本当に本が読みたくなる読書のブログ

読書好きのための本当に読みたい本が見つかる書評ブログです。小説、実用書、ビジネス書ジャンルを問わず紹介。読書にまつわる豆知識のお話、文章の書き方のお話もありますよ。

悩みんで行き詰まったときに助けてくれる本『崖っぷちのあなたを救ってくれるお坊さんの話』

『崖っぷちのあなたを救ってくれるお坊さんの話』

崖っぷちのあなたを救ってくれるお坊さんの話 (知的生きかた文庫)


著者 篠原鋭一
出版社 株式会社三笠書房
分類 実用書、ノンフィクション、考え方の本
出版日 2023/8/5
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい

変化が目まぐるしい春なので、辛い出来事と悩みごとの手助けをしてくれる本を紹介させていただきます。

命と向き合うお坊さんが書いた本の構成


『崖っぷちのあなたを救ってくれるお坊さんの話』は、辛い出来事で生きることをあきらめようと考える方と向き合うお坊さんが実際のエピソードを元に書いた悩みごとの解決に心強い本です。

命を絶とうとする人と向き合う住職 篠原鋭一さん

著者の篠原鋭一さんは、千葉県成田市にある曹洞宗長寿院住職をされているお坊さんです。
10代の方から高齢の方まで、悩みで押しつぶされ生きることをあきらめようと思う方の相談を受ける「NPO法人 自殺防止ネットワーク風特定非営利活動法人 自殺防止ネットワーク 風
の代表を務められ、ご自身も24時間いつでも自殺志願者からの電話相談を受ける活動を続けられています。


読みやすいエピソード集の構成

・はじめに p3〜p7
・第1章 すべてのものごとは移り変わる p16〜p71
・第2章 「今日一日」を精いっぱい生きる p74〜p125
・第3章 あなたは決してひとりじゃない p128〜p185
・第4章 「原因探し」はもうやめましょう p188〜p236

『崖っぷちのあなたを救ってくれるお坊さんの話』は、辛いこと、苦しいことと向き合う考え方の基本の第1章から、篠原鋭一さんが相談を受け解決につながったエピソード集に、解決のポイントを加えた構成です。
1つのエピソードが6〜8ページですので、スキマ時間に読み進めることができますよ。


人生は苦しみがあるのが当たり前

たとえば、仏教では「人生には八つの苦しみがある」と説いています。
生老病死」の四つに、「愛別離苦」―愛する人と別れなければならない苦しみ、「怨憎会苦」―イヤな相手と会わなければならない苦しみ、「求不得苦」―欲しいものが得られない苦しみ、「五蘊盛苦」―肉体と精神が生み出す苦しみの四つを加えた、いわゆる四苦八苦です。
こうした苦は、すべての人が背負う苦であり、老若男女を問うこともありません。
はじめに p4


お坊さん作家さんの本には、必ずといっていいほど書かれている考え方が「四苦八苦」です。
仏教の考え方の基本で、辛いこと、苦しいことがあるのは当たり前で決して無くすことはできないものとされています。
ただ、無くすことはできなくても「減らす」ことはできると篠原鋭一さんの本には書かれています。
その方法は、現実を受け止めて自分の考え方を見直すこと。
ただ、それができないから苦しいのが私たちですよね。
『崖っぷちのあなたを救ってくれるお坊さんの話』では、実際に篠原鋭一さんが引き受けた相談を例に解決方法も紹介されています。




「今が辛い」と感じる理由と受け止め方


悩みごとで「今が辛い」と感じることには、理由もあって、受け止める方法もあります。

原因探しと答え合わせは先延ばしに

「なぜ、こんなことになってしまったのか?」
どんなに過去を振り返っても、そのほんとうの原因はわかりません。
「原因探し」はそろそろやめにしましょう。
そもそも、目の前にある苦悩は未来永劫続くものではありません。
苦難を乗り越え、しばらく経ったころにはこう思うでしょう。
「あののき、あんなことがあったなぁ」と。
まるで自分の人生の隠し味のような思い出として。
そういう意味では、苦しみは、必ずしも人生を不幸にする要因ではありません。
かえって人生を豊かにすることもあるのです。
第4章 「原因探し」はもうやめましょう p188

不幸なことが起こってしまった時、「なぜ、こんなことになったのだろう?」と考えてしまいがちですよね。
私は、いつもそうで切り替えに数日かかることもありますよ。
若い頃は、原因探しと答え合わせにもっと時間をかけてしまい、しばらくネガティブな時間を過ごすこともありました。
原因は見つかるのでしょうか?
自分が原因で起きたことは、見つけやすいかもしれません。
答え合わせは、納得できる答えが見つかるのでしょうか?
それとも、今が辛いこと、苦しいことは不幸なだけなのでしょうか?
仏教には、「全てのものごとは変化する」という考え方があります。
例えば、努力しても目指していた学校に合格できなかったとしたら、その時は不幸に思うはずです。
ただ、進学した別の学校で自分に合う分野が見つかったり、素敵な恋人と出会えたら、それは幸福なはず。
前の不幸が上書きされることになります。
「全てのものごとは変化する」「不幸な時間ばかり続くわけではない」と思い、答え合わせを先延ばしにするのも辛いことの受け止め方のひとつだと思えましたよ。


