紙の本の流通量は足りている?

今回は、読書好きにとっては深刻な悩み、探している本が本屋さんにも出版社にもない問題の真相に迫ってみます。
Xアプリのでご協力いただいたアンケート結果と、書籍の流通量もふまえてまとめてみましたよ。
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紙の本が足りないかもしれない

ここ2〜3年、探している本が本屋さんにも出版社にもなく、フリマサイトでは定価1200円の文庫本が新刊の3倍以上に高騰している場面に出くわしています。
もしかすると……と頭をよぎるようになったのは、「紙の本が足りないかもしれない」という疑問。
そこで、Xアプリで読書好きの44名に回答いただいたアンケートでは、同じような経験をされた方が少なくは無かったことがわかりました。

探している本が本屋さんにも出版社にも見つからない方は、「電子書籍を買う(23%)」「割高でもフリマサイトで買う(27%)」と何らかの方法で本を読む方が50%でした。
一方で、「今はあきらめる(38%)」「増刷されるまで待つ(12%)」と読まない選択をされる方も50%と読む・読まないがちょうど半分という結果です。
本がどこにも見つからない読書好きの半分は「どうしても読みたい派」で、中でも27%という少なくはない方は新刊より高くても割高な本を選ぶと回答されています。
これは、任期アニメのグッズやアーティストの握手会のように、欲しい人がいるのに欲しい物が限られる時に起こる現象の同じでは?と思ったのです。
紙の本の流通量と本の需要は?

「紙の本が足りないかもしれない」という疑問の答えを知りたい。
そこで、書籍の流通量と需要について調べてみました。
紙の本の流通量は?

単行本や文庫本、雑誌と漫画が印刷会社で作られた数は発行部数と呼ばれ、書店で実際に売れた紙の本の数が販売部数と呼ばれています。
消費者目線に近い販売部数を調べてみたところ、1996年がピークでその後は右肩下がりでした。
驚きことに、2024年の本の流通量は1970年代と同じくらいにまで下がっています。
参照:出版物統計(図書) | リサーチ・ナビ | 国立国会図書館
販売部数は右肩下がりで平均価格は上昇中
紙の本の販売部数が右肩下がりなら、「売れないなら値段も下がるのでは?」と思い同じ年の平均価格も調べてみます。
すると、本の平均価格は流通量が近い1970年代の2倍以上になっています。
2025年の消費者物価指数(CPI)は1970年代の3倍とされていますので、物価に合わせて本も値上がりしていることは確かです。
需要が下がっているなら売れなくて値段も下がるはずですが、物価上昇分値上がりしている本は、需要が下がったわけではないようです。
出版不況で本の需要は減ったのか?
『出版不況』とは、1990年代後半に始まり現在も続いている書籍と雑誌の売れ行きが右肩下がりに落ち込み続けていることです。
参考にさせていただいたマーケティング専門家の方のサイトには、出版不況をこのようにまとめていました。
・出版業界の売り上げ規模が減少していることは事実
・書籍の需要という面では大きく落ち込んだとは言えない
・雑誌の販売部数は30%以上も減少
参照:
出版不況の本当の構造~今の時代こそ出版で会社を宣伝すべき理由~
やはり、紙の本の需要は大きく減っているわけではないようですね。
紙の本が高級品になる?

2020年代頃になるまで、新刊は当たり前のように本屋さんに並んでいて、値段は定価が上限で古本は100円で新しい文庫本が手に入りました。
書籍の販売部数が下がりつづけると、紙の本が高級品になるのでしょうか?
「供給>需要」から「供給≦需要」へ
2024年の書籍全体の流通量は1970年代と同じくらいにまで下がり、流通量は減っています。
特に、販売部数が大きく減った雑誌は電子書籍に置き換わっていて、出版社も紙の本と電子書籍両方を出版するようになりました。
一方で、実は紙の本の需要は落ち込んでいるわけではなく、平均価格も下がってはいません。
大きく減った流通量に比べて需要がそこまで下がっていないなら、書籍の市場は「供給>需要」から「供給≦需要」へ変わったといえるのではないでしょうか。
実際に、本屋さんにも出版社にも探している本がなく、フリマサイトでは新刊よりも中古本が高騰していることが物語っています。
いわゆる「読み捨て」が減った
これは、本好きでもある会社員目線で実感していることですが、読み終わった雑誌や文庫本が放置される「読み捨て」が減ったことも影響していると思います。
かつて情報収集と楽しみのために読まれていた雑誌は、情報が早いネットニュースに代わり、専門書は電子書籍でオンラインに代わりました。
そして、そこまで愛着のない文庫本の新刊を1回読んで売る人は、置き場や処分に困らない電子書籍を読むようになったはずです。
中古本の値上がり
書籍が「供給>需要」から「供給≦需要」へ変わったことを実感するのは、古本屋さんの100円コーナーです。
ベストセラー作家さんのシリーズものや、本屋大賞ノミネート作品のように新刊が書店の棚を埋めていた作品は十分な数が並んでいます。
一方で、ファン層が限られていたり、有名作家さんのデビュー間もない頃の作品などは中古本でも値段が下がらず、定価800円の文庫本でも500〜600円で販売され、品切れになっていることも珍しくはありません。
初版しか出版されていない作品は、Amazonでもフリマサイトでも新刊を超える値段で販売され、実際に購入する方もいます。
流通量の少ない古本が値上がりしているのは、本好きの方の多くが実感していることです。
紙の本はどうなるのか?

探している本が見つからないことで、「紙の本が足りないかもしれない」と感じた疑問。
調べてみると、本の販売部数は下がり続け、需要に比べて供給が少ない時代がもう来ている。
そう実感する出来事は、私の思い込みだけではなかったようです。
「紙の本の需要はまだまだ有りますよ」と世の中に知ってもらうためにも、こうして読書ブログで本のことを書き続けることにしますね。
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