『死んだ山田と教室』
著者 金子玲介
出版社 株式会社講談社
分類 青春小説
出版日 2024/5/15
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
今月の本の紹介は、2025年本屋大賞にもノミネートした金子玲介さんの『死んだ山田と教室』です。
展開が気になるタイトルと、菅生新樹さんのカバー写真が目を引く1冊。
本屋大賞の予想では触れていなかった、ストーリーと登場人物を含めて紹介させていただきますね。
第65回メフィスト賞受賞後に2025年本屋大賞にもノミネートされたことで、映画化も噂されおり、2025年10月には下北沢駅前劇場で舞台化されることが知られています。
素適な読書ブログが集まるグループです↑
『死んだ山田と教室』の登場人物
物語の舞台、啓栄大学附属穂木高等学校(穂木高)2年E組の24人ともう1人のクラスメイト。
中でもストーリーに大きく関わる5人の高校生、距離を置いて見つめる担任教師の6人を紹介させていただきます。
山田
金髪でモノマネが上手いムードメーカーで、2年E組の中心的な存在。
気配りも欠かさずクラスメイトをよく観察している一方、ラグビー部を辞めて校外活動でバンドをはじめるなど新しいものごと好きでもある。
買い物帰りに交通事故に巻き込まれ、2学期が始まる前に命を落とす。
そして……。
泉
ゴシップ記事が主要コンテンツの、「週間穂木」を発行することに青春を注ぐ新聞部部長。
茶色に染めたゆるふわのくせっ毛が印象的で、2年E組だけではなく穂木高全域にスキャンダルのアンテナを張り巡らせている。
倉持
180cmの長身で落ち着いた印象の新聞部副部長。
強引な突撃取材や、憶測だけのフェイクニュースで暴走しがちな泉のブレーキ役でもある。
「週間穂木」で連載中の小説を担当している。
小野寺
合唱部で高音パートをこなしていることもあり、男子校の中では高めの話し声が特徴的。
一部の穂木高生に人気の深夜アニメ『おふさいど!』のファンであることを山田に知られている。
突然スピーカーから流れた死んだ山田の声に驚く中で、担任の花浦の次に山田に話しかけた生徒でもある。
和久津
中学校から山田の同級生で、論理的な話し方で落ち着いた雰囲気を持つ。
弁護士志望でもあり、成績は山田とともに穂木高二年の中でも上位に入る。
知的な雰囲気がマッチする囲碁将棋部で活動している。
花浦
2年E組の担任で32歳の国語教師。
裏表のない現実的でドライな性格を貫く一方で、山田を失い落ち着かない生徒のためにホームルームを交換する気配りもみせる。
口癖の「要はあれだ」は、死んだ山田のモノマネレパートリーの定番にされている。
夏休みの終わりと青春の始まり
関東地方で夏休みも終わる8月29日、平均的な高校生にとって、ひと夏の青春が終わる以上の喪失感が穂木高2年E組を包み込む。
クラスのムードメーカーで人気者の山田は、信号無視の車にはねられ命を失った。
二学期が始まる9月1日、2年E組担任の花浦は冷淡に受け取られるかもしれない事実を告げることで、淡い期待や沈み続ける高校生と向き合わなければならない、はずだった。
確かに死亡したことが公的にも、私的にも明らかな山田は、2年E組のスピーカーに乗り移り、変わらない陽気な会話を始めていた。
共に過ごす時間
物語の舞台は、地域で有数の進学校 啓栄大学附属穂木高等学校(穂木高)。
学生の自立が校訓の男子校では、勉強や部活に熱心な生徒、マイペースに青春を楽しむ生徒、控えめな生徒、そして大多数のその中間的な生徒がそれぞれの時間を過ごしている。
中でも、クラスの人気者で青春に欠かせないムードメーカーは「死んだ山田」は、スピーカーから流れる声だけの存在になっても、2年E組のクラスメイトとともに青春の時間を過ごすことになる。
「二年E組のみんなとしゃべりたい」
山田の言葉に秘められた思いは……。
タイトルからは想像できない新感覚青春小説
悲劇の謎を追うミステリ小説?
それとも、死んだ後の転生先で新しい人生を送る転生モノ?
それとも、死と向き合う哲学的な物語?
タイトルだけで想像が膨らむ『死んだ山田と教室』は、死んだ後も高校生を続ける山田が主人公の青春小説でした。
物語の序盤から、驚きの展開で進むストーリーが注目を集め、2025年本屋大賞にノミネートされた話題作です。
本屋大賞受賞とはなりませんでしたが、読み進めやすい表現は、中学生から高校生、そして大人まで楽しめる青春小説ですよ。
映画化が噂されているように、私も菅生新樹さん主演で映画化してほしいと思っています。
男子高校生が好きな話題が散りばめられていることもあって……短編ドラマで放送されると、その年の流行を掴みそうな気がしてなりません。