13階段
著者 高野和明
出版社 講談社
分類 ミステリー小説
出版日 2001/8/6
読みやすさ ☆☆★読みやすい
前回に引き続いて、高野和明さんの作品を取り上げます。
今回は高野和明さんのデビュー作『13階段』、死刑制度を取り使うミステリー小説です。
死刑制度や難しい法律のことなどは、作品の中で登場人物によって解説もありますので、世の中で議論されるテーマの死刑制度を知る上でも勉強になる作品ですよ。
反対の立場の主人公
前科のある青年 三上純
主人公三上純は傷害致死の罪で2年間刑務所に服役し、出所した青年です。
“人を殺した犯罪者”が主人公!?と驚かれるかもしれません。
三上純の傷害致死事件は物語の初めの方で酒に酔った乱暴な被害者に絡まれたのを振り払って、誤って死なせてしまったとあります。
人を殺してはいますが、強盗殺人や飲酒運転とは事情は異なります。
刑務官 南郷正二
もう1人の主人公は三上純の服役していた刑務所の刑務官、南郷正二です。
南郷正二は勤務歴30年のベテラン刑務官ですが、退職を決めているそうです。
共通点は……
年齢も離れていて、立場も正反対の2人を主人公に当てたのには理由があるはずです。
何かしらの共通点、それは2人が共に経験していることかもしれません。
再審請求の証拠集め
冤罪の可能性のある殺人事件
刑務官の南郷正二は知り合いの弁護士からの依頼で、死刑囚が関わった連続殺人事件の再捜査を始めます。
この連続殺人事件は証拠や証言の正確さが不十分でもあったことから、有罪か無罪かを争われた事件でした。
何より争点となったのは、容疑者が当日の記憶を失っていることでした。
刑務官の南郷正二と助手に選ばれた三上純は過去の出来事の証拠集めを始めます。
それは、1人の命を救うかもしれない重要な捜査になっていきます。
記憶を失った死刑囚
そして有罪となって、死刑囚専用の独房に囚われてしまった樹原亮は死刑執行を待つ日々が続いていました。
死刑囚は、毎朝の刑務官の見回りの時に刑務官が独房の前で立ち止まり死刑執行を告げて連行されます。
その様子は近くの独房の死刑囚も、連行される死刑囚の取り乱した様子から知ることができ、刑務官の見回りは死刑囚にとっては死神の訪れになるわけです。
テーマは人の命と正義
テーマは『人の命と正義』ではないでしょうか?
前科持ちの青年三上純の人を思う正義。
刑務官南郷正二の法律にのっとった正義と、人の命をも左右する公の正義。
そして死刑制度そのものの正義。
『13階段』では、「人の死というもの、そして正義」それが問われます。
死刑制度は最近はニュースに取り上げられることは少なくなりましたが、去年までは死刑制度存続か廃止かで議論になった制度でもあります。
実際に死刑制度が廃止になったとしても、犯罪の数は変わらないという報告も、重大な犯罪を抑え込めるという報告もあります。
死刑制度は人の命を軽く考える極悪人を処罰でき、犯罪を犯す人を減らせる正義なのか?
もう1度考えさせられる1冊でした。
高野和明さんの『ジェノサイド』もお勧めの1冊ですよ。
https://www.yu-hanami.com/entry/2017/05/04/075108www.yu-hanami.com