苦悩の連鎖の断ち切り方

人が生きるうえで、過去の不幸も幸福も人生の一部です。幸福だけを選ぶことができないように、不幸だけを選ぶ事もできません。プラスとマイナスがいずれも、わが人生を彩る大切な体験です。そして不幸が何かがわかるから、幸福が何かもより知ることができるのです。
つまり、不幸の中にいるということは、決して、消えなきゃいけない、死ななきゃいけないということではありません。むしろ、生きて幸福を知る為の準備期間だと考えるべきだということです。私たちは、その真実に早く気づくべきです。
第4章 「原因探し」はもうやめましょ p192

思いがけないトラブルや大きな失敗、変化が激しい出来事が起こると不幸に感じ、ネガティブな気持ちで落ち着かずさらに新しい変化に悩まされる……。
他のお坊さん作家さんの本から、「悩みと不安のループ」と呼ばせていただいた私の実体験でもあります。
私の場合、解決方法は「良いときの習慣を繰り返す」ことにしています。
篠原鋭一さんの本では、次々と不幸に感じる出来事が起こる「苦悩の連載」と書かれていましたよ。
解決方法は、不幸な今は幸福の準備期間として受け止めるというもの。
もちろん、違法な長時間労働やDVなど命に危機がある場合は別ですが、不幸がある分、幸せも感じやすいと受け止めるのもひとつの方法ですよね。


今の苦労は修行

私は、いろいろな境遇の中で生きている人たちにとって、修行の場はそれぞれの人がいまいる場所で行うものだと思っています。
たとえば、「会社のノルマがきつい」と訴えてきた前述の成年の場合、その会社が違法なブラック企業だったのならさっさと転職すべきですが、そうでないのなら、まずノルマを達成するにはどうすればいいかを考えるべきでしょう。
まず自分が選んだ場所こそ、修行道場だと思い、問題を解決するための努力をすべきだということです。
いまいるところで、生きていく力をつけていくことこそ修行です。
第4章 「原因探し」はもうやめましょ p195

不幸に感じることを受け止める心構えで、篠原鋭一さんが書かれているのは「今いる場所が修行の場所」と考えること。
本の中では、会社の仕事と自分の希望が合わない方への相談に応える形で書かれていました。
職場、学校、中には家庭、そこにいるのは「自分が選んだ」からでもある。
何かしらの役割があって居場所を得ているなら、「目の前のことに集中する」ことをまず始めるのが苦労ごとの解決の第一歩になるのかもしれませんね。


辛いことも長続きしない

何が起こるかわからない昨今です。
でも、決して人生をあきらめてはいけまさん。
幸せなことは長続きしませんが、不幸なことも決して長続きしないのです。
第1章 すべてのものごとは移り変わる p38


「今が辛い」と感じる理由でも取り上げさせていただいた、「今が辛いこと、苦しいこと」と感じている時間。
楽しい時間に比べてネガティブな時間は、とても長く感じますよね。
辛いことが学校でのことなら、決まった年数で卒業できますし、職場なら勤務先や部署異動もあり、転職をしようと思えば別の企業に移ることもできます。
『崖っぷちのあなたを救ってくれるお坊さんの話』では、それぞれの危機迫る相談に繰り返し書かれていることがあります。

○世の中も周りも変化するもの
○不幸なことも長続きしないの
○生きることをあきらめてはいけないの

これから何が起こるかわからない人生ですので、忘れず書き留めておきます。




人生も世の中も変化するもの


それでは、命を絶とうとする人と向き合うお坊さんの『崖っぷちのあなたを救ってくれるお坊さんの話』の紹介を篠原鋭一さんの言葉で締めくくらせていただきます。
この思いは、30年以上前に42歳の激務に追われていた篠原鋭一さんがくも膜下出血の治療をされたご経験から得られたものと書かれています。
当時の治療の生存率は1/3で、病院を退院してからも3年以上の後遺症に苦しんだそうです。

全ては移ろい、変化します。
いま、あなたは耐えられないほど辛いと思っているでしょう。
私も死にたいくらい辛いと思ったことがありました。
でも見てごらんなさい。
こうして変化した私がいるじゃないですか。
あなたも必ず変われるんですよ。
第1章 すべてのものごとは移り変わる p51

ご自身も辛い思いをされ、今まさに命を絶とうとする人と向き合う活動をされているお坊さんが書かれた本。
不幸を感じやすい方、「悩みと不安のループ」に陥りやすい方、そして先が見えずあきらめようとされている方、ぜひ本を開いてみてはいかがでしょうか?


にほんブログ村 本ブログへ