人工知能の経済と未来
前回に引き続き、人工知能の進化の先に訪れる未来。
世の中で話題になっているように、私たちの仕事は人工知能に奪われてしまうのでしょうか?
人工知能を知るために『人工知能の経済と未来』を読んでおく
慣れない分野の方にとって、コンピュータ用語や経済学の用語が難しい『人工知能の経済と未来』。
ですが、人工知能の進化で訪れる未来を「知っておくこと」としては実用的な1冊です。
経済の専門家でもある井上智洋さんが書かれていることも、人工知能が未来与える影響について信頼性のある情報が書かれています。
ですが、慣れない分野は読むのに難しいなぁと感じるものです。
そこで、人工知能を知りたい方は第1章と第2章。
人工知能の経済への影響を知りたい方は第3章と第4章から。
結論から知りたい方は、はじめにを読んだ後に第5章から読むといった、「飛ばし読み」をお勧めしますよ。
知っておきたい3つの経済用語
前回は、6つの人工知能の用語を取り上げてみました。
人工知能の進化で起こる経済への影響を知るためには、第三次産業革命、第四次産業革命、技術的失業の3つの経済用語がポイントです。
第三次産業革命
とりわけ1995年は、初めて広く家庭に普及したパソコンのオペレーティング・システム(OS、基本ソフトウェア)であるWindows95が発売されたシンボリックな年です。
このOSの普及に伴ってインタネーットが普及したので、1995年は一般に「インターネット元年」と呼ばれています。
ここでは、この象徴的な年を第三次産業革命の起点としておきましょう。
第3章 イノベーション・経済成長・技術的失業 p121〜
井上智洋さんによると、今はまだこの「第三次産業革命」の中にあるようです。
インターネットが発展してから、まだ20年くらいしか経っていません。
20年前から、現代へほんの少しタイムスリップするだけで、Amazonやメルカリはありますし、仮想通貨もある現代。
きっと、経済のあり方が全く変わってしまった世の中に感じるのでしょう。
第四次産業革命
第四次産業革命の開始時期は、2030年頃になるでしょう。
例えば、経済産業省は、日本で第四次産業革命が実現する目安を2030年としています。
1995年に始まる第三次産業革命がそれ以前から準備されていたように、第四次産業革命も現在準備が進行中であると考えられます。
中略)
第四次産業革命で鍵となる技術らすなわち汎用目的技術(General Propose Technology,GPT)の候補としては、AIや「モノのインターネット」(IoT)、3Dプリンターが挙げられます。
第4章 第二の大分岐ー第四次産業革命後の経済 p147〜
第四次産業革命は、まさにこれから起ころうとしている産業革命です。
人工知能の中でも、汎用的AIの開発に成功した国から第四次産業革命が起こり、世界の中心になるといわれています。
GoogleやMicrosoft、AppleなどのIT大企業のあるアメリカが有利といわれていますが、日本にもまだ可能性は高いようですよ。
技術的失業
「技術的失業」(テクノロジー失業)というのは経済学の用語で、新しい技術の導入がもたらす失業を意味しています。
技術的失業は「銀行にATMが導入されて、窓口係が必要なくなり職を失う」とか「音楽のダウンロード販売の普及によって、街角のCD販売店が廃業に追い込まれ従業員が職を失う」といったような失業のことです。
第1章 人類vs.機械 p26〜
この言葉を知ることは、『人工知能の経済と未来』の後半の内容を読み進めるために最も大切になります。
人間の仕事の代わりをこなせる人工知能が普及すると、人間が行なっていた仕事がなくなってしまい失業者が増えてしまうことが予想されています。
この技術的失業が起こりやすい仕事と起こりにくい仕事もあるようですね。
技術的失業の起こりにくい仕事には、芸術や発明、事業の企画などゼロから何かを作り出すクリエイティブ系。
会社の運営や事業の管理をする、マネージメント系。
人の繊細な部分と接する看護師や保育士など、ホスピタリティ系の仕事があるようです。
このクリエイティブ系、マネージメント系、ホスピタリティ系の仕事が失業しにくい理由、それは人間人工知能に優っている部分が大きいからといわれています。
それは、人工知能では前例のない不測の事態に対処できないことといわれています。
人工知能の活躍する未来で私たちはどう暮らすのか?
人工知能が活躍する未来で、私たちはどのように暮らせばいいのでしょうか?
働かない、働けない未来は来るのか?
