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人工知能とは何かを知る『人工知能の経済と未来』 井上智洋

人工知能の経済と未来

著者:井上智
出版社:文藝春秋
ジャンル:政治、経済


人工知能!知らない分野に触れてみる


最近本屋さんの平積みで目にする機会の増えた「人工知能」に関する本。

人工知能というと、妄想力豊かな私はついSFのような世界を思い浮かべてしまいます。

技術的なことが書かれた専門書は、難解な古文書のように思えてしまいますよね。

そこで、井上智洋さんという経済分野の専門家の書かれた人工知能が世の中にどのような影響を与えるかをテーマにした1冊を紹介しますね。


井上智洋さんの紹介

略歴

著者の井上智洋さんは、人工知能開発の専門家ではなく経済学の専門家で現在は駒澤大学経済学部で准教授をされています。

経済学の視点で人工知能が今の経済に与える影響を研究されている第1人者として、日本の人工知能開発の研究会にも携わっているようです。


他の本の紹介

『ヘリコプターマネー』

ヘリコプターマネーは、タイトルから想像できる通り、人々にお金をバラまくことでデフレを解消しようというお話。

もちろん、本当にお札の束をヘリコプターからバラまくようなことはありませんよ。

今回の『人工知能の経済と未来』で訪れる世の中でベーシックインカムという対策が必要になると井上智洋さんは言われています。

デフレ対策にも期待できるベーシックインカムを詳しく掘り下げた信頼性のある1冊です。


『人工超知能-生命と機械の間にあるもの』

こちらは、『人工知能の経済と未来』の中でも取り上げられる人工知能の進化について書かれています。

人工知能は反乱を起こすのか?といったSFのような例えが興味を引く1冊です。

人工知能の経済と未来』構成と読みやすさ

本の構成

はじめに p3〜
第1章 人類vs.機械 p17〜
第2章 人工知能はどのように進化するか? p59〜
第3章 イノベーション・経済成長・技術的失業 p101〜
第4章 第二の大分岐ー第四次産業革命後の経済 p147〜
第5章 なぜ人工知能ベーシックインカムが必要なのか? p201〜
おわりに p236〜
注 p245〜

人工知能の経済と未来』は、第1章が人工知能の最近の話題に触れる序論。

第2章からが本論になるよう書かれています。

第2章で今後の人工知能の進化、第3章では人工知能が今の経済に与える影響を取り上げています。

最後の第4章が人工知能によって変わる世の中の予想、そして第5章が人工知能によって変わった世の中でどのような暮らしがいいのか、井上智洋さんの考えるベーシックインカムの導入のお話になります。


読みやすさ

人工知能の経済と未来』は、コンピュータや経済に疎いわたしには難しい内容でした。

コンピュータ用語、経済用語が多く、どちらかの分野が身近な方でも片方の分野は難しく感じることと思います。

おおよそ30ページに1つのグラフや図解があることは、知らない分野を理解する上で助けになります。




知っておきたい6つの人工知能の用語

人工知能(Artifcal Intelligence,AI)

人工知能」(Artifcal Intelligence,AI)というのは、知的な作業をするソフトウェアのことで、コンピュータ上で作動します。
最も身近な人工知能として、iPhoneなどで使わられる音声操作アプリ「Siri」があります。
中略)
AIは、パソコンやスマートフォンで利用されるだけではなく、ロボットの制御にも使われます。
高度なロボットには、AIが搭載されたコンピュータが組み込まれているわけです。
この場合、ロボットが身体部分を担当し、AIが頭脳部分を担当していると考えれば分かりやすいでしょう。
あるいは、ロボットが「ハードウェア」で、AIが「ソフトウェア」だと思ってもらっても構いません。
第1章 人類vs.機械 p20〜

人工知能の定義は、私でも大丈夫そうです。

人工知能WindowsmacOSなどのOSで、ロボットがパソコン。

人間の魂や精神など形のないものと、形のある脳や心臓などの臓器がロボットということになるんですね。


汎用AI

先進的なAI研究者が言語の壁を乗り越えた先に夢見ているのは「汎用型人工知能」(汎用AI)の実現です。
「汎用AI」は、人間に可能な知的な振る舞いを一通りこなすことのできるAIです。
もう少し正確にいうと、それは必ずしも人間と同じように振る舞う必要はありません。
汎用AIは、あらゆる課題・目的に対応できるようなAIです。
第2章 人工知能はどのように進化するか? p77〜

「汎用型人工知能」(汎用AI)、名前の通り人間の代わりをこなすことができる人工知能ということになりますね。

機械らしいなぁと思うことは、「あらゆる課題、目的に対応できる」とあります。

人工知能といっても、機械、汎用AI自身が「なにかを楽しむ」ためではなく、あくまで「目的に対応する」ことに重きがおかれているようですね。


特化型AI

今、世の中に存在するAIは全て「特化型人工知能」(特化型AI)です。
Siriは音声でiPhoneなどを操作する目的に特化したAIで、1997年にチェスのチャンピオンを打ち破ったプログラム「ディープ・ブルー」はチェスに特化したaです。
第2章 人工知能はどのように進化するか? p77〜

「特化型人工知能」(特化型AI)は、私たちが今目にしている人工知能なんですね。

少し細かいですが、気になったことがあります。

仕事や日常の中でも、「Aさんはプレゼンに特化しているね〜」と言われると、プレゼンが得意な人という印象を受けますよね。

ですが、Aさんはプレゼンは得意ですが、事務仕事が全くできないことはないでしょう。

AIの場合には、例えば音声認識の特化型AIといわれれば、他のことはできないAIということになるようですね。


マインド・アップローディング

「マインド・アップローディング」は、カーツワイルが取り上げている技術の中でもとりわけSFめいたものです。
これは、人間の意識をコンピュータに移し入れるというようなことです。
中略)
人間の脳内には、約1000億個のニューロン(神経細胞)があり、ニューロン同士約100兆個のシナプスによって接続されたシグナルを伝達し合っています。
このような複雑な人間の神経系全てをスキャンすることは物理的に相当困難でしょうが、原理的に不可能ではありません。
そのようにして、コンピュータ上に人間の脳とそっくりなソフトウェアを再現する技術は、「全脳エミュレーション」と呼ばれています。
第1章 人類vs.機械 p50〜

