーの期間
現在の中東にあたる王国パルスの王太子アルスラーンが立つのは、王宮から遥か遠くの草原。
今まさに、勇敢で強力なパルス軍、国をひとつ超えた北西から侵攻したルシタニア軍は、傾いた秋の陽射しが照らすアトロパテネの平原で雌雄を決しようとしていた。
『アルスラーン戦記 第一部』のあらすじ
『アルスラーン戦記 第一部』は、侵略者ルシタニアからパルスを取り戻すため、信頼する仲間とともに立ち上がる若い王太子アルスラーンの成長の道のりを描く物語。
囚われの身になり、再起を図るパルス国王アンドラゴラス。
銀仮面で素顔を隠し、自らが正統な王位継承者を名乗る王子ヒルメス。
パルス国内の繁栄の影になる、奴隷制度の風習。
野望を抱く周辺国の覇者……。
立ちはだかる壁と、1人1人が自分の信念を抱く個性的な登場人物の活躍から目が離せないストーリーです。
『アルスラーン戦記 第一部』のストーリーの期間
第一部は、パルス歴320年10月からパルス歴321年9月までの約1年間の期間を描いたストーリーです。
作品の中で日付が書かれている出来事、登場人物の台詞と前後のストーリーからわかる出来事を時系列で並べてみました。
・パルス歴320年10月 第一次アトロパテネ会戦
・パルス歴320年冬 シンドゥラ国の侵攻
・パルス歴321年1月 シンドゥラ国グラジャラート城塞をアルスラーン勢が攻略
・パルス歴321年2月 シンドゥラ王位継承戦役終結
・パルス歴321年3月 ルシタニアの内紛
・パルス歴321年春 パルス軍の蜂起
・パルス歴321年5月 パルス軍の出陣、トゥラーンの侵攻
・パルス歴321年6月 アルスラーン追放
・パルス歴321年8月 サハルード平原の会戦、第二次アトロパテネ会戦
・パルス暦321年8月25日 二王墜死の塔 (ターヤミーナイリ) 事件
・パルス歴321年9月 アルスラーン国王に即位
1年間の間で、国内の端から端までを行き来し、海外遠征をしているアルスラーン一行はかなりのハードスケジュールだったのでは?とファンの間でも語り継がれています。
主な登場人物
群像劇ともいわれる『アルスラーン戦記』には、主要人物の他にも読者を惹きつける登場人物が数多く描かれています。
アルスラーン
物語の主人公でパルス王太子。
『アルスラーン戦記(1)王都炎上』の開始時点で14歳、シンドゥラ王位継承戦役の遠征期間で15歳の誕生日を迎える。
内面が現れている穏やかな顔立ちで、夜空のような深い色の瞳を持つ。
ダリューンやナルサスらと過ごす旅の中で、使命とも夢ともいえる2つの目標「侵略された祖国の解放」「奴隷制度を含む旧体制の改革」のために困難が立ちはだかる道を歩む。
彼と出会った1人1人が、後の物語の歴史に名を残し、過ごしている日々が後世に語り継がれることになる……。
ダリューン
叔父でパルス王国大将軍ヴァフリーズの遺言で、アルスラーンに仕えることになった27歳の騎士。
背の高い勇まし顔立ちを引き立てる黒の甲冑に裏地を赤く染め上げたマントを羽織り、戦場での活躍から「戦士の中の戦士」の異名を持つ。
パルス王族としてではなく、1人の指導者としてのアルスラーンに忠義を誓い彼の目指す世界のために持てる能力の全てを振るうことになる。
ナルサス
貴公子のような整った顔に、いたずらっぽくも鋭い目線を覗かせる26歳の青年。
物語開始の5年前にパルス王宮を追われてから、従者のエラムとともにパルス領北東のダイラムで静かに過ごしていた。
第一次アトロパテネ会戦を逃れたアルスラーンとダリューンを匿い、アルスラーンの描く理想の中に、国の未来を見つけ、かつて異端児とも呼ばれた知恵を振るう。
アルスラーンの夢を信じる理想家の1人でもあり、宮廷画家を夢見る芸術家でもある。
エラム
ナルサスのことを親とも年の離れた兄とも慕う、14歳の少年。
ナルサスとともにアルスラーンの旅に同行することになり、解放奴隷の子という身分差から王族のアルスラーンには一定の心の距離を保ち続けていた。
ファランギース
長い黒髪をなびかせ、神秘的な緑色の瞳ですれ違う人を魅了する女性神官。
パルスで信仰されているミスラ神に導かれ、アルスラーン一行で武術の腕を振るうことになる。
アルスラーンを探す旅で出会った流浪の楽士ギーヴとともにパルスでも屈指の弓矢の腕、戦場に舞う姿は後の世界で歌い継がれることに……。
ギーヴ
流浪の楽士を自称し、波乱に満ちた刺激を求めその日暮らしの日々を過ごしていた青年。
気持ちの現れやすい端正な顔立ちは、不快な相手に対する感情を包むことなく伝えてしまうことも。
ルシタニアによって攻め落とされたエクバターナを逃れた際に、女性神官ファランギースに同行する形で、アルスラーン一行の旅路に加わる。
