本当に本が読みたくなる読書のブログ

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ベストセラー作家さんが小説の書き方を教えてくれる実用書

『プロだけが知っている小説の書き方』

プロだけが知っている 小説の書き方

著者 森沢明夫
出版社 株式会社飛鳥新社
分類 実用書
出版日 2022/7/28
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい


今回の実用書は、小説の書き方に悩んでいる方、小説家を目指す方、実際にWeb小説を執筆されている方におすすめの「小説の書き方」の実用書です。

ベストセラー作家さんの具体的な技術が、惜しげもなく書かれた実践的な1冊ですよ。

教えてくれる先生は小説家 森沢明夫さん


小説の書き方を教えてくれる先生は、ベストセラーを手がける現役の小説家 森沢明夫さんです。

森沢明夫さんの略歴

大学卒業後、出版社に勤務された森沢明夫さんは、フリーライターへ転向し2002年から本格的にエッセイの執筆に取り組まれています。

2006年には、ノンフィクション作品の『ラストサムライ 片目のチャンピオン武田幸三』で第17回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞され、2009年からは小説の執筆活躍をはじめられ『海を抱いたビー玉』『津軽百年食堂』を出版されています。

書き手側の目線と編集者側の目線両方を経験された森沢明夫さんは、小説の書き方を教えてくれる先生として、とても貴重な存在なのではないでしょうか?


森沢明夫さんの小説の紹介

『エミリの小さな包丁』
エミリの小さな包丁 (角川文庫)

『本が紡いだ五つの奇跡』
本が紡いだ五つの奇跡

『虹の岬の喫茶店
虹の岬の喫茶店 (幻冬舎文庫)


『プロだけが知っている小説の書き方』の構成と読みやすさ


『プロだけが知っている小説の書き方』は、小説家として活躍されている森沢明夫さんの取り組みが具体的に書かれている、実践的な小説の書き方が学べる1冊です。

実用書ではありますが、森沢明夫さんがQ&Aで私たち読者の知りたいことに答える形でわかりやすく書かれていましたよ。

小説を書く順番の構成

・はじめに p2〜p5
・STEP1 ネタを考える p16〜p48
・STEP2 設定を考える p52〜p77
・STEP3 プロットをつくる p82〜p137
・STEP4 原稿を書くPart1 p142〜p193
・STEP4 原稿を書くPart2 p198〜p213
・STEP5 推敲する p218〜p243
・おわりに p250〜p253

本の内容は、「STEP1 ネタを考える」から「STEP5 推敲する」まで小説を書く順番の6章で構成されています。

小説の書き方に大切な内容は、図解や例題で詳しく解説されています。

それぞれ章の末尾には、森沢明夫さんが経験された小説家の日常がコラムで紹介され、頭の切り替えが自然にできるように書かれていますよ。


Q&Aで☆☆☆とても読みやすい

本の内容は、1つの章に2〜3ページのQ&Aのテーマで書かれていて、普段本を読まない方でもスキマ時間で読み進めることができます。


新人文学賞に落選して、改めて小説を学びたくなる


昨年、どうしても書き上げたかった長編作品を書き終え、とある新人文学賞に応募してみた花水由宇(hanami yu)。

結果は、最終選考に通らず落選でした。

理由は、読んで下さった編集者の方しかわからないことです。

ただ、1人の読書家として自分の作品を読み返してみると……。

登場人物のほとんどが薄い……そう感じました。

実在の人物をモデルを元に描いたのでリアルではあるのですが、主人公以外の登場人物は、どこか客観的というか、何を考えて暮らしているのかわかりにくい。

もしかすると、登場人物の描き方が上手くいっていなかったのかも?

そう思い、改めて小説を学びたくなったときに見つけた本が森沢明夫さんの『プロだけが知っている小説の書き方』でした。




小説の登場人物の描き方

舞台設定、人間関係の設定、ストーリーの流れの設定など、小説を書くうえでいくつかの設定が必要になりますが、いちばん大切なのは「キャラクター設定」です。
・STEP2 設定を考える p50


森沢明夫さんは、物語の設定の中でいちばん大切なのは登場人物の「キャラクター設定」と書かれています。

自分が読者になったとき、同じ目線で世界観を体験できる等身大の登場人物、身近にいたらいいと思える人間味あふれる登場人物、そうした登場人物はどうしたら描けるのでしょうか?

著者がキャラクターを熟知すること

面白い物語を書くには、最低限「キャラクターが魅力的であること」が必要となってくるわけです。
具体的にどうしているかと言いますと、キャラクター1人ひとりの個性を片っ端から書き出しつつ、脳内で映像化していく、という作業をしているのです。
・STEP2 設定を考える p50〜p51

答えは、登場人物のキャラクター1人ひとりの個性を片っ端から書き出すことと森沢明夫さんは書かれています。

具体例は本当に細かく、年齢や仕事はもちろん、食事やファッションの好み、密かな楽しみまで物語には書かれていないことまで著者が設定をしてゆくそうです。

そういえば、世界的な人気漫画『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生は、登場人物の好きな目玉焼きの好みかや体臭まで設定していると書かれた記事を読んだことがあります。

物語に描かれない内容まで、登場人物の設定
を創り込むことがキャラクター設定の基本なんですね。


実在の人物をモデルに組み合わせる

自分がよく知っている人をモデルにすれば、キャラクター設定がラクなうえに、作中でいっそうリアルな人物像を描き出すことができるでしょう。
ちなみに、モデルは1人に限定する必要はありません。
つまり、複数のモデルの要素をミックスさせた1人のキャラクターを創ってもいいわけです。
・STEP2 設定を考える p56〜p57

先ほど新人文学賞に応募した作品でも、実在の人物をモデルに年齢を変えた登場人物を描いてみたのですが、「複数のモデルの要素をミックスさせた1人のキャラクターを創る」発想は思いつきませんでした。

次の作品では、ぜひ取り入れたいキャラクター設定です。

花水(hanami)は、主人公の職場の上司の見た目を中学校の先生にして、性格を陽気な親戚のおじさんに入れ替える2人1役からはじめてみることにします。


キャラクターの性格の背景は?

