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ホラー小説とは?ホラー小説の歴史と現代ホラーの分類

ホラー小説とは?

読書の豆知識


今回の読書の豆知識では、好みがはっきり分かれ、それでいて興味をくすぐるホラー小説についてまとめさせていただきます。

怪奇現象が豊富な日本では、昔ばなしでホラーのお話も語り継がれているのですが、小説のジャンルとして確立したのは、実は平成になってからのようですね。


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ホラー小説の定義と特徴

小説のジャンル〜ホラー小説


ホラー小説を掘り下げる前に、そもそもホラー小説とは?という定義と歴史を簡単にまとめてみました。

ホラー小説とは?
ホラー小説の定義

ホラー小説は、『読者に恐怖感を与えることを主な目的とした小説』と定義されています。


世界のホラー小説の歴史
ホラー小説の歴史

ホラー小説に限らず、現代文学の歴史はヨーロッパに始まり、19世紀から日本に広まったとされています。
1764年に『オトラント城奇譚』が出版されると、心霊現象による恐怖を描いたゴシック小説が18世紀に流行します。
その後『フランケンシュタイン』 (1818年出版)や、『ジーキル博士とハイド氏』 (1886年出版)など現代にも続く作品が19世紀に生まれ、ホラー小説のジャンルがヨーロッパで確立しました。
さらに20世紀には、ホラー小説の巨匠スティーヴン・キングらホラー小説作家が活躍し現代ホラー小説が生まれたとされています。

参照:風間賢二『ホラー小説大全 完全版』


日本のホラー小説の確立

日本国内でホラー小説の確立は、1994年に横溝正史ミステリ&ホラー大賞(旧 日本ホラー小説大賞)の選考が始まってからとされています。
古典の分野では、怪奇現象を取り上げた作品の歴史は古いのですが、日本の文学としてのホラー小説は30年ほどというのが専門家の見解とされています。

参照:文芸におけるホラージャンルの確立 ~日本ホラー小説大賞~|日刊ゲンダイDIGITAL嶺里俊介



ホラー小説の細かな分類条件

ホラー小説の分類


ホラー小説は、描かれる恐怖の対象で、さらに細かく分類されます。

恐怖の対象

日本のホラー小説では、心霊や祟りを恐怖の対象とした怪談ホラー小説(怪奇小説)、心霊ホラー小説が伝統的なジャンルです。
心霊現象ではなく、人間心理の闇と狂気を恐怖の対象とした作品はサイコホラー小説と呼ばれています。
また、宇宙人の侵略や秘密の陰謀を描く作品はコズミックホラー小説に分類されます。
サイコホラー小説の1つの分類でもありますが、狂気を抱いた人間の人体実験や食人を描くグロテスクな作品はカニバリズムホラーと呼ばれています。
他にも日本古来の伝承を元に描かれた妖怪小説、他のジャンルと融合したSFホラー小説、ファンタジーホラー小説、ホラーミステリーという分類もあります。

参照:筒井康隆の恐怖小説における表現特性の研究 竹村 和馬


現実世界に紛れ込む異質な存在≒恐怖

また、恐怖の対象だけではなくストーリー展開もホラー小説に欠かせないものです。
ホラー作家の秋竹サラダさんは、舞台設定はあくまで現実世界で、そこに「紛れ込む異質な存在」が加わることで読者が恐怖を抱くと表現されています。

参照:
【史上初】日本ホラー小説大賞&読者賞をW受賞!『祭火小夜の後悔』の魅力|LINK@TOYO|東洋大学秋竹サラダ


スリラー小説との違い

ホラー小説と似た呼び方で、スリラー小説というジャンルがあります。
スリラー小説は、ストーリー展開が速く、屈強であったり何かしらの才能のある登場人物が活躍する作品で、恐怖をテーマにしたホラー小説とは区別されています。
分かりやすいのは、対立する側が怪奇現象の場合に登場人物に霊能力者や聖職者がいたり、狂気的な人物に対しては医師や心理学者、ゾンビには警察関係者や元自衛隊員のような屈強な登場人物に活躍の機会があります。
登場人物の活躍とストーリー展開を重視した作品がスリラー小説、恐怖そのものをテーマにした作品がホラー小説と住み分けがされています。



