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リアルな等身大の登場人物のキャラクター像は読者の分身?作家自身?

小説に登場するリアルな主人公像とは?

読書の豆知識


リアルな登場人物とは?
本好きでもあり、私的に小説を書いている花水由宇(hanami yu)も作品づくりの勉強も兼ねて、リアルな登場人物を描くポイントをまとめています。
第4回は、実際の小説の登場人物(主人公)を例に「リアルな等身大の登場人物のキャラクター像」はどう描かれているかを考えてみます。

リアルな等身大の登場人物(主人公)とは?

リアルな登場人物とは?


リアルな主人公の登場人物って?と聞かれると、本好きの読者目線なら「等身大の登場人物」という答えが思いつきます。
その登場人物の目線で、物語の世界の楽しみや苦労を体験できる存在が等身大と呼ばれているのでしょう。
等身大という受け止め方は、世の中の多数派にとって「身近にいそうな」個性を持った人物ではないでしょうか。
等身大の登場人物になるためには、読者と同じように「性格と人生」を持っていて、生まれと育った環境があって、良いことも悪いことも経験していて、その人なりの将来を考えていたりする。
もちろん、私たちと同じように「長所と短所」を持っていて上手くいくこともあれば失敗することもある。
そんな等身大の登場人物は、リアルな登場人物と呼ばれるようになり読者の代わりに、物語の世界を見せてくれる案内人のような存在になってくれるはずです。




リアルな等身大の登場人物(主人公)の条件は「身近にいそうな」こと

登場人物の個性を現す3つのこと


リアルな登場人物と呼ばれるには、読者にとって「身近にいそうな」存在という点がとても大切なはずです。
参考にさせていただいた本の中から、キャラクター像で身近にいそうと感じられるための「社会的位置」「倫理観」「共感性」の3つに注目してみました。

社会的位置

社会的位置は社会人なら年収と立場、学生さんなら学力と生活感が多数派に近いかがポイントになります。
全てが多数派に近い必要はなく、例えば年収は平均的でもおじいさんが大企業の経営者。
学力はイマイチでも、お母さんのように生活力が高い方は「身近にいそうな」存在として受け入れられるでしょう。


倫理観

倫理観は、善悪の判断と行動です。
「悪は許さない」正義感溢れる登場人物は、そう身近にはいないものです。
また、詐欺や泥棒をして何の後悔もしない自分勝手な悪人も、身近に多いことはないでしょう。
極端に偏らず、犯罪は悪いと思っても立ち向かうほどの勢いはない程度の中立に近い判断を持つ登場人物は「身近にいそうな」人物ですよね。

共感性

共感性は、相手に与える「印象」でもあり、考え方から経験を含む人間性が当てはまります。
ここは、森沢明夫さんの「長所と短所を持たせる」設定が活きるところです。
優しいけど優柔不断、元気だけど時々空回りといった、極端過ぎない長所と短所は「身近にいそうな」リアルな人物になってくれるはずです。




登場人物の個性ごとのタイプと役割


「身近にいそうな」リアルな人物が、主人公のキャラクター像に欠かせません。
一方、「社会的位置」「倫理観」「共感性」の偏った登場人物も物語には欠かせない存在です。

個性ごとの3つのタイプ
登場人物の個性のタイプ

そこで、登場人物の個性ごとにおおまかに3つのタイプに分けてみました。

一般的な範囲の登場人物
個性的な登場人物
超個性的な登場人物

お気づきかと思いますが、3つのタイプは実際の世の中にも当てはまりますよね。

おおよそ10人集まると、7人は一般的な範囲の登場人物に近く、2人くらいは個性的な登場人物に当てはまる人が周りにいるのではないでしょうか?
そして、ごく稀に超個性的な登場人物のような方もいるはずですよ。


個性によって決まるキャラクター像の役割
登場人物の個性別の役割

個性によって、物語で活躍する役どころも違いがあります。
一般的な範囲の登場人物なら、主人公や準主人公、そして一見目立たない解説役のような脇役に欠かせません。
個性的な登場人物は、キラリと光るものがある主人公、一般的な範囲の登場人物と対比になる準主人公や名脇役、サスペンス小説なら悪役側の主人公で存在感がありますよね。
超個性的な登場人物は、有り余る個性を活かしたムードメーカーやシリーズの名物キャラクター、ミステリ小説で誤認逮捕される役どころに多いはずです。




小説のリアルな等身大の登場人物(主人公)の例は?


