アルスラーン戦記11 魔軍襲来
著者 田中芳樹
出版社 株式会社光文社(初版 角川書店)
分類 ファンタジー小説、ヒロイック・ファンタジー
出版日 2016/8/20(初版 2005/9/25)
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
異世界を創り出す小説家 田中芳樹、人気作品とともに紹介 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
日本の名作ファンタジー小説「アルスラーン戦記」シリーズから、第二部の4作目『アルスラーン戦記11 魔軍襲来』を紹介させていただきます。
アルスラーン戦記11 魔軍襲来の登場人物
『アルスラーン戦記11 魔軍襲来』では、第二部になってから活躍が描かれるようになったパルスのトゥース、イスファーン、ルーシャン。
パルス側とは別の目線で物語に深く関わりそうなミスルのフィトナを紹介します。
トゥース
口数が少なく、冷静な仕事ぶりで同僚からの信頼の厚い武人。
その人柄からは想像できなかった偉業をとげていた。
それは、10代の妻3人と同時に結婚したことだった。
戦死した同僚との約束のため、彼の娘パトナ、クーラ、ユーリンの三姉妹との結婚の経緯は、「トゥース卿の花嫁選び」と語り継がれることになる。
寡黙な父親と賑やかな娘のような夫婦は、パルス国軍大将軍格のクバードに率いられデマヴァント山の捜索に向かっていた。
イスファーン
引き締まった野性的な逞しさを持ち、20代でパルス軍万騎長と千騎長の間の地位を与えられた武将。
第一次アトロパテネ会戦でルシタニアに囚われ、暴行の末命を落としたかつての万騎長シャプールの母違いの弟。
貴族階級の父親の正妻の仕打ちで、母とともに冬山に捨てられた際に狼たちに助けられた逸話から「狼に育てられた者」と呼ばれる。
保護した二匹の子狼、火星のバナーラムと土星のカイヴアーンへ向ける眼差しは、どこか幼い兄弟を慕う純粋さを持つ。
クバード、トゥースとともに兄弟を伴いデマヴァント山の捜索に向かう。
ルーシャン
アルスラーンの政権で宰相を勤める国家のナンバー2。
分け隔てない公平な人柄と内省の実績を買われ、パルスの軍事と外交以外の全ての業務を担う。
国事よりも気がかりな、アルスラーン王の結婚問題に頭を悩ませる日々を過ごしていた。
フィトナ
ミスルと国境を接する南方のナバタイから、国王の愛人として王宮に勤めることが決まった孔雀姫(ターヴース)のフィトナ。
輝く黒髪と同じ色の瞳を持つ彫刻のような整った顔立ちで、歌うように笑う幼さと妖麗さが同居した女性。
野心と器量を持った相手を求め、ミスルの王都アクミームに到着に到着した彼女には、ミスラ神がデザインされた銀の腕輪に導かれるように運命の交差が行き交うような出会いが起こる。
物語の地理と冒頭
1年で最も暑い「盛夏四旬節」を迎えるパルス、平野に位置するエクバターナは日が落ちても下がらない気候が人々を長い夜へと誘う。
パルスの西に位置し国内のほとんどを砂漠に覆われたミスルでは、陽射しが厳しい昼間は建物の中で過ごし、日が落ちてから活動を始める風習が続いていた。
ダルバンド内海でパルスとミスルと隔てられた大陸公路北西のマルヤムでは、限られた暖かさに人の行き来が盛んになるが訪れていた。
パルス歴325年、夏を迎える大陸公路諸国
パルス各地で、人ならざる者が暗躍するパルス歴325年の夏至の季節、大陸公路諸国では人同士の暗躍が始まっていた。
大陸公路北西のマルヤムでは、第二次アトロパテネ会戦でパルスを逃れたルシタニア王弟ギスカールによる統治が進められていた。
アルスラーンとパルス王座を巡り争ったヒルメスが滞在するミスルには、南方のナバタイから国王の愛人として選ばれた孔雀姫(ターヴース)フィトナが、密かな思いを胸に王都アクミームに到着する。
同じ時間を同時進行で進む世界
中世の中東をモデルにしたアルスラーン戦記の舞台。
ファンタジー小説でもあり、群像劇でもある作品の中では同じ時間の中で登場人物の活躍、世界の変化が同時進行で描かれています。
物価高が国民を悩ませている日本、一方で移民問題と荒波のような変化の中にあるアメリカ、今も戦時下にあるウクライナ……。
時おり物語の大陸公路諸国と実際の世界が重なるような、不思議なリアル感がアルスラーン戦記の魅力でもあります。