珍しい料理がテーマのミステリー『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』
著者 田中圭一
出版社 株式会社 幻冬社
分類 小説
出版日 2016/8/6
読みやすさ ☆☆★読みやすい
今日は、2017年11月に映画も公開された『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』を紹介します。
映画を見る前に読んでおこうと衝動買いしたのですが、読み終わる前に嵐の二宮和也さん主演の映画は始まり、紹介も遅れてしまいました。
映画を見ていない方は、ぜひ小説から読んでみてください!
登場人物
佐々木充(ささき みつる)
どんな料理でも同じように再現できる絶対味覚「麒麟の舌」を持つ青年。
かつて営んでいたレストランが廃業し、積み重なった借金返済のため最後の料理人として死期が迫った人の食べたい料理を再現する佐々木充。
料理人には似つかわしくない長髪と服装の佐々木だが、最後の料理は彼にしかできない仕事でもあった。
映画は嵐の二宮和也さん、ぴったりのハマり役に思えます。
最後の料理人
料理人の仕事は普段目にすることが多い職業の1つ。
飲食店、料亭や旅館でお世話にもなる人も多いはず。
料理人の主人公の佐々木充の仕事は「最後の料理人」。
死期が迫った人の思い出の料理を再現して、食事を通して思い出を振り返ってもらえる素敵な役割。
聞こえは良いが、料金も数10〜数100万円と高額。
それでも人は、ただ食べたいだけではないのかもしれない。
きっと、思い出を思い浮かべ、生き様を振り返りたい、そのための料金なら、払っても良いのかな。
平成と昭和を行き来するレシピ
『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』に登場するラストレシピは作中で『大日本帝國食材全席』と呼ばれる伝説のレシピ。
料理人の山形直太朗が生涯をかけて作成した、日本料理、西洋料理、中華料理、エスニック料理の中から、当時存在しない新作の料理のみで作られた204品の料理が収められたものです。
物語は山形直太朗がラストレシピ『大日本帝國食材全席』の制作に取り掛かった昭和、そしてレシピを探す佐々木充の平成を行き来きする。
昭和と平成の描写を比べることで当時の国としての日本、そして人の生き方に触れることができますよ。
味の記憶、料理は誰のもの
物語のキーワードは「味の記憶」。
単純な料理の美味しさだけで記憶は残らないはず。
味の記憶が残すものは、その時の自分の思いそのもの。
主人公の佐々木充が再現する料理は、食べる人に遥か昔の思い出さえ呼び覚ましてしまう。
そして、もう1つのキーワードが「料理ははたして誰のものなのか?」ということ。
これは、レシピ探しの答えにもつながる大切なキーワードですよ。
すでに二宮和也さん主演の映画は公開されていますが、まだの方は珍しい料理ミステリーという物語を楽しんでみてはいかがでしょう?
一昨年のドラマ『天皇の料理番』を見た方は、昭和の戦前から戦中の様子が重なって物語を理解しやすいと思いますよ。