ゼロからはじめる力〜空想を現実化する僕らの方法
著者 堀江貴文(ホリエモン)
出版社 SBクリエイティブ株式会社
分類 ビジネス書、一般教養・雑学
出版日 2020年4月15日
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
今日は、衝動買いしてしまった本を紹介させていただきます。
ビジネス書を取り上げさせていただく機会の多い、ホリエモンこと堀江貴文さんのロケットと宇宙産業にかける思いが込められた1冊です。
ホリエモンこと堀江貴文さん
ビジネスマンとしての堀江貴文さんは、テレビやインターネットの世界で知らない人がいないほどの有名人です。
そして、最近では宇宙産業の分野でも注目されている1人でもあります。
ホリエモンのロケットにまつわる経歴
堀江貴文さんがロケット開発を志したのは、ライブドア事件が起こる少し前の2005年のことです。
その後のライブドア事件は、2006年1月に証券取引法違反で堀江貴文さん自身が逮捕され、2013年3月に刑務所を出るまで7年間も続いた大きな出来事でした。
裁判が続く中でも、「なつのロケット団」とホリエモン自身が呼んでいる小さな会社を立ち上げ、ロケットの研究を続けます。
そしてライブドア事件の終わりを告げたのうに、2013年2月にインターステラテクノロジズ株式会社が設立され、2019年5月4日に北海道大樹町の空を超え、日本の民間企業としては初めてのロケットMOMOは宇宙に旅立ちました。
インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.
ホリエモンの本
テーマは、「働き方」や「日本経済」を斬新な考えで改革していきたいという強い思いが込められています。
最新刊の『東京改造計画』は、「経済」「教育・社会保障」「コロナ対策」「都政」「未来の生き方」をテーマに、今までの日本社会を改革しようという強いメッセージが込められた1冊。
「満員電車の値上げ」「学校解体」など、物議を起こすアイデアも、私は1つの方法ではないかと思います。
多動力は、ホリエモンの仕事への向き合い方をテーマにした1冊。
出版されて間もない頃は、今までの日本離れした取り組みに賛否が起こっていましたが、オンライン社会に向かう令和の時代には、ホリエモンの考え方が当たり前になるのかもしれませんね。
『時間革命』は、個人の時間を1秒でも無駄にしたいというホリエモンの時間哲学が込められた1冊。
「報告だけの会議なら辞めてしまおう」という呼びかけも、アフターコロナの世界ではうなづける考え方ですよね。
『ゼロからはじめる力〜空想を現実化する僕らの方法』の構成と読みやすさ
『ゼロからはじめる力〜空想を現実化する僕らの方法』は、宇宙を目指して集まったインターステラテクノロジズ株式会社(IST)の成り立ちから、MOMOの打ち上げまでの歴史が込められた1冊です。
ロケットの未来を語り尽くす5つの章
・はじめに p4〜p8
・第1章 なぜ、僕は宇宙を目指すのか〜ISTはただしいことしかしない p11〜p60
・第2章 ゼロから始めたロケット打ち上げへの道〜やりたいことがあれば、経験は関係ない p61〜p90
・第3章 MOMOとZERO、僕らのロケットが目指すところ〜宇宙に行かなきゃ意味がない p91〜p136
・第4章 自動車産業の次に日本を支えるのは宇宙産業しかない p137〜p182
・第5章 日本は宇宙産業で世界を取れるのか p183〜p217
・あとがき p218〜p220
『ゼロからはじめる力〜空想を現実化する僕らの方法』は、シンプルな5章構成。
ぜひ、1章から読み進めてほしいと思います。
ホリエモンがロケットを打ち上げたい理由
インターネット市場のライブドアで成功したホリエモンは、なぜロケットを作り宇宙を目指すことにしたのでしょう?
本の中では、「宇宙への憧れ」「実用的なロケットの開発」「ビジネスとしての宇宙産業」の目線で語られています。
宇宙への憧れ
子どもの頃、家にあった百科事典を読んで宇宙に憧れてから、もう30年以上が立った。本気で「ロケットを作って飛ばそう」と考え、動き出してからも14年かかった。でも、まだまだ始まったばかりだ。地球を離れて太陽系を探検したいし、もっと遠くへ、恒星間空間へと行ってみたい。だから社名に「インターテスラ(Interstellar)」と入れた。
・はじめに p4〜p5
ホリエモンは、何で急にロケット打ち上げを始めたの?