ホラー小説の種類別に代表的な作品を紹介


ひとことでホラー小説といっても、心霊現象から科学の暴走まで恐怖の対象はさまざまです。
ここで、怪談ホラー小説(怪奇小説)と心霊ホラー小説(心霊小説)、サイコホラー小説とSFホラー小説のジャンルで有名な作品と作家さんを紹介させていただきます。

伝統的なホラー小説〜怪談ホラー小説(怪奇小説)、心霊ホラー小説(心霊小説)

典型的なホラー小説と呼ばれるものは、怪奇現象を描く怪談ホラー小説(怪奇小説)と幽霊の恐怖を描く心霊ホラー小説(心霊小説)です。
社会現象にもなった「呪いのビデオ」と「貞子」が登場する鈴木光司さんの『リング』シリーズは、作品によってはサスペンスホラー小説に分類されることもありますが、伝統的な心霊ホラー小説(心霊小説)に分類されています。
道尾秀介さんのデビュー作『背の眼』は、福島県を訪れた主人公が神隠しの恐怖に追われる展開の怪談ホラー小説(怪奇小説)です。

有名な作家:鈴木光司道尾秀介


現代的なサイコホラー小説

人間心理の闇と狂気を描くサイコホラー小説は、技術が進歩しても変わらない人間持つ不気味さが恐ろしい作品です。
第4回日本ホラー小説大賞受賞作『黒い家』、第1回山田風太郎賞受賞作『悪の経典』の貴志祐介さんは、抱いた闇が暴走したサイコパスの恐怖を描くサイコホラー小説作家として根強い人気があります。
リアル鬼ごっこ』や『復讐したい』に代表される、命がかかったデスゲームで本能と欲の間で豹変する人間の怖さを描く山田悠介さんのサイコホラー小説は、当時10代から20代の若者の好奇心を集め、ドラマ化された人気作品です。

有名な作家:山田悠介貴志祐介


他のジャンルと融合したSFホラー小説

心霊現象や人間の闇の他にも、科学の暴走や細菌など目に見えない恐怖を描くのがSFホラー小説です。
最近はSF小説を多く執筆されている瀬名秀明さんのデビュー作『パラサイト・イヴ』は、細胞の器官ミトコンドリアが意思を持ち人間を支配しようと暴走するSFホラー小説です。
1000年後の世界を舞台に、超能力を手に入れた人類に襲いかかる過去の恐怖を描く貴志祐介さんの『新世界より』も、SFホラー小説として人気の作品です。

有名な作家:貴志祐介瀬名秀明


日本が生んだ妖怪小説

日本の伝統的な怪奇現象を時代小説の歴史的な裏付けと、ミステリー小説のような理論的な方法で解決する京極夏彦さんの作風は、「妖怪小説」という全く新しいジャンルに分類されています。
ミステリー小説の受賞歴とランキングから、推理小説として紹介されることがほとんどですが、怪奇現象や心霊現象を掘り下げる作風
が恐怖を誘う物語でもあります。

有名な作家:京極夏彦



ホラー小説のまとめ


昔ばなしで語り継がれている神隠しや心霊現象の影響で、大昔から存在していたように思っていたホラー小説。
実は、小説のジャンルとして確立したのはおおよそ30年前のことでした。
恐怖そのものをテーマにしたホラー小説には、怪談ホラー小説(怪奇小説)、サイコホラー小説、SFホラー小説という細かな分類もあります。
令和のこれからは、AIホラー小説なんてジャンルが生まれるのかもしれませんね。

有名なホラー作家:貴志祐介瀬名秀明鈴木光司道尾秀介山田悠介京極夏彦


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