本当に本が読みたくなる読書のブログ

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人気作品を支えた編集者が教えるミステリ小説の入門書

『書きたい人のためのミステリ入門』

書きたい人のためのミステリ入門(新潮新書)



著者 新井久幸
出版社 株式会社新潮社
分類 実用書
出版日 2020/12/20
読みやすさ ☆☆★読みやすい


ミステリ小説の編集者として、人気作品を世の中へ送り出した新井久幸さん。
ミス研の大学生の頃から、長年の編集者として積み上げた「小説を書く」知識を小説家を目指す人たちに教えてくれる1冊です。

著者の紹介


著者は、大手出版社で編集長をされている新井久幸さん。

有名ミステリ作家の道尾秀介さんや伊坂幸太郎さんをデビュー当時から支える編集者さんです。

大学のミス研からミステリ編集者へ

新井久幸は、出版業界の大手企業 新潮社で編集長をされている方です。

新潮社というと、山本周五郎賞川端康成文学賞を講演している出版社ですが、自社だけで開催さらている新潮ミステリー大賞、新潮新人賞も多くの人気作品を生み出してきました。

実は、新潮ミステリー大賞や新潮新人賞に携わっていた編集者さんの中心人物が新井久幸さんなんです。

本の中では新井さんが大学生の頃、ミステリ研究会で作品についての分析を深め、新潮社で新人作家さんの原稿を校正されていた若手時代のお話も語られています。


新井久幸さんの携わった本の紹介

新井さんは編集者という立場上、ご自身で執筆された本は『書きたい人のためのミステリ入門』だけでした。

ですが、今では日本を代表するミステリ作家の伊坂幸太郎さんのデビューを支えた人物でもあります。

『ホワイトラビット』伊坂幸太郎
ホワイトラビット(新潮文庫)

『向日葵の咲かない夏』道尾秀介
向日葵の咲かない夏(新潮文庫)


具体的なテーマと構成の『書きたい人のためのミステリ入門』


現役編集長でもある新井久幸さんの『書きたい人のためのミステリ入門』は、タイトル通り新人作家さんやこれから小説家を目指す人へ向けた教科書のような1冊です。

具体的なテーマの構成

・はじめに p3~p5
・第一章 そもそも「ミステリ」ってどんなもの? p13~p22
・第ニ章 謎がなければ始まらない p23~p39
・第三章 フェアとアンフェアの間 p40~p56
・第四章 意外な犯人は「意外」じゃない p57~p74
・第五章 「ふうん」な伏線じゃ驚けない p75~p86
・第六章 名探偵、みなを集めて「さて」と言い p87~p110
・第七章 複雑な話は長編が向いているのか? p111~p122
・読書会 連城三紀彦と「逆向きの矢印」 p123~p136
・第八章 人間が書けているとはどういうことか? p137~p147
・第九章 何のために世界を作るのか? p148~p158
・第十章 タイトルは最大のキャッチコピー p159~p170
・第十一章 「ときめきメモリアル」は黒澤明の夢を見るか p171~p179
・第十二章 デビューへの道 p180~p191
・第十三章 ミステリ新人賞、その執筆および投稿と選考に関する一考察 p192~p212
・おわりに p213~p215
・本書で紹介した作品一覧 p216~p223

章の数は13章と多く、1つの章はおよそ20ページです。

人気の作品から、歴史的な名作ミステリを例に、テーマに合わせた具体的な答えと解説で構成されています。


講演を聞くような読みやすさ ☆☆★読みやすい

文章はかしこまっていて、それでいて堅苦し過ぎない話し言葉でまとめられています。

新井久幸さんは、作家さん向けの講演もされていらっしゃるので、講演を聞いているような読みやすさの本です。




完成させたかった小説の後押しに


私が『書きたい人のためのミステリ入門』を見かけて、思わず読み始めた理由は完成させたかった小説があったからです。

読書ブログを運営しながら、時々短編小説を更新させていただく花水(hanami)ですが、中編以上の物語を完結させたことはありません。

新井久幸さんの「まず、1つの作品を最後まで書き上げること」と書かれた言葉に後押しを受け、ブログの更新よりも先に1つの作品を書き上げることができました。

その物語は、近々新人文学賞に応募させていただくことにします。


最も大切な内容


今回は、私やもっと本格的に小説を書いている人の目線で、「リアルな小説」「小説家デビューに大切なこと」「小説を書く理由」の3つのテーマに絞って内容を紹介させていただきますね。


リアルな小説とは?