ニュースでは、打ち上げのシーンとホリエモンのインタビューが取り上げられ、「最近すぐにはじめた」ように思えてしまいます。
実は、ホリエモンがインターテスラ(IST:Interstellar)の元になる団体を作りはじめたのは「ライブドア事件」が起こる前のことでした。
当初ライブドアのCEOだったホリエモンは、宇宙を舞台にしたアニメーションの企画で宇宙好きの漫画家と出会います。
その後は、ロシアの中古エンジンの購入を試みたり、民間ロケット企業への資金提供を試みましたがうまくはいきません。
その後、ホリエモンはライブドア事件で身柄を拘束されてしまいます。
ですが、1度火がついたロケットのようなホリエモンは止まりません。
保釈されてすぐ、ロケットエンジンの部品を作ってくれる企業を探しはじめ、別荘をエンジンの燃焼試験場にしたりと、ノウハウを積み立てていきます。
裁判でホリエモンの有罪が決まり刑務所で過ごしている間も、彼の蒔いたロケットの種は根を張り枝を伸ばし続けていました。
そして、時は流れ2019年5月4日5時45分、MOMO3号機は高度113kmの宇宙空間に到達することになります。
2020年6月現在、最新のMOMO5号機が北海道大樹町で打ち上げを待っています。
参照: ・第3章 MOMOとZERO、僕らのロケットが目指すところ〜宇宙に行かなきゃ意味がない p91〜p136
安いロケットが宇宙を身近にする
宇宙でビジネスを行うためには、人や物資を宇宙に運ばなければならない。どんなに高性能な人工衛星を作ったとしても、ロケットで宇宙空間まで持っていかなければ、意味がない。
したがって、今後の宇宙産業の発展のためには、宇宙空間への「輸送」を低価格かつ安全に行わなければならない。
・第1章 なぜ、僕は宇宙を目指すのか〜ISTはただしいことしかしない p30〜p31
インターテスラ(IST:Interstellar)のMOMOの打ち上げ費用は5000万円。
同じ大きさのロケット1回の打ち上げに数億円かかる他の企業に比べて、1桁も安い。
ホリエモンの宇宙開発企業ISTが開発したMOMOは、市販の部品を利用したり、移動や保管の費用を抑えることで、驚くほど「安い」ロケットに仕上がりました。
なぜ、NASAやJAXAの専門家ではないホリエモンが「安い」ロケットを打ち上げることができるのでしょう?
それは、「専門家ではない」というメリットがありました。
ホリエモンの経歴は、ご存知のようにビジネスマンです。
ビジネスマンならではの目線で注目したことが3つあります。
①肩書きよりも経歴
②品質保証よりも実用性
③過去よりも現実
ホリエモンはISTの人材を集めるときに、その人が「何をしたか」にこだわりました。
IST初代社長の牧野一憲さんは、「着うた」を開発した計算が専門のエンジニア。
IST現社長の稲川貴大さんは、ISTに入った頃は、ボランティアに来ていた大学生だった。
NASA出身やJAXAの○○担当といった肩書きの人よりも、他の分野で成功した人、ボランティアの実績のある大学生のように、「何をしたか」の経歴を大切に人を集めていました。
もう1つは、ロケットの部品や材料選びで、ここが大きなコストダウンにつながっているとホリエモンは語ります。
NASAやJAXAのような国の関連機関や大企業では、試験をいくつもクリアした「品質保証」が求められます。
ですが、ホリエモンが求めたのは「同じ性能」のある市販品。
試験や品質保証の手続きがない分、価格は安くなります。
そして、「出来るだけ赤道に近く」にこだわった過去の打ち上げ場所ではなく、「工場から近く」「とにかく周りに何もない」場所を選びました。
それが、北海道の大樹町です。
手軽に利用できるロケットこそ実用的
大切なのは多数の人たちがロケットを使うことでわこれまでは思ってもいなかった新しい使い道が開拓されるということだ。山は高いほどに裾野は広い。安いといことを武器にして、僕らは宇宙利用の裾野を広げようとしているのである。
・第3章 MOMOとZERO、僕らのロケットが目指すところ〜宇宙に行かなきゃ意味がない p120〜p121
ロケットが安くなると、「多くの人」が「手軽に」ロケットを利用できるとホリエモンは言います。
NASAやJAXAのような国の関連機関や大企業のロケット打ち上げが高い理由は、先程の3つの理由のためです。
それは、「失敗」することができない事業だから、コストをかけても「確実」に打ち上がる高性能のロケットを作り、多くの専門家を集めています。
一方、ホリエモンはとにかく「安い」ロケットを「多く」打ち上げることで、1回の打ち上げコストを下げようとしていました。
①安いロケットを打ち上げる
↓
②利用する企業が増える
↓
③次の開発費用が増える
↓
④さらにロケットが安くなる
↓
⑤手軽に利用できる
ロケットの打ち上げ費用がテレビのCM並みのコストなら、「ちょっと宣伝のため」に手軽にロケットを利用する企業も増えるかもしれません。
宇宙産業の発展は何をもたらすのか?
宇宙産業の発展が日本の雇用を救う。
ホリエモンは、ISTのMOMOとZEROをロケット打ち上げビジネスとして成功させることは、日本のこれからの雇用を救うことにつながると確信しています。
理由は、日本経済を支える自動車産業の未来にありました。
経済に詳しい方はご存知のように、これからの自動車には「自動運転」の性能が求められています。
この自動運転に合った動力は、ガソリンで動くエンジンではなく、電気で動くモーターといわれています。
もちろん日本の自動車メーカーは、モーターの開発を真剣に取り組んでいます。
日本の自動車メーカーは、自動運転とモーターを実用化して素晴らしい自動車を作ったとしましょう。
自動車メーカーのような大企業は生き残りますが、今までエンジンを作っていた下請け企業は………。
エンジンを作っていた技術は、ロケットのエンジンにも応用できるとホリエモンはいいます。
新しい宇宙産業へ乗り込むことで、自動車から宇宙へと「ものづくり」の技術を発展させ、そこで働く多くの人の雇用を救うことになるわけです。