性格を列挙する際は、生まれ育った環境(生い立ち)を含めることがとても重要です。性格形成には「過去」が大きな影響を及ぼしているはずですし、その「過去」のなかに物語のカギとなる出来事を設定しておくと、よりいっそうリアリティのある話になりやすいうえに、伏線のネタにもなります。
・STEP2 設定を考える p52

登場人物のキャラクター設定は、性格の背景まで細かく含めることが大切と森沢明夫さんは書かれています。

例えば、主人公を励ましてくれる「ポジティブな同僚」という登場人物のポジティブ思考は、実は過去に何度も失敗を重ね克服した結果という「過去」を設定しておく。

花水(hanami)には、まだまだ伏線回収は難しいですが、登場人物を深く描くためには欠かせない設定なんですね。


性別や年齢の違うキャラクターを描くには?

異性や、自分とは違う年代の人たちと日頃からなるべく接して、彼らについて知る(取材する)のが正解です。
彼らが何を考え、どういうときにどういう行動を取るのか。握手したときの皮膚の柔らかさやぬくもり、歩く速度、食事の量、表情のつくり方や、性格のいいところ、悪いところなど、実際に接しながらつぶさに観察し、肌感覚で理解していくんです。
・STEP2 設定を考える p68〜p69

年齢や性別、生まれた国が違う登場人物はどう描いていいのかわからなくなります。

実際に会ったことのある人の中に、答えがあったなんて……。

これからは、毎日見かける人の細かなところを知ることも、執筆活動の勉強にしてみたいなぁと思いましたよ。




小説家を仕事にするなら


『プロだけが知っている小説の書き方』には、1つの章に1つのテーマで森沢明夫さんの作家生活を綴られているコラムがあります。

小説家は体力勝負

じつは、小説を書くという行為は、なかなかの肉体労働です。
そこで、ぼくは筋トレに行くわけです。筋肉を動かすことで凝りをほぐし、ストレスを発散し、心身ともに「書ける状態」への持っていきます。
筋肉がつくと「凝りにくい身体」になりすし、その分、長時間、集中して原稿が書けるようにもなります。
・column1 p48

森沢明夫さんは、30代の頃からジムへ通い筋トレを欠かさないと書かれていました。

それは、「小説を書く」ため。

1日デスクワークを経験された方は体験されたと思いますが、座りながら同じ姿勢で作業をするのは、かなり体が痛くなりませんか?
筋トレで身体を鍛え、ルーティンでストレスを管理するのも小説家には欠かせない仕事だそうですよ。


無名作家がデビューするには……?

小説は面白いけど、出版はできません。
なぜなら、あなたは無名だから。
出版社というのは、あくまで「営利追求団体」です。ということは、利益を出し続けなければならない。たとえ編集者が飲み友達だったとしても、その人は会社に損をさせてはいけないんです。
リスクを背負ってでも、この作品は「自分が手がけて」世に出したし!
この書き手は、この作品は、将来、化けて本が取れる可能性が充分にある!
ということは、です。もしも無形の人が小説を出版してもらいたいなら、「ふつうに面白い」作品ではなくて、「驚くほど面白い」作品を書かなくてはいけないわけです。
・column6 p246〜p247

新人文学賞について調べ、実際に応募するまで、小説家の方はデビュー作から少しずつ実力をつけててベストセラーを出版するステップアップのように花水(hanami)は考えていました。

違ったんですね。

無名作家がデビューするためには、デビュー作でベテラン作家さんを超える「驚くほど面白い」小説を書き上げなければ、出版はできない。

そういえば、新人文学賞の作品は「面白い作品を書く作家さんがデビューした」とわくわくするほどの内容がほとんどですよね。

デビュー作だから、編集者の方が売れる道すじを描けるほどの物語を仕上げなければならないんですね。





小説家を目指す人、Web小説を更新する人におすすめ


ベストセラー作家の森沢明夫さんが、小説の書き方を教えてくれる『プロだけが知っている小説の書き方』を紹介させていただきました。

今回は、花水(hanami)の知りたかった登場人物の描き方に注目してまとめてみました。

出版社では編集者、フリーライターを経験された森沢明夫さんの小説の書き方は、1回だけでは紹介しきれないほど役に立つ内容が盛りだくさんです。

小説家を目指す人、Web小説を更新する人はもちろん、花水(hanami)のように小説の書き方に悩んでいる人におすすめの実用書です。

ストーリーの組み立て方やプロットの書き方は、また別の機会にまとめさせていただきますね。

それでは、本の末尾に書かれていた森沢明夫さんのメッセージで締めくくらせていただきますね。

この本の読者のなかから、近い将来、ぼくのライバルが登場してくれることを心待ちにしています、というか、きっと出てくるだろうな、と思っています。
その日を楽しみに、今日も、明日も、明後日も、ともに腕を磨きましょう!
・おわりに p253


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