全脳アーキテクチャは、全脳エミュレーションとは違って、「ヒト・コネクトーム」を手に入れることよりも、脳の機能を再現することに重きが置かれています。
海馬や基底核、新皮質などの脳の各部位毎の機能をプログラムとして再現し、結合する方法をとります。
中略)
全脳アーキテクチャは、汎用AIを目指す試みとして、全脳エミュレーションよりも有力だと思われます。
なぜなら、1000億個のニューロンや100兆のシナプスを丸ごと再現する途方もない企てよりも、脳の各部位毎の機能をプログラムで再現して、結合するやり方の方が手取り早く現実的だからです。
第2章 人工知能はどのように進化するか? p81〜

章が進むにつれて難しい言葉も増えてきますが、人工知能の話題では欠かせない用語のようです。

「全脳エミュレーション」は、人間の脳をそっくりコンピュータの中にコピーしてしまおうという技術です。

もし、可能になれば映画のようにコンピュータの中でもう1人の自分が存在するようになるようですね。

もう1つの「全脳アーキテクチャ」の方が現実的といわれています。

こちらは、脳のそれぞれの働きを別々に開発してくっつけてしまおうという試みです。

現実に自動運転では人間の視覚、見ることの仕組みが応用されています。

スマホ音声認識アプリでは、言葉を理解する仕組みが応用されていますね。
もうすでにいくつかが開発されて、身近にあるためか現実感はありますよね。


言語の壁

言語は人間に特有の高度な道具であって、AIが言語を使いこなすにはいくつかの困難が伴います。
中略)
「自由」とは「自分の意のままに振る舞うことができること」(大辞泉)であるというように辞書的な意味をAIにおぼえこませることはそれほど難しくありません。
しかし、そのように古典的なAIのアプローチでは「自由」という言葉の意味をAIが獲得したことにはならないし、それゆてにこの言葉を自在に使いこなせるようにはなりません。
第2章 人工知能はどのように進化するか? p75〜

人間の考える力と人工知能の考える力の違いには、この「言葉の壁」というものがあります。

AIは単語の意味を理解する力は既にあるようです。

それでも私たち人間が日常で使う、「広い意味」を持つ言葉を理解するのは難しいといわれています。


生命の壁

前章でも述べましたが、「大部分の知性」と「全ての知性」では天と地ほどの開きがあります。
その開きの理由を一言でまとめると、「生命の壁」が立ちはだかっているからです。
AIが生きた生命である人間の知能ではないことから生じるディスアドバンテージが存在するということです。
人工知能と自然知能の差が埋まらない」と言い表すこともできます。
「自然知能」とは進化の長い過程の末に現れた私たち自身の知能のことです。
中略)
私たちの知性は、私たちの持つ無数の欲望や感性と結びついているからです。
人間の心に潜む欲望や感性の全てを取り出すことは、現在の技術ではできません。
人間の欲望は、食欲や性欲など生存や繁殖に関わるものに限定されておらず、自殺願望や破滅願望をも含んでおり多方向的です。
感性にしても、そよ風が頬を撫でたら心地いいが、強風が吹き付けたら不快であるというように、繊細かつ複雑です。
私が考える「生命の壁」というのは、全脳アーキテクチャ方式の汎用AIは生命ではないので、人間が与えた範囲でしか欲望や感性を持ち得ないということを意味します。
第2章 人工知能はどのように進化するか? p88〜

例えば私たちはマッサージを受けて、「少し痛い」ですが、それが「気持ちいい」と感じてマッサージを受けます。

これは、人間が生身の体を持ち、感覚と気持ちを結びつけることができているからといわれています。

AIがもし、機械の体を持ってマッサージを受けると「強さが平均値を超えています、少し痛いですよ」と客観的過ぎて単純な判断になってしまうのでしょうね。

また、井上智洋さんは「AIは将棋盤をひっくり返すのか?」という部分でも、AIと人間の考え方の違いについて触れています。

やはり生身の体を持たないAIが、人間的な考え方を持つのはずっと先になりそうですね。

* 『人工知能の経済と未来』がタメになる3つの理由

訪れる未来を「知っておく」

人工知能は多くの人が興味を引く話題ですが、具体的にどのような技術なのか?といわれると難しいですよね。

人工知能によって仕事がなくなる」といわれても、レジが無人化するくらいしか思いつきません。

人工知能がどのように進化しているのか?なぜ仕事がなくなるのかを「知っておく」ためには実用的な部分はあると思います。

すぐに明日から何かに取り組める実用性は、私のように身近ではない方には少ないのかもしれません。


著者は専門的な視点で暮らしへの具体的な影響を研究

井上智洋さんは人工知能開発の専門家ではありませんが、人工知能がどのように世の中に影響するのかを研究されている経済の専門家。

人工知能の技術の進歩のみではなく、私たちの暮らしへの影響を予想されている内容は十分に信頼性があると思いますよ。


興味のある章から読み始めると読みやすい

人工知能の経済と未来』は身近ではない方には「少し難しい」と思う読みやすさです。

人工知能を知りたい方は第1章と第2章を、経済への影響を知りたい方は第3章と第4章を、結論から知りたい方ははじめにを読んだ後に第5章から読んでみてはいかがでしょうか?

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