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渋沢栄一の書き残した1冊の現代語訳『現代語訳 論語と算盤』

『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一守屋淳

 

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

 

著者 渋沢栄一守屋淳

出版社 株式会社 筑摩書房

分類 ビジネス書、実用書

出版日 2010/2/10

読みやすさ ☆★★少し難しい

 

今月の本は、大河ドラマ「青天を衝け」で多くの人に知られるようになった日本資本主義の父 渋沢栄一の『現代語訳 論語と算盤』を紹介させていただきますね。

 

ビジネス書としても、生き方に役立つ実用書としても、得られるヒントの多い1冊です。

 

 

 

渋沢栄一

 

大河ドラマ「青天を衝け」の主人公 渋沢栄一は、現代に続く日本経済の基礎を作った偉人で「日本資本主義の父」と呼ばれています。

 

 

日本資本主義の父 渋沢栄一

 

幕末の時代、埼玉県深谷市血洗島の有力農家で生まれ育った渋沢栄一は、幼い頃から将来は大物になる才能を見え隠れさせていました。

 

幕末の動乱の中、ある時は過激な維新志士の活動に身を投じ、フランスへ留学して帰国した際には、武士の時代は終わろうとしていました。

 

「国を豊かにするには経済力が必要」と考えた渋沢栄一は、海外にあって日本のはない経済の仕組みを1から作り上げることになります。

 

渋沢栄一の生涯については、今後別のページでまとめさせていただきますね。

 

 

雨夜譚(あまよがたり)

 

講談社 学習まんが 渋沢栄一 歴史を変えた人物伝 講談社 学習まんが 歴史を変えた人物伝

渋沢栄一自身が書いて出版された本は、生涯で1冊だけでした。

 

『雨夜譚(あまよがたり)』という自伝には、渋沢栄一の考え方の他に、彼が思い描いた詩や和歌が綴られています。

 

ただ、こちらも古い本なので現代語訳や解説書の方が読みやすいはずですよ。

 

   

 

 

本の構成と読みやすさ

 

 

『現代語訳 論語と算盤』は、1916年に出版された渋沢栄一の講演記録『論語と算盤』を古典と近代史の著書を手掛ける守屋淳さんが現代語訳した1冊です。

 

『現代語訳 論語と算盤』の構成

・はじめに p7~p12

・第1章 処世と信条 p13~p43

・第2章 立志と学問 p45~p64

・第3章 常識と習慣 p65~p83

・第4章 仁義と富貴 p85~p103

・第5章 理想と迷信 p105~p123

・第6章 人格と修養 p125~p146

・第7章 算盤と権利 p147~p164

・第8章 実業と士道 p165~p184

・第9章 教育と情諠 p185~p204

・第10章 成敗と運命 p205~p220

・十の格言 p221~p222

渋沢栄一小伝 p223~p240

・『論語と算盤』注 p241~p247

・参考図書 p249

『現代語訳 論語と算盤』は、テーマごとに20ページ、合計10個の章にわけられています。

 

1つの章は、更に細かなテーマで3つほどにわけられていて、渋沢栄一について知りたい方は、はじめにp223から始まる「渋沢栄一小伝」を読んでおくと、本の中のエピソードがわかりやすくなりますよ。

 

 

☆★★少し難しい

 

『現代語訳 論語と算盤』は、長年読み継がれているビジネス書ということもあり、現代語訳でも言葉が難しく、気軽に読める本ではないのかもしれません。

 

読書に慣れた方でも、2~3週間ほど時間をとられて、じっくりと読み奨めてはいかがでしょうか?

 

   

 

日本全国にゆかりのある実業家

 

 

論語と算盤』の著者 渋沢栄一が携わった事業は、数えるときりがないといわれています。

 

 当時の大蔵省(現在の財務省金融庁)で国の財政の規模を作り、「円」の流通を整えたことは多くの紹介文に書かれています。

 

北国では、サッポロビールの創業に関わったことで有名です。

 

経済界だけではなく、日本赤十字社医療機関の慈恵会の創設に携わっていて、日本全国にゆかりのない場所がないほどです。

 

 

 

日本ハムファイターズの教科書

 

また、プロ野球の日ハムのファンや栗山英樹監督について調べたことがある方には、渋沢栄一を知らなくても『論語と算盤』をご存知の方はいらっしゃいます。

 

北海道日本ハムファイターズ栗山英樹監督

は、プロ野球選手を引退後、キャスターとして働かれたこともあり、若手選手の「社会人」としての教育にも熱心です。

 

日ハムに入団した新卒の若手選手には、栗山英樹監督から『現代語訳 論語と算盤』が手渡され、社会人の教科書として活用されています。

 

渋沢栄一に学び、ドカベンをめざす 栗山監督の経営術:朝日新聞デジタル

 

 それでは、いよいよ『現代語訳 論語と算盤』の内容に触れてみますね。

 

 

 

 

近代の男女平等の提唱者

 

いうまでもなく、女性も社会の一員であり、国家の構成要素なのだ。

だからこそ、女性に対する昔からの馬鹿にした考え方を取り除き、女性にも男性と同じ国民としての才能や知恵、道徳を与え、ともに助け合っていかなけばならない。

・第9章 教育と情諠 p185~p204

 

男女雇用機会均等法で、働く世代の男女平等は決められていても、未だに日本国内では男女で収入に差があり、戸籍の問題も見直されてはいません。

 

今から100年前の渋沢栄一の時代は、更に男女平等から遠い時代だったのでしょう。

 

価値観の大きく違う時代でも、令和の現代でも解決されていない男女平等を取り上げた渋沢栄一は、男女平等の提唱者といえなくはないでしょうか?

 

 

 

世の中のモノサシに縛られない

人は、人としてなすべきことを基準として、自分の人生の道筋を決めていかなければならない。だから、失敗とか成功とかいったものは問題外なのだ。かりに悪運に助けられて成功した人がいようが、善人なのに運が悪くて失敗した人がいようが、それを見て失望したり、悲観したりしなくてもいいのではないかと思う。成功や失敗というのは、結局、心を込めて努力した人の身体に残るカスのようなものなのだ。

・第10章 成敗と運命 p217~p218

 

また、最後の章では「人生の価値」でまとめられています。

 

会社員の人工の多い日本国内では、未だに「いい会社」に入り、「いい収入」を得て、「いい家族」に恵まれ、「健康で長生き」することが人生の価値として根付いています。

 

少しずつですが、「いい会社」はずっとあるわけではなく、「いい収入」だけでは仕合せを感じることができず、「いい家族」のあり方は変わり、身体の「健康」よりも心を豊かにすることが広まり、人生の価値は変わっていく最中です。

 

渋沢栄一は、人生の成功や失敗だけで○×をつけず、「どう生きる」かを大切にしましょうと書き残しています。

 

令和の現代でもという言い方より、令和の現代だからようやく受け入れられる価値観に思えます。

 

渋沢栄一という方は、もしかすると100年後の令和を見据えて日本の基礎を作ってくれたのかもしれませんね。

 

   

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