それでは、「社会的位置」「倫理観」「共感性」の3つに注目して、実際の小説の登場人物(主人公)を見てみましょう。

坂木司坂木司「ひきこもり探偵シリーズ」)

「ひきこもり探偵シリーズ」は、ひきこもりの名探偵 鳥井真一(とりい しんいち)、保険会社で働く友人の坂木司(さかき つかさ)が活躍する日常ミステリです。
いわゆる「個性的」な特徴のある登場人物 鳥井真一を際立たせる、リアルな登場人物の主人公が坂木司です。
鳥井と高校生の頃からの友人で27歳の坂木は、東京都内の保険会社で働く正社員という「社会的位置」です。
涙もろく温和な性格で、困っている人を助けたくなっては事件に巻き込まれる中立的な「倫理観」を持っています。
温和な性格と優柔不断という長所と短所、個性的で非凡な鳥井との対比が等身大のリアルな登場人物として読者の「共感性」を引き受けてくれる存在です。


北村(伊坂幸太郎『砂漠』)

大学で出会った6人の若者が、日常の中で出会う謎と困難を乗り越える名作『砂漠』。
5人の登場人物の中で、鳥井と東堂と南は「個性的」な特徴のある登場人物、西嶋は「超個性的」なキワモノ登場人物として描かれています。
「身近にいそうな」リアルな登場人物として描かれているのは、物語の語り部 北村、中盤から加わる鳩麦の2人です。
北村の「社会的位置」は、東北地方から上京した公務員を目指す大学生。
穏やかではあっても、どこか客観的に物事を見るクールな「倫理観」を持っています。
平凡な暮らしを求めていても、個性的な仲間との時間で刺激を求めたい引っ込み思案な「共感性」で読者を惹き寄せてくれる存在です。


岡村浩二五十嵐貴久『1985年の奇跡』)

五十嵐貴久さんの『1985年の奇跡』は、1980年代を舞台にした、野球の弱小高校が夢見る奇跡の物語。
昭和版「下剋上球児」ともいえる青春小説です。
物語の舞台、都立小金井公園高校野球部のキャプテンで『1985年の奇跡』の主人公が岡村浩二です。
野球もルックスも成績も「可もなく不可もなく」を自称する、自他ともに認める平凡な「社会的位置」の高校生。
熱血的な野球少年でもなく、ジャンケンで押し付けられたキャプテンを断れない優しい「倫理観」の持ち主。
時間つぶしと趣味で続けていた野球で、キラリと光った希望、心をかすめた夢に手を伸ばしたくなる若々しい感情で読者の「共感性」をくすぐってくれる登場人物です。




リアルな等身大の登場人物は読者自身?それとも作者自身?

リアルな等身大の登場人物のまとめ


リアルな等身大の登場人物は、多数派に近い生活感の社会的位置、極端に偏っていない中立的な倫理観、誰にでもある長所と短所を持った身近にいそうな共感性を持っています。
主人公でありながら、「個性的」な特徴のある登場人物との対比が賑やかな人間関係を作り出し、「超個性的」なキワモノ登場人物を輝かせる存在です。
等身大の主人公は読者の代わりに、物語の世界を見せてくれる案内人でもあり、小説に登場する読者自身にもなってくれるでしょう。
小説家の森沢明夫さんは、「作者は登場人物を親友レベルで理解することが大切」と書かれています。
もしかするとリアルな等身大の登場人物は、小説の中で活躍する作者自身なのかもしれませんね。


リアルな登場人物の描き方

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小説の書き方の本の紹介ページ


『プロだけが知っている小説の書き方』森沢明夫
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『超・戦略的! 作家デビューマニュアル』五十嵐貴久
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『書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸
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『「9マス」で 悩まず書ける文章術』山口拓朗
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