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子どもたちと向き合ったお坊さんに学ぶ生き方の8つのお手本

どんな命も花と輝け

著者 廣中邦充
出版社 株式会社 宝島社
分類 エッセイ、ノンフィクション
出版日 2013/2/9
読みやすさ ☆☆★


子どもたちを支え続けた「おじさん」、廣中邦充さんの生き方から私たちの生き方の役に立つヒントを取り上げてみますね。

諭してくれるような優しいエッセイ


「やんちゃ和尚」こと、廣中邦充さんをご存知でしょうか?

親子関係や不登校、非行で悩み自宅で過ごせなくなった子どもたちと向き合った1人の優しい「おじさん」。

20年以上、子どもたちを支えた「おじさん」は、ある日余命宣告を受けることになりました。

お坊さんでもある廣中さんが、ご自身の命と生き方を綴られた1冊が『どんな命も花と輝け』。

優しく諭してくれるような、話し言葉で書かれたノンフィクション・エッセイです。



生き方の8つのお手本

根本的には生きている限り苦が生じますから、まとめてしまえば「生きる苦しみ」の中にすべての苦しみが詰まっています。その苦しみを大きくいくつかに分けてみると、この「四苦八苦」になるというふうにご理解ください。
では、これらの苦しみを乗り越えていくためにどうすればいいのでしょうか?
そこには、「八正道(はっしょうどう)」という教えがあります。
かいつまんでいうと、お釈迦様の「正しくものを見て、その苦しみを乗り越えていこう」という教えですね。
※以下一部抜粋
第1章「生」 p30〜p31

「生きることは苦しいこと」

仏教の考え方をテーマにした本には、必ずといっていいほど書かれています。

そして、生きる苦しさを減らすための方法も書かれています。

「八正道(はっしょうどう)」

廣中さんの本でも、8つのお手本に沿って生き方のエピソードが紹介されています。


正しくものごとを見る〜正見(しょうけん)

生き方の8つのお手本、八正道で欠かせないことが、1つ目の正しいものごとの見方 正見です。

正しいというのは、偏見や思い込みなく正確に受け止めるということです。

「嘘つき政治家の言っていることだから」
「嫌いな人がやっていることだから」

こういった、自分の価値観を通してではなく「ありのまま」を受け止めることなんですね。


正しく考え判断する〜正思惟(しょうしゆい)

初めてガン治療で入院された廣中さんは、病室で1人不安に悩まされる日々が続きます。

不安な日々が続く中、お寺で行なっていた習慣、「念仏」を小さな声で繰り返して不安を克服されたエピソードがあります。

病室といっても、誰でも出入りできるお部屋だったそうです。

それでも、奥さんに息子さん、多くの子どもたちと暮らしていた廣中さんのとっては1人で過ごす時間が長く感じていました。

病気のこと、今後のこと、やり残したことへの後悔や不安が次々と頭に浮かんでは消えてを繰り返す日々。

現役のお坊さんでもあった廣中さんは、お寺の習慣でもる念仏を始めようと思ったそうです。

というのも、念仏は「あの人を助けてください」「自分を助けてください」と仏様にお願いをする言葉です。

不安を克服するためには、今までの「良い習慣」を続けることが大切と他の本にも書いていました。

お坊さんの廣中さんにとっては、誰かのために祈りを上げる言葉が「良い習慣」だったのでしょう。

廣中さんの浄土宗では「南無阿弥陀」、また廣中さんはキリスト教の「アーメン」やイスラム教の「アラッーフ」も同じような思いが込められているはずといわれています。

繰り返すたびに、朝の回診に来たお医師さんのこと、度々訪れてくれる看護師さんのこと、食事を作ってくれている顔の見えない調理師さんのことが思い浮かんだとあります。

ベテランのお坊さんでもあった廣中さんが取り乱すほど、暮らしの変化は私たちの心に大きく影響します。

普段なら思わないことを思ってしまったり、1つのマイナス思考から抜け出せなくなってしまうほどです。

お念仏やお経は、もちろん宗教によって違いはありますが、何か自分のとって「良い習慣」になっている言葉や取り組みで正しく考えられる頭を取り戻せるようのなりたいものですね。


他人の悪口や嘘をつかず正しい言葉使いをする〜正語(しょうご)

