読書の秋におすすめの小説
読書の秋におすすめの本の紹介。
第8回は、花水(hanami)らしく暖かな物語と登場人物の素敵な作品を選ばせていただきました。
人のつながりを知りたくなる4冊の小説で、暖かさを感じてみてはいかがでしょう?
この秋、読みたくなる1冊が見つかりますように。
暖かな物語と登場人物
残暑が続く中、ふと横から視線に飛び込んでくるような午後の陽射し。
日が傾いてきたことに気がつき、秋が始まってきたことを教えてくれます。
コロナ禍は、かつてあった人と人の深いつながりを、簡単に自粛できるほどのものにしてしまったように感じます。
ただ、はっきりと見えないだけで、人のつながりは変わらずそこにあるはず。
今回のテーマは、「人のつながりを知りたくなる」作品です。
暖かなストーリーと不器用な登場人物に惹かれる作品を選んでみましたよ。
人のつながりを知りたくなる4冊の小説
今回は、ほっこりする小説を描かれる山本甲士さん、坂木司さん。
シリアスな舞台設定の中で、秘めた思いを持つ登場人物が活躍する辻村深月さんの作品。
伏線回収劇が鮮やかな伊坂幸太郎さんの作品を選んでみましたよ。
『迷犬マジック』山本甲士
妻を亡くしてからひとり暮らしを続ける七山高生、メジャーデビューの夢を諦めきれない30代の路上ミュージシャン、変化のない日常を悲観的に思う30代後半の理容師、新卒で就職した大手企業をパワハラで辞め人間関係に行き詰まるアラサーの女性。
彼ら彼女らの元に現れる迷い犬マジックは、時に強引に周りとのつながりを気づかせてくれる。
キッカケがつかめず暮らしの中の交差点で立ち止まっている4人と、迷犬マジックを通じて見つけた「人のつながり」にほっこりする物語ですよ。
『大きな音が聞こえるか』坂木司
坂木司〜日常ミステリーで広がる世界観 - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
主人公 八田泳は、父親が大手企業に勤務する、「そこそこ裕福な家庭」で何気ない日常を過ごす高校1年生。
泳は、唯一打ち込んでいるサーフィンを調べているとアマゾン川を逆流する荒波ポロロッカを乗りこなすサーファーを目にすることに。
自分で見つけた夢のため、ブラジル行きを決意した泳は、旅立ちを決めてから身の回りには様々な人との出会いと別れがあることに気がつくことに。
同じ日々の繰り返しで気がつかなかった日常の幸せを再確認出来きる、「人のつながり」に気がつく物語です。
『ツナグ 想い人の心得』辻村深月
2019年に出版された『ツナグ 想い人の心得』は、辻村深月さんの名作『ツナグ』の7年後を描いた物語。
亡くなった人と残された人を引き合わせる使者(ししゃ)、高校生の頃に祖母から役割を引き継いだ渋谷歩美。
会社員になり、人知れず使者の仕事を続ける歩美の元を訪れる人々の伝えきれなかった思いとは……。
「人のつながり」に涙する名作なのは、間違いありませんよ。
『クジラアタマの王様』伊坂幸太郎
伊坂幸太郎~伏線回収とストーリーのリンクが見せる伊坂ワールド - 本当に本が読みたくなる読書のブログ
製菓会社に勤務する主人公の岸は、商品の異物混入事故の対応に追われる中、内容がうろ覚えの夢を忘れられずにいた。
事故対応の中、知り合った2人もまた、夢の中の出来事が現実世界に影響を及ぼしているのではと疑問を抱きながら暮らしていた。
3人の登場人物が夢と現実の関係を紐解くストーリーは、伊坂幸太郎さんの伏線回収の演出が楽しめる物語。
ミステリ小説とSFミステリ小説のちょうど中間を行き来する素敵な作品でしたよ。
気がつかないほど自然なことが幸せなのかもしれない
4つの小説全て、「人のつながりを知りたくなる」素敵な作品です。
選ぶ方にとって、登場人物の目線で飛び込めた世界が、読者さんにとってのおすすめの作品のはずです。
花水(hanami)は、気がつかないほど自然なことが幸せなのかもしれないと思えた坂木司さんの『大きな音が聞こえるか』が特におすすめですよ。