王族や貴族に抱いていた嫌悪感が、若い指導者アルスラーンの行動で打ち砕かれることに自分でも驚きを隠せないでいた。
物語の舞台の国家と地域
『アルスラーン戦記』の舞台は、中東一帯とされ、主人公アルスラーンの活躍するパルスは現在のイランからイラクにあたる中世のペルシアといわれています。
パルス西側は、西アジアから南ヨーロッパの文化が描かれるマルヤムとルシタニア、北アフリカをイメージする地理が特徴のミスルが第一部に登場します。
パルス東側は、熱帯地域のシンドゥラはインドのような料理や服装が描かれ、南アジア一帯がモデルとされています。
シンドゥラより北側は、中央アジアの山岳地帯や草原地帯のような気候や風習のトゥラーンとチュルクの国が登場します。
パルス
大陸公路が東西に走り、貿易と文化の中継地点にあたる国家。
大陸公路と南部の港町ギランから首都エクバターナ集まる富、四季があり肥沃な土壌に育まれた豊かさを誇る。
地理的な要所と豊かな経済を求め、東西の周辺国からの侵略も絶えず、防衛のため強大な軍事力を持つ強国でもある。
第一部では、英雄王カイ・ホスローから数えて第18代の国王アンドラゴラス三世が、武勇と諸侯の統率力をもって治めていたが、北西の隣国マルヤムを制圧したルシタニアの侵略を受けることになる。
マルヤム
パルスの北西に位置し、パルスとはダルバンド内海の貿易が盛んな友好国でもある。
第一部の開始前にルシタニアによる侵攻を受け、王族は離散、国民は同じ信仰のイアルダボート教の過激派による迫害が続いていた。
ルシタニア
パルス北西のマルヤムを越えた先に位置する国家。
一神教イアルダボート教の信仰に厚い国民がほとんどを占め、異教徒への迫害や征服地での略奪が正義という過激派による神の意志独自解釈が信じられている。
国の産業の貧しさから、国王イノケンティス七世のもと豊かな土地を求めマルヤムを占領し、パルスへと侵略の手を伸ばす。
トゥラーン
パルスの北東の草原に位置する遊牧民族の国家。
建築物を築き大都市を持つ風習はなく、草原に立つ王族の天幕(テント)を中心に王都サマンガーンがある。
産業は発展しておらず、海外からの略奪で得られた資産が彼らの主要産業とされている。
チュルク
パルスの東方、山岳地帯に点在する都市からなる王国。
北にトゥラーン、南にシンドゥラ、西にパルスと軍事強国に囲まれながら、天然の要害都市に守られ、鉱業を中心とした産業で周辺国と貿易を発展させている。
シンドゥラ
パルスの南東の熱帯地域に位置する王国。
熱帯地域らしい過酷な夏の季節、乾燥しほどよく過ごしやすい冬の気候で鮮やかな熱帯植物が繁る草原には象が過ごす。
大陸公路の貿易相手ではあっても、文化的にも政治的にもパルスと対立を続ける歴史を持つ。
第一部での出来事
『アルスラーン戦記 第一部』は、1年間のストーリーの中に物語の中の歴史で語り継がれる出来事が起こります。
冒頭の第一次アトロパテネ会戦から、パルスがパルス人の手に戻るまでの出来事を時系列でまとめてみました。
第一次アトロパテネ会戦(パルス歴320年10月)〜王都炎上、王子二人
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パルスの隣国マルヤムを占領したルシタニア軍は、12万の兵力でパルス領内へ侵攻した。
パルス国王アンドラゴラス三世のもと、大将軍ヴァフリーズら万騎長とパルス軍22万3千はアトロパテネでルシタニア軍を迎え撃つために展開した。
第一次アトロパテネ会戦と呼ばれる戦いは、季節外れの霧、用意周到なルシタニア側の罠、国王の信頼も厚い万騎長の裏切りによって、ルシタニア軍の勝利に終わる。
会戦に勝利したルシタニア軍はパルス領内を南下、王都エクバターナを激しい攻城戦で制圧し一般人への迫害と略奪による支配が1年にわたり続くことに……。
シンドゥラ王位継承戦役(パルス歴320年冬〜321年2月)〜落日悲歌
信頼を問われる王子『アルスラーン戦記3 落日悲歌』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
国王のカリカーラ二世が倒れ意識不明になったことで、血筋の上で王太子を主張するガーデーヴィ王子と、民衆と軍の支持を集めるラジェンドラ王子との間で起こった争い。
ラジェンドラ王子側がパルスのペシャワール城に侵攻し、アルスラーンの軍師ナルサスの策略にかかりシンドゥラ国内での本格的な武力衝突に発展した。
アルスラーン率いるパルス軍が参戦したことで優位になったラジェンドラ王子側が勝利をおさめ、意識が戻ったカリカーラ二世の提案で行われた神前決闘で勝利したラジェンドラがシンドゥラ国王に即位した。
ルシタニアの内紛(パルス歴321年3月)とパルス軍の蜂起(パルス歴321年春)〜汗血公路