悪口や嘘がいけないのは、小さな子どもでも知っていることです。

ですが、いけないのは知っていても、「なぜ?」かを伝えていたり、実践している大人は多くはないのかもしれません。

仏教の考え方に「因果応報」という教えがあり、良い行動には良い結果、悪い行動には悪い結果につながるというものです。

例えば、誰かの悪口をすると、巡り巡って自分に返ってくることは知られています。

悪口を言った相手から直接返ってこなくても、「悪口を言う人」と思われるだけで、自分が悪口を言われるハードルもぐっと下がります。

今すぐではなくても、上司の悪口を言い続けていた若手社員が昇進したとき、自分が悪口の対象になることは誰でも予想できるもの。

そうならないために、悪口は控えたいものですね。


自分の悪い業を断ち切り、正しい行いをする〜正業(しょうごう)

正業(しょうごう)は、正しい行動をしましょうという考え方です。

この正しい行動は、法律や制度に合わせることとは少し違います。

正しい行いは、相手にとって「いいこと」が目安になると廣中さんも書かれています。

相手にとっては「いいこと」がなにかを知るためには、正しくものごとを見る正見(しょうけん)が欠かせませんね。



与えられたこのいっときいっときを大切にする〜正命(しょうみょう)

命を大切にするということは、健康に気をつけるだけではないようです。

毎日暮らしている「時間」も、命と同じだけの価値があると廣中さんはいいます。

本の中に何度も現れる「一日一生」の教えのように、与えられた時間を大切に生きるようにしたいですね。


正しい行いを積み重ねながら人生を突き進む〜正精進(しょうしょうじん)

八正道も後半になるほど、実践が難しくなりますね。

正精進(しゃうしょうじん)は、正しい行いを積み重ねるというものです。

正見(しょうけん)で正しいものごとの見方をして、正思惟(しょうしゆい)で偏りない考え方をする。

誰かの悪口を控える正語(しょうご)、相手にとって「いいこと」を目安に正業(しょうごう)で正しく行動する。

そして、正命(しょうみょう)では限られた時間を命のように大切にすること。

日々の積み重ね、どこか上手くいかないときには考え方を見直してやりなおしをすることが大切なんですね。


悪いことをしないよう、正しい方に意識を向けて集中する〜正念(しょうねん)

1つ前の正精進(しょうしょうじん)では、取り組みの見直しが大切なポイントでした。

その見直しの目安になるのが、正しい方に意識を向ける正念(しょうねん)です。

正しいことの目安は、相手にとって「いいこと」であるかです。

では、悪いことの目安はその反対です。

悪いこととは、「自分だけが得をする」ことでしょう。

1つ注意しないとならないところは、相手にとっても自分にとっても「いいこと」なら正しいこと。

自分も含めてもいいんです。

ですが、相手にとっては不都合で自分だけが得をすることは悪いことに当てはまります。


心が一つのところに定まり、集中力を高める〜正定(しょうじょう)

8つ目の正定(しょうじょう)、これは難しいですね。

いつも、落ち着いた心でいること。

ここまでできると、きっと穏やかな人生をおくることができそうです。



今の生き方に迷う人へのメッセージ


『どんな命も花と輝け』は、子どもたちを支え続けたお坊さん 廣中邦充さんの生き方が込められた1冊です。


何だか上手くいかない人生と思う方へ

「何だか上手くいかないなぁ」

こう思うことって、誰にでもあると思います。

具体的に見直したいことがわかっている方は、仕事や暮らしについて書かれた実用書を読めば解決することがあります。

ですが、ほとんどの悩みは「どうしていいかわからない」ことではないでしょうか?

『どんな命も花と輝け』には、どうしていいかわからない悩みを解決してくれる生き方のヒントがたくさん書かれていますよ。


人生を大切にしたい

最後に、69年の人生を全うされた「やんちゃ和尚」。

子どもたちにとっての「おじさん」、廣中邦充さんの言葉で締めくくらせていただきますね。

この世に人として生まれてくるというのは、梵天といって、遠い遠い空から細い糸を垂らし、海の底に沈んだ針の本の小さな針穴の中に、その糸を通すくらい稀なことなんです。
そうやって母や父を介し、この世に人として生まれたぼくたちなんですね。
だからこそ、そんな奇跡的な人としての人生に、欣びの心を持って、少しでもお役にたつ、この世の人生を歩んでいきましょう。
まず何より他人様の幸せを願いましょう。
生老病死に出会えたことに「ありがとう」!
そして、あなたに巡り会えたことに感謝。
第4章「死」p212〜p213



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