機械が人々の雇用を順調に奪っていくと、今から30年後の2045年くらいには、全人口の1割ほどしか労働していない社会になっているかもしれません。
中略)
1割ほどしか労働してきないという予想は、私が想定する中でも極端に悲観的(あるいはAI研究者の立場からすれば楽観的)なものですが、議論を進める上での目安にはなるかと思います。
第4章 第二の大分岐ー第四次産業革命後の経済 p167〜
人工知能が進化した未来、人口の1割しか働いていない社会、なかなか想像できませんね。
この1割というのは、仕事だけで生計を立てれる程度の収入がある人の割合のようです。
残りの9割の方は、仕事だけでは十分な収入が得られないといわれています。
これは、井上智洋さんだけではなく海外の権威ある学者さんもいわれていることです。
2045年頃には働いている人は12.5%といっていますので、信頼性のある予想なのではないでしょうか?
資本主義社会は崩壊するのか?
第1章で、資本主義を「労働者が機械を使って商品を生産するような経済」と定義しました。
純機械化経済に至ると、労働者が機械を使うのではなく、機械が労働者のハンドリングなしに自ら生産を行うようになります。
そういう意味では、資本主義は消滅すふとも言えます。
中略)
2045年の時未来では、ロボットが商品を作る工場があり、それを所有ふる資本家のみが所得を得て、労働者は所得を得られないかもしれません。
中略)
AI・ロボットに対する需要が増大するにつれて、それを所有する資本家の所得も増大していきます。
一方、人間の労働需要が減少していくにつれて労働者の所得は減少していき、ゼロに近づいていきます。
中略)
そうなると、2045年の時点で勝利の凱歌を掲げているのは資本家ということになります。
かつてマルケスとエンゲルスは、労働者階級が革命によって資本家階級に勝利することで、資本主義が終焉するという未来を展望しましたが、このままいくとそれとは逆のことが起きます。
労働者階級は賃金が得られなくなることにより消滅し、資本家階級が全てを手にすることで資本主義が終焉します。
第4章 第二の大分岐ー第四次産業革命後の経済 p192〜
経済の分野には疎い私ですが、資本主義は資産のある「資本家」が資産のない「労働者」に仕事を割り振り稼ぎを出すことで成り立っています。
人工知能が普及することで労働者はいなくなり、資本家と労働者の関係がなくなることで現在の資本主義の仕組みはなくなってしまうといわれています。
ベーシックインカム(BI)が必要な理由
純機械化経済では、BIの実施は一層容易になります。
そこに至ると、年々成長率が上昇していくような爆発的な経済成長が成されるので、得られる税金も爆発的に増えていきます。
BIの財源に頭を悩ますことがバカらしくなるほどの税額が得られるようになるでしょう。
税額の増大に合わせて給付額を増やしていくこともできます。
月7万円などというしみったれた額に留めておく必要はありません。
もし、所得の一定率、例えば25%をBIにあてるというルールを採用した場合、経済成長率と同じような率でBIの額は増大していくことになります。
中略)
BIなきAIはディストピアをもたらします。
しかし、BIのあるAIはユートピアをもたらすことになるでしょう。
第5章 なぜ人工知能にベーシックインカムが必要なのか? p233〜
汎用的AIが普及して、人間の仕事のほとんどを機械が行う世の中。
そこでは、多くの人が技術的失業にあい仕事を失います。
人工知能の進化した未来では、人口の1割しか働けなくなる社会になります。
経営者と労働者で成り立っている資本主義は、なくなってしまいます。
それでは、私たちのような労働者は飢え死にしてしまうのでしょうか?
井上智洋さんは、そうならないと予想しています。
その方法がベーシックインカム(BI)。
ベーシックインカムは、国や行政が一定の収入を保証するというものです。
具体的には、成人になるなど一定の段階で資本家の持つ株式や債券などを全員に与えて収入を保証するようですね。
そのためには、まず日本が汎用AIの先進国になり第四次産業革命の中心になっている必要があるようです。
人工知能が運用される未来のために知っておかなければならないこと
人間の代わりをこなす汎用型人工知能(汎用AI)が開発されて、今のように働いて収入を得る世の中ではなくなること、これは現実に起こる出来事なのではないでしょうか?
人工知能の開発者でもなく、資産を運用する資本家でもない私。
読んでくださっている方のほとんども身近ではない話題なのではないでしょうか?
実際には関わらない部分ですが、1つだけできること、それは「知っておく」ことだと思います。
これから起こりそうなことを、せめて「知っておく」だけで、気持ちだけでも準備することにつながるのではないでしょうか?