本当に本が読みたくなる読書のブログ

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昔書いていた小説

少し前の更新で頭の中の空想のお話をさせていただきました。

空想は少し形になっていたんですよ、当時のケータイ小説という流行の分野でしたが。

今回はパソコンから掘り出してきた、まさに私にとっては掘り出し物の物語を紹介しますね。

物語の名前は『ICE』、普通に暮らしている高校生の女の子が薬物に手を出してしまうお話です。


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※注意、作品には薬物使用の描写があります。本作品は薬物乱用に反対する目的で作成された作品であることをご理解ください。


** プロローグ


それは水と一緒に飲み干す、禁断の果実。

味も、感覚もない。それはただの氷のような、小さな粒の塊。

ただの氷の粒は私の胃や腸から、血管に流れる。

氷の粒が私の脳をかすめた時、ただの粒は禁断の果実へと変わる。



全身の血液が山の雪解け水になったように体を冷やす。

雪解けの血が全身に溜まった疲れも、熱も、全て冷やしてくれるよう。

体だけでなく、私の心に溜まった疲れも、新しい傷も古い傷も、怒りも、憎しみも、誰かへの殺意も…………それが全て冷やしてくれる……。


その禁断の果実の名前は“IEC”、新種の合法ドラッグ。そう…今はまだ、かな。


1話


 作られた笑顔・ありきたりな会話・決まりきった学校生活。
いつからだろうか、私の周りは全て偽りの空間にしか見えなかった。
そして私自身も…。楽しいのだろうと思う、誘われれば遊び、楽しければ笑う。
ただ、現実感がわかないだけ。

親元を離れ他県の高校に進学してから4ヶ月、中学生活よりは、快適な事に変わりはなかった。
だが、ここも偽りの世界にしか見えなく、その中で自分の本当の居場所など無いのだろうとこの頃感じ始めた。

 彼とのキッカケは何も無かった。
行き当たりバッタリ、ナンパされ男と寝るのと何ら代わりの無い事だった。
大学生くらいのありきたりな男から1パック4000円で彼は私に買われた。

彼と交わったその夜から、私は彼の虜になった。
毎夜私は彼を求め彼は私を求めた。
彼無しではいられない生活がもう1週間も続いている。
私は神宮空、恋人の名前は…ICE。


「神宮~、朽木が職員室に来いだってさぁ」
空と同じく遅刻癖のある新井田伸太郎が昼になってから現れた空を呼び止める。
ハリネズミのようなパーマをかけた髪型のせいで、元々の小柄な身長は2割増し程になって見える。

「え~、何さ?髪なら直さないからって言ったのに」
そう言う空もストレートの黒髪を染め、パーマで巻くようになった。
空と真弓も含め、幼さが残っていた1年生も、ここ3ヶ月でずいぶん大人へと変身していた。

「行っとけって、俺もさっき髪直せって。適当に言われてきただけだからさ」

「ウザイなー朽木。わかったよ。てか朽木の説教なんて怖くないしね」


 職員室では寝癖が残るボサボサの髪の、萎れた白衣をまとった年よりも老けて見える男が空を待っていた。

「神宮、もう昼だぞぉ」
朽木が頼りない口調で話す。
その頼りなさそうなキャラと、他の教師に比べうるさくない事から、生徒たちの中では人気のある方だった。

「ゴメン先生、母さんが熱出して介抱してた」

「何言ってんだ、お前1人暮らしだろう」

「あっ、そっか」


「嘘もつくならちゃんとついてくれよ。お前は成績は優秀なんだから、生活態度も優秀になってくれたら俺も嬉しいんだけどな」
朽木の口調は相変わらずだった。
本気で説教をする気など初めから無かった。
わざわざ生徒と険悪になるようなことをする先生ではない、それも空は知っている。
だがそれが他の教師と違い、気軽に話せる教師だ。


「それは無理かなぁ、アタシその生活態度っていう成績は1でいいから。じゃあね」
形式上だけの指導を終えた空は授業へ戻る。


 そして今日も授業が終わる、コンビニのアルバイトが終わる。
週4日働いても5万くらいにしかならない仕事だが、仕送りもある空の小遣いには持て余すものだった。

 この間のチャラ男からICEを10パック買い、先月の給料は全て無くなった。
だが少しも勿体ないとは思わなかった。
初めて出会った時から、彼=ICEにはそれだけの価値があると思えてきたから。

 そして今日が終わろうとしている頃、パックから取り出したICEの粒を水で飲み干す。
30分くらいたった頃から、体の、心の火照りが引いてゆく。
血が冷水になったように全身を冷やし、ムカツクこと、イライラしていたこと、悩みも全て冷やしてくれているよう。
肺からの吐息も、心なしか冷えているように感じる。

これで、今日も眠れる………。

新黒猫の密室 『ICE』より

著者 花水由宇




かなり前に書いた物語を書き下ろしで載せたので稚拙な文章で時代を感じる話題も多いですよね。

きっとウニの様なチリチリパーマをかけたロックンローラーのような高校生は今時いないでしょう。

あまり書きすぎてしまうとブログのテーマから脱線しすぎてしまいそうですね。

物語はまた別の形で書き残して行く予定です、あくまで予定ですのでいつかはわかりません。

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