作品世界に乱れがなければ、どんなに「現実」離れした物語でも、読者は寄り添って読むことができる。その乱れなき世界を構築することが、世界を作るということであり、読者の心を掴むことに繋がるのである。
現実世界に即したものがリアルだと感じられやすいのは、そこに説明がいらないからだ。常識は、何の前提もなく受け入れられる。日々の生活と経験が、見えない説得力となって背後にあるため、「現実」には違和感かないのだ。
だから、小説を書く際に注意して欲しいのは、「この世界で生きている人々」という目で登場人物を見ることであり、「この人ならどう行動するか?」という観点で言動や展開を考えることだ。
第八章 人間が書けているとはどういうことか? p139~p140

小説を紹介させていただいている私も、「リアルな世界観」「リアルな人間模様」といった表現を使うことがあります。

思い返してみると、「私が感じたリアルな小説」であって、「どんな小説がリアルなのか」はわかっていませんでした。

新井さんは、「この人ならどう行動するか?という観点で言動や展開を考えること」が徹底された小説が「リアルな小説」という答えを書かれています。

「リアルな小説」は、その世界の中で「確かに登場人物が存在する」物語です。

機械的な出来事の解説や身近にありそうな会話ではなく、小説の世界の中に感情と考えのある登場人物が存在する物語がリアルな小説と呼べるのでしょう。


小説家デビューに大切なことは?

そしてもう1つよくされる質問が、「デビューするために、もっとも大事なことは何ですか」というものだ。
これはもちろん、「面白い作品を書くこと」なのだが、そんなことは当たり前なので、その1歩手前を考えたい。
複数の作家が、同じような質問を受けた場面を目にしたことがあるが、異口同音に答えていたのは、「まず、1つの作品を最後まで書き上げること」だった。なるほど、と思うし、その通りだとも思う。
・第十二章 デビューへの道 p185~p186

この章を読んで、花水(hanami)は中編小説を書き上げるきっかけになリました。

「まず、1つの作品を最後まで書き上げること」

作品が1つも出来上がっていない私は、小説は書いていても、小説家のスタートラインにまで行けていないことに気がつきます。

これでやっと、自称小説家を名乗ることができるんですね。


小説を書く理由

小説を書きたい、という純粋な欲求だけなら、何もデビューする必要はない。
ところが、小説家になりたい、だと話は変わる。自分1人でせっせと小説を書いているだけでは、永遠に自称・小説家から脱却できない。自著が書店に並んで初めて、世間的に「小説家」と認知されるのだ。そして現状、本を出すには新人賞を取るのが近道だ。
そもそも、何か書きたいこと、訴えたいことがあったから小説家を志したはずだ。ならば、自分の書きたいことを思う存分書くべきだ。そうでなければ、書く意味はないし、書いていても楽しくないだろう。
・第十三章 ミステリ新人賞、その執筆および投稿と選考に関する一考察 p196~p197

自称小説家になった私は、次に何をすれば本物の小説家になれるのでしょうか?

インターネット上のウェブ小説、ネット作品で自分の物語を知ってもらうことができても、日本国内では「自分の本が本屋さんに並んで」始めても小説家として認められるのが現実でしょう。

その近道は、新人賞を取ること。

他にも、ウェブ小説で人気を集める方法もあります。

本を出版することが目的なら、新人賞を取ることもウェブ小説で人気を集めることも「出版社の人に知ってもらうこと」が本当の目標です。

私は、まず新人文学賞に応募をして、おそらく落選するでしょう。

その後は、ウェブ小説や自分で小説サイトを立ち上げて「出版社の人に知ってもらうこと」を目指してみます。




小説家を目指す人、趣味で小説を書いている人へおすすめの本


ミステリ作家の教科書といえる『書きたい人のためのミステリ入門』は、新人作家さんの教科書でもあります。

新人作家さんへの道を歩いている小説家を目指す人、趣味で小説を書いている人が「何をしたらいいのか」が具体的に書かれています。

また次回になりますが、本の読みどころも取り上げられていて、読者さん目線でもワクワクする1冊ですよ。


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