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ツナグ 辻村深月 想いは、伝えられる環境のうちに伝えたい

ツナグ 辻村深月

著者 辻村深月
出版社 新潮文庫
分類 ファンタジー小説、エンタメ小説
出版日 2010/10/29
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい


今回はベストセラー作家の辻村深月さんの代表作『ツナグ』を取り上げます。

2012年に松坂桃季さん主演で映画化されたので、小説を読んだことのない方にも知っている方は多いと思います。

映画では、樹木季林さんがおばあさん役を、桐谷美玲さんと橋本愛さんが女子高生役を務めていました。

主役の渋谷歩美役の松坂桃季さんは『ツナグ』で日本アカデミー賞も受賞していましたね。

ツナグ役割とつながれる希望の人物たち

渋谷歩美

映画では、松坂桃季さんが演じた渋谷歩美がツナグの主人公。

生きた人と死んだ人、会うことのできたい関係を文字通り「ツナグ」使者(ししゃ)の見習い中の高校2年生。


渋谷アイ子

渋谷歩美の祖母で現役の使者。

樹木季林さんは、本来の年齢のためか体も元気そうですが、物語の中の渋谷アイコはもう少し「おばあさん」といった印象を受けます。


嵐美砂

映画、小説ともに「ツナグ」の中で見どころの1つが渋谷歩美の同級生が登場するお話です。

渋谷歩美と同じ高校に通う嵐美砂、交通事故で亡くなった同級生、演劇部のライバル御園奈津に会うために渋谷歩美と出会う。



小説『ツナグ』はより繊細


小説の『ツナグ』では、映画版では取り上げられていないシーンも多くあります。

行方不明になった恋人、日向キラリと再会を望む営業マン土谷功一の物語「待ち人の心得」。

映画では待つ側の土谷の気持ちが染み込んできそうなほど表現されていました。

さらに小説では、待たせる側のキラリ側の気持ちも汲み取って描かれていましたよ。

私は土谷功一と日向キラリの物語が好きなので、映画でももっと良いシーンになる場面が多いのになぁと思いました。

そこは、映画なので仕方ありませんか。



『ツナグ』のテーマは「伝える」こと


『ツナグ』のテーマは、想いは「伝えられる環境」ウチに伝えようということではないでしょうか?

物語で主人公の渋谷歩美が高校生をしながら取り組むツナグ、残された者と行ってしまった者を再び回り合わせる能力のある者です。

物語の中では、残された者と行ってしまった者両方が再び回り合うことで現実では伝えきれなかった思いを伝えることができています。

現実にありそうですが、公には起こらないことですよね。

本当なら、「生きている間に伝えておかなきゃならなかった」こと、「伝える環境が突然なくなってしまった」ことです。



「伝えない」と「伝わらない」


やはり想いは言葉や行動で実際に相手に伝えなければ、伝わらないものです。

「きっとわかってる」は、言葉を変えれば「伝えたつもりになっている」ことでしょう。

自分目線でしかなくて、相手に伝わっているかは相手しかわからないんですね。

実際に会える、生きているような「伝えられる環境」が突然なくなることは現実には必ず起こりますよね。

そして、後悔もします。

そうなると知っているのに………。

そんな時、ツナグが居てくれたら希望にもなりますよね。

辻村深月さんの『ツナグ』では、その後悔を登場人物たちの目線で体験させてくれました。

登場人物たちが、会えなくなった相手と再会したい立場も親子、恋人、友人とそれぞれ違います。

読み手によって、自分に近い登場人物たちの目線で物語に入っていける辻村深月さんの仕掛けなのでしょうね。

想いは「伝えられる環境」ウチに伝えよう、後悔しないために。

物語を楽しめて、現実のタメになる経験もできる辻村深月さんの『ツナグ』、絶賛です。




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