本当に本が読みたくなる読書のブログ

読書好きのための本当に読みたい本が見つかる書評ブログです。小説、実用書、ビジネス書ジャンルを問わず紹介。読書にまつわる豆知識のお話、文章の書き方のお話もありますよ。

伊坂幸太郎~伏線回収とストーリーのリンクが見せる伊坂ワールド

伊坂幸太郎さんの紹介


今回は、紹介させていただくにはあまりにも有名な作家さんの紹介です。

コアなミステリ小説ファンから、ふと手に取った1冊で物語の魅力に引き込まれる作家さんが伊坂幸太郎さんです。

鮮やか伏線回収と、本の中にもう1つの日本が広がっていそうな世界観は「伊坂ワールド」と呼ばれ、多くの書評家、読者さんを虜にしてきました。

そんな伊坂幸太郎さんの、来歴と作風、おすすめのシリーズに迫ってみますね。

伊坂幸太郎さんの来歴

オーデュボンの祈り(新潮文庫)


・1996年 『悪党たちが目にしみる』で第13回サントリーミステリー大賞佳作
・2000年 『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー
・2003年 『重力ピエロ』が話題になり人気が爆発
・2004年 『アヒルと鴨のコインロッカー』が第25回吉川英治文学新人賞を受賞、後の人気作品『グラスホッパー』を出版
・2005年 『砂漠』を出版、直木賞ノミネートが続く
・2008年 『ゴールデンスランバー』が第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞を同時受賞
・2010年 『グラスホッパー』の続編『マリアビートル』が出版
・2017年 『AX』(マリアビートルの続編)が出版される
・2020年 山本周五郎賞の選考委員に選ばれる
・2020年 『逆ソクラテス』で第33回柴田錬三郎賞を受賞


大学卒業後、システムエンジニアとして働くかたわら新人文学賞に応募を続けていた伊坂幸太郎さん。

初の受賞作品『悪党たちが目にしみる』が、後の人気作品「陽気なギャングシリーズ」の1作目『陽気なギャングが地球を回す』として出版されるのはデビュー後の2003年のことでした。

その後も、新人文学賞へ応募を続け、逃走中の強盗犯 伊藤が訪れた現代的な暮らしと距離を置く「荻島」で起こる謎に迫る『オーデュボンの祈り』でミステリ作家としてデビューを果たします。

世の中に伊坂幸太郎さんが知られるようになったのは、仙台市を舞台にしたミステリ小説『重力ピエロ』でしょう。

出版の翌年から開催された第1回「本屋大賞」にノミネートされ、同じ時期に発表される「このミステリーがすごい!」で3位受賞すると本屋さんの棚に小説が平積みされるようになります。

その後は、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX』と続く「グラスホッパーシリーズ」が発表される度にファンが増え、日本を代表する作家として世界中に知られるようになりました。





伊坂幸太郎さんに迫る

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)


千葉県出身の伊坂幸太郎さんは、東北大学在学中に過ごされた宮城県仙台市で今も暮らされています。

仙台市を舞台にした作品は、伊坂幸太郎さんの暮らしている周りに物語の風景が映る不思議な世界が広がっています。

伊坂幸太郎さんの作風

伊坂幸太郎さんの作品は、「伊坂ワールド」と呼ばれ作品が発表される度に新しいファンが増えています。

伊坂ワールドというと、伊坂幸太郎さんの描く独特の世界観のように、どこか抽象的なイメージい思えます。

簡単にまとめてしまうなら、「リンクするストーリー」と「リアルな舞台」、そして「鮮やかな伏線回収」が読者さんに臨場感を感じさせてくれる、解説で伝えられないくらい自然な物語の世界といっていいはずです。


「リンクするストーリー」と登場人物

伊坂ワールドは多くの作品で、舞台設定や登場人物などがリンクしており、同じ時系列で進むストーリーはファンを飽きさせません。

具体的に登場人物を上げてしまうとネタバレになってしまいますが、「陽気なギャングシリーズ」と『アヒルと鴨のコインロッカー』、『砂漠』と『チルドレン』は同じ時系列で進んでいて細かな読み比べが楽しめます。

『オーデュボンの祈り』から『重力ピエロ』
、『グラスホッパー』へと続く作品には、同じ時間が流れていて、特徴だけで名前は明かされない登場人物の変化を追うのも伊坂ワールドの楽しみ方の醍醐味ですよね。


程よい都会感と生活感の「リアルな舞台」

伊坂幸太郎さんの作品といえば、後になってハッと気がつく伏線回収が魅力的です。

ファンの方にとっては、ちょっと強調された出来事は「伏線かも」と気になるのも伊坂ワールドあるあると語られています。

私は、物語の中で自然に進む時間がリアルな世界観を生んでいるように思えます。

程よい都会感の中で、商店街の装いが変わったり、暮らしの中に季節のイベントが盛り込まれているのは、四季のハッキリとした仙台市ならではの舞台設定だからではないでしょうか?

『重力ピエロ』では、物語の舞台が仙台市と明かされていて、『砂漠』でも登場人物の設定から彼らの生活圏が仙台市内というのは明らかです。

グラスホッパーシリーズ」の舞台は東京都内がほとんどですが、北関東から東北にかけて移動するシーンもあり、ご自身で過ごされているから感じることができる「程よい都会感と生活感」から生まれる舞台設定は、入り組んだ謎が隣で起こっているような感覚をもたらしてくれるのではないでしょうか。




もう1度振り返りたい伊坂幸太郎さんの代表作


話題作の多い伊坂幸太郎さんは、新しい作品が注目されがちです。

中でも、私がもう1度振り返りたいと思える作品は「陽気なギャングシリーズ」と青春小説の『砂漠』です。

伊坂幸太郎さん自身も楽しみな「陽気なギャングシリーズ」

www.yu-hanami.com
陽気な5人はギャングで強盗団 伊坂幸太郎さんの「陽気なギャング」シリーズ - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
「ロマン」を価値観に集う5人のギャングの物語、伊坂幸太郎『陽気なギャングの日常と襲撃』 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
陽気なギャングが世の中を救う、伊坂幸太郎「陽気なギャング」シリーズ最新刊の紹介 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ

世の中で仕事をしながら、銀行強盗をする陽気なギャングたち。

個性的で、それでいて近くに住んでいそうな5人のギャングが世間の表と裏の出来事を解決する物語は、伊坂ワールドのストーリーと登場人物両方を楽しめる物語です。


直木賞辞退の話題作『砂漠』

www.yu-hanami.com


自宅と学校という狭い世界に慣れた高校生活を卒業し、生活圏内のほんの少し先に「何かある」と気持ちが躍る青春小説。

個性的なキャラクターと時折起こる伏線回収が伊坂幸太郎さんらしくもあり、青春小説というミステリでは描かれないジャンルを楽しめる1冊です。




伊坂ワールドの代名詞「グラスホッパーシリーズ」


伊坂ワールドをこれから楽しみたい方は、やはり有名な「グラスホッパーシリーズ」から読み始めてはいかがでしょうか?

グラスホッパー』『マリアビートル』『AX』は、登場人物の意外なやり取りから伏線回収が楽しめるミステリ小説です。

細かな伏線回収とハッとする謎解きを楽しまれた次は、『砂漠』のように登場人物に深く迫る作品が楽しめるはずですよ。

『マリアビートル』

マリアビートル (角川文庫)

『AX』

AX アックス (角川文庫)


関連サイトリンク

にほんブログ村 本ブログへ