志しを抱く仲間とともに進む『 アルスラーン戦記4 汗血公路』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
パルスの王都エクバターナを支配するルシタニア軍の中でも、問題が起こっていた。
政治に関心のない国王イノケンティス七世の指導力不足もあり、軍と政治家の支持に影響力のある王弟ギスカールと国教イアルダボート教の大司祭ボダンの対立は、正規軍と宗教騎士団の武力衝突に発展する。
兵力の劣るボタンは、エクバターナから隣国で未だルシタニアの支配下にあるマルヤムへ引き上げることになった。
一方、シンドゥラ王位継承戦役を終えペシャワール城塞に戻ったアルスラーンは、ルシタニア軍から領土を奪還するため集結するようパルス国内の勢力に檄文(げきぶん)を発行した。
態度を決めかねていた諸侯、敗戦後に潜伏中だった軍人らがペシャワール城塞に集まり、大陸公路を西へ進みはじめた。
トゥラーンの侵攻(パルス歴321年5月〜6月)とアルスラーン追放(パルス歴321年6月)〜征馬孤影
出会いとすれ違いで変わる未来とは?『 アルスラーン戦記5 征馬狐影』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
王都エクバターナ奪還のため大陸公路を西へ進んでいたアルスラーン率いるパルス軍に、ペシャワール城塞から至急の連絡が届いたのは珍しく暑さの厳しい初夏のことだった。
パルスの北東の騎馬民族の国トゥラーンが、不安定な情勢のパルス領内で略奪を行うために国境を越えた知らせだった。
エクバターナへ進んでいたパルス軍は、ペシャワール城塞の守備隊と連携しトゥラーンの軍勢を退けることに成功した。
エクバターナ奪還の仕切り直しを始めていたペシャワール城塞に、思わぬ来訪者が訪れる。
それは、王妃タハミーネを伴う第18代パルス国王アンドラゴラス三世だった。
王妃とともに自らの武勇でルシタニアの地下牢を脱獄し、国王の地位に復権したアンドラゴラスは、許可なく軍隊を召集したアルスラーンに事実上の追放を告げる。
パルス南方の掌握と5万人の軍隊を集めるよう告げられ、指揮権を失ったアルスラーンはただ1人、ペシャワール城塞を後にすることになる。
港町ギランの獲得(パルス歴321年6月〜7月)とサハルード平原の会戦(パルス歴321年8月)〜風塵乱舞
思わぬ変化と新天地を求めて『 アルスラーン戦記6 風塵乱舞』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
復権したアンドラゴラス三世によって事実上の追放を告げられたアルスラーンは、命令の通りパルス南方の港町ギランへ到着し有力者の掌握を計画していた。
ペシャワール城塞を後にしてから、忠臣ダリューンと軍師ナルサスを始めとした旅の当初の仲間にシンドゥラで加わった護衛のジャスワントとともに、海賊討伐と領主の不正の摘発で民衆の信頼を得て、貿易商グラードを中心としたギランの有力者の協力を取付けていた。
アルスラーンがギランを掌握した1カ月後、アンドラゴラス率いるパルス軍10万、ギスカール率いるルシタニア軍は21万は、大陸公路上のサハルード平原で対峙していた。
数的優位に立つルシタニア軍では将兵の士気が保てず、優秀な指揮官に率いられたパルス軍を前に後退を余儀なくされる。
サハルード平原の会戦の情勢をうかがっていたヒルメスは、ルシタニア軍の後退を知り、指揮下の3万人の軍勢とともに王都エクバターナを制圧した。
第二次アトロパテネ会戦(パルス歴321年8月)〜王都奪還
アルスラーン一行の旅の節目『 アルスラーン戦記7 王都奪還』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
サハルード平原から後退したルシタニア軍は、逃亡兵も相次いだことで10万にまで兵力を失っていた。
港町ギランの豊富な物資に支えられたアルスラーンのパルス軍2万5千は、ルシタニア軍をパルス領内から追い出すため作戦を開始する。
パルス(アルスラーン)軍2万5千、ルシタニア(ギスカール)軍10万はかつてパルス軍が敗退した地で第二次アトロパテネ会戦を繰り広げる。
先の会戦で利用した霧を生む魔法も、将兵の士気も劣るルシタニア軍は数的優位を活かせず敗れ去った。
王都エクバターナでは、ルシタニア軍を追い払い街を手中に収めたヒルメス。
サハルード平原の会戦に勝利した、アンドラゴラス率いる2つのパルス軍同士の衝突が始まっていた。
パルス王宮で対峙するヒルメスとアンドラゴラス、英雄王カイ・ホスローの残した宝剣ルクナバードを携えたアルスラーン。
3人の王族が座る1つの王座の行方は?
