スマホ前時代とスマホ時代の小説の変化

読書家ならではの目線で、スマホの登場と小説の関係を掘り下げるお話。
第2回は、スマホの登場で起きたスマホ時代の小説の変化に迫ります。
小説の中でのスマホの取り扱い

Appleのスティーブ・ジョブスがiPhoneを大々的に発表した2007年、スマホ時代が始まります。
2020年代は、通信業界の用語で「5G時代」に当たる時代とされています。
スマホ時代の現代が舞台の小説では、リアルな世界観を表現するためにスマホの利用シーンは必要で、辻村深月さんの『ツナグ 想い人の心得』では、前作から時代が進みスマホが普通に使われているシーンが描かれています。
スマホの登場で小説のストーリー展開に起きた影響
リアルな世界観の現代を舞台にした小説には、スマホの利用シーンは欠かせませんが、ストーリー展開にも大きく影響しています。
スマホ時代の小説の登場人物の現れ方
現実では、会ったこともないネット上の相手と深い関係になったり、犯罪者が近づいてくることも当たり前に起こっています。
小説の世界でも、X(旧Twitter)でつながった相手が登場したり、登場人物が裏アカで悪役に成りすましていたりと現実に近い描かれ方をするストーリーもあります。
接点のない人物を、割と気軽にストーリーに登場できるメリットもあれば、ミステリー小説で疑いのかかる登場人物が多すぎるデメリットもあります。
スマホの高性能な通信の影響〜連絡がつかない理由づけ
また、スマホ前時代のガラケーに比べ、連絡がつかない時の理由づけも必要です。
「ナオヤから返信が来ないんだけどさあ」
「まあ、きっと地下鉄なんじゃないの」
こんなやり取りはWiFiの行き渡った都会では不自然で、地方の自然の中に行っても最新機器ならStarlinkで通信できてしまいます。
高性能なスマホが広まった現代で連絡がつかないのは、意図的に連絡を絶っているか、スマホを無くしてしまったか、連絡がつかない自然な理由を探す方法が難しいほどです。
多機能すぎるスマホの影響
そして、スマホが多機能すぎることも悩みごとです。
「では、犯行を目撃したのはあなただけなんですね」
「ええ、あっスマホで撮影しているのでコレです」
「そうですか、確かにバッチリ犯人が映っていますね」
高性能なカメラと位置情報で犯人は言い逃れできない、ミステリー小説がこんな展開なら少しつまらないはずです。
多少のブレや天気でも綺麗に撮影できるカメラと動画、GPSの位置情報、リアルタイムで拡散するSNSに調べ物からボイスチェンジャー機能もある何でもありのAI。
人気のサスペンスドラマ『放送局占拠』『新空港占拠』『大病院占拠』では、通信を遮断する機器が犯人側の必須アイテムになっています。
スマホ時代の影響を受けた小説
高性能な通信、多機能すぎる影響をもたらすスマホは実際の作品ではどのような位置づけなのでしょうか?
青春小説と恋愛小説
青春小説と恋愛小説では、リアルな世界観を表現するためか日常のシーンの中でSNSのやり取りの場面が描かれています。
ストーリーに影響するスマホの利用では、片想いの登場人物同士が実はSNSでは気心が知れた親友同士という展開。
同世代に馴染めない登場人物がSNSで出会う展開は、令和の若者ならではですよね。
少々ダークなストーリーでは、学校の憧れの相手が実はネット上でひどいことをしていると暴露され正体に幻滅するシーン。
ネットで恋愛相談をしていた親友が、実は恋人の浮気相手という、ネット社会で現実に起こりそうな展開が描かれています。
ミステリー小説とサイバーミステリー小説
ミステリー小説では、スマホの高性能な通信と多機能を上手く封じる展開と、スマホの機能を取り入れた作品に分けられます。
スマホの通信と多機能を封じてクローズド・サークルを作り出したミステリー小説では、阿津川辰海さんの『紅蓮館の殺人』が有名です。
作品の舞台になる山岳地帯では、落雷で基地局が壊れ、同時に起こった停電で通信障害とバッテリー切れを起こすことで登場人物のスマホ使用を制限しています。
さらに、山火事で登場人物の行動範囲を限られた場所にすることで、物理的にも閉じ込めるクローズド・サークルを作り出しています。
スマホの機能を取り入れた作品は、サイバーミステリー小説と呼ばれています。
浅倉秋成さんの『俺ではない炎上』は、SNSのアカウントを誤認された主人公が殺人犯としてネットに写真付きで実名が晒され、大炎上するストーリーです。
主人公に不利な情報を発信する第三者、真犯人の成りすましが謎を複雑にする展開にひと役買っています。
スマホ時代の小説のまとめ

スマホ時代の到来とともに、小説のストーリーや舞台設定も変化しています。
スマホの高性能な通信、多機能すぎる影響を上手く生かす展開。
反対に、自然現象や対抗機器を使って「スマホの機能を制限」するミステリー小説も盛り上がりますよね。
AI作品以上に、作家さんの想像力が今は勝っている、と思いたいひとりの本好きの戯言です。
参照:AIが小説を書く⁉ スマホの次はAIの時代!: 今や、AIはただのツールじゃない。 これは“表現者”としてのAIのはじまり。 (AI・アシりんとの本づくり協奏)
ただ、AIは世界中の電子書籍や個人のブログからストーリー展開を学習しているんですよね。
いずれ、AI作家の小説が本屋大賞にノミネート!なんてことになったら……複雑な気持ちでならないですよね。