アルスラーン戦記の評価
田中芳樹さんの名作ファンタジー小説『アルスラーン戦記』は、1990年代の「中村地里版」と2013〜2022年にかけての「荒川弘版」での2度の漫画化。
さらに、2015年4月からのアニメ化やミュージカルで実写化されるなど、初版から年月が経っても新しいファンを生み出す魅力があります。
色褪せないストーリーと登場人物
再読してまず、すぐに気がつくのは、物語も文章も少しも古びてはいないということだ。とても四半世紀前に書かれたとは思えない。というか、採れたての魚くらい活きが良い。
中略)
主人公たちはどんな窮地に立たされてもユーモアを失わない。ニヤリと笑うことで状況を相対化し、決して悲壮ぶることがない。
中略)
登場人物の一人に「権力者の世辞など信じるのは豚並みの低脳だ」とシビレる台詞をサラリと述懐させる抵抗者の視線。かれらは何もたんなる権力者―即ち「猿山の大将」のために戦っているわけではないのだ。
柳広司
『アルスラーン戦記2 王子二人』文庫解説
それぞれにある正義とは?『アルスラーン戦記2 王子二人』田中芳樹 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
柳広司さんの文庫解説では、登場人物の個性とどの時代でも変わらない「戦う理由」が作品の基本になっていると書かれていました。
スピード感のある展開
アルスラーンの物語は、どの巻の中でも、驚くほどの速度で回転してゆきます。次々と多彩な人物が登場しては、ユーモラスに、華やかに、時には激しく互いに干渉して息を呑む場面を重ね、また新たな人間関係と戦況を生み出し続けるのです。物語の絵模様は、混沌となりかける幾らか手前で丁寧に制御されて、あくまでも華麗に、それでいて高速を保ったまま織られてゆきます。不要な飾りによる水増し……などという発想は、織り手の思考の中に最初から存在しないのでしょう。
結城充考
『アルスラーン戦記5 征馬孤影』文庫解説
出会いとすれ違いで変わる未来とは?『 アルスラーン戦記5 征馬狐影』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
特に第一部は、1〜7巻に1年間の物語が込められており、1つ1つの出来事、登場人物の関係が細やかに描かれています。
様々な正義観と価値観
田中芳樹先生の小説を読んで、僕が『面白い』と思うと同時に『素晴らしい』と思う点として、価値観が決して、統一されていないところを、是非あげさせてもらいたい。いわゆる『敵側の価値観』もしっかり描かれているのだ。そしてまた、『主人公側の価値観』を、必ずしも絶対的なものとしては描かない―あくまでもそれは一つの意見であって、彼ら決して正しいわけではない。違う価値観に触れる楽しさや、己の価値観を疑う楽しさを教えてくれる。
西尾維新
『アルスラーン戦記7 王都奪還』文庫解説
志しを抱く仲間とともに進む『 アルスラーン戦記4 汗血公路』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
そして、時代を経ても愛される理由の1つに「様々な正義観と価値観」がある点を、作家の西尾維新さんが文庫解説に書かれていました。
いわゆる「正義と悪」の物語ではなく、「それぞれの正義」の対立や交錯が、ファンタジーの世界観をリアルに感じさせてくれる理由の1つになっているはずです。