一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書
著者 山崎圭一
出版社 SBクリエイティブ株式会社
分類 一般教養
出版日 2018/8/27
今回は、政治と経済のジャンルから世界史をわかりやすく勉強できる本を紹介させていただきます。
昨年の夏に出版されてから、本屋さんで売り切れることも多い話題の本が『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』。
神授業で話題の著書 山崎圭一さんが、世界史が苦手な方にもわかりやすく教えてくれる本ですよ。
グローバル化に欠かせない教養の世界史、でも覚えづらい
社会人の方も昔学校で習った世界史。
海外の方と接する機会が増え、今後欠かせない教養の1つでもあります。
興味があっても苦手に感じる理由は、世界史の覚え方にありました。
グローバル化に欠かせない世界史
世界のグローバル化に伴い、世界の歴史、文化を学ぶ意義は非常に高まっています。
私も世界の歴史という、スケールが大きく、様々なエピソードが詰まった素晴らしい教科を教えることは非常にやり甲斐を感じています。
ホームルーム p16
山崎圭一さんも書かれているように、海外の人と触れ合う機会が多くなった現代では英語の次くらいに世界史や日本史が大切だと思います。
世界史が大切な理由は、海外の国が歩んできた歴史とそれぞれの国と地域のつながりを知ることで、触れ合う海外の人がどんな価値観を持っているのかを知ることにつながるからでしょう。
世界史がわかりにくい理由は年号の語呂合わせにあった
社会人も高校生も世界史の勉強を苦手に感じている人が多くいます。
理由は、多くの人が、英語の単語帳を覚えるように、「なんの脈絡もなくひたすら用語や年代を暗記する科目だと思っている」ことにあると思います。
こうした“誤解”を生む1つの要因が、学校で使われている一般的な世界史の教科書の構成にあるのではないかと私は考えています。
ホームルーム p16
世界史で大切なことは海外を知ることですが、日本の学校で教わる世界史は昔から大きく変わりはないようです。
それは、世界史の年号を語呂合わせで暗記する科目と思われていると山崎圭一さんは指摘しています。
例えば、ラグビーワールドカップで優勝した南アフリカは第二次大戦後から1994年までアパルトヘイトと呼ばれる差別政策が行われていました。
黒人初のマンデラ大統領によって、アパルトヘイトは廃止され、その後20年かけて人種を超えた1つのチームがワールドカップで優勝できるまでになりました。
世界史を習っていて「アパルトヘイト」「マンデラ大統領」「1994年」という語呂合わせは知っていても、どんな背景でアパルトヘイトが始まり、終わった後はどうなったのかを知らないと、南アフリカの方と本音のやり取りをするのは難しいのではないでしょうか?
世界史がわかる5つのポイント
1.世界史は数珠つなぎで学ぶ
2.主語を変えない
3.年号は覚えない
4.世紀は中東世界を軸にする
5.地域史から世界史の順で覚える
ホームルーム p16〜p24
山崎圭一さんの『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』では、世界史がわかりやすい5つのポイントを押さえるのが大切と書かれています。
神授業が話題の山崎圭一さんの紹介
著者は、高校で社会科を教えられている山崎圭一さん。
卒業された生徒さんにも好評だった授業をYouTubeに投稿したことがきっかけで、本を出版することになったそうです。
世界史がわかる構成と見た目より軽い読みやすさ
「一度読んだら絶対に忘れない」
インパクトのあるタイトルのように、絶対に忘れない秘密には本の構成にあります。
世界史がわかる構成
はじめに p2〜p3
ホームルーム p16〜p26
序章 人類の出現・文明の誕生 p28〜p32
第1章 ヨーロッパの歴史 p34〜p80
第2章 中東の歴史 p82〜p112
第3章 インドの歴史 p114〜p128
第4章 中国の歴史 p130〜p176
第5章 一体化する世界の時代 p178〜p208
第6章 革命の時代 p210〜p240
第7章 帝国主義と世界大戦の時代 p242〜p272
第8章 近代の中東・インド p274〜p288
第9章 近代の中国 p290〜p304
第10章 現代の世界 p306〜p333
おわりに p334
世界史の教科書というと、時代に沿って時系列に出来事が並ぶ本が多いですよね。
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』は、世界史がわかる5つのポイントに合わせた構成です。
1.世界史は数珠つなぎで学ぶ
4.世紀は中東世界を軸にする
5.地域史から世界史の順で覚える
第4章まではヨーロッパ・中東・インド・中国の紀元前〜1500年くらいまでの歴史に触れています。
第5章からは、大航海時代に合わせて地域がつながるような流れで書かれていまました。
厚みがあっても読みやすい
本のボリュームは、300ページを超えていてとても厚みがあります。
それでもスラスラと読み進められるのは、世界史がわかる5つのポイントに合わせて用語が少なく書かれているからでしょう。
2.主語を変えない
3.年号は覚えない
例えば○○朝のように、王様や政権によって変わる細かな国の名前も1つの用語で統一されています。
細かく年号も書かれていないところも、出来事を覚えやすいポイントです。
変わっていくこともある世界史
世界や日本で今まで機密にされていた文書が見つかったり、新しい歴史の見解が示されたことで今の20代〜30代の方が世界史を学んだ頃とは大きく内容が異なる歴史もあります。
国際連合は世界中すべて仲良しじゃなかった
サンフランシスコ会議において、戦後の国際機構として国際連合が設立されますが、戦争の終結は「戦勝国にやはり世界秩序」の始まりに他なりませんでした。
「国際連合」を英語にすると「United Nations」になります。
これは大戦中の「連合国」という意味で、第二次世界大戦に勝った連合国の名称をそのまま使い続けているということです。
第10章 現代の世界 p308
以前、世界の情勢を調べていたときに日本とドイツが国際連合の常任理事国になれない理由の1つに「枢軸国」だからというお話がありました。
「枢軸国」は第二次大戦で世界を2つに分けて戦って負けた、日本がいた側の陣営です。
「当時の政府がなくなって国の仕組みが変わったのに?」と疑問に思いましたが、国際連合という組織は「United Nations」という第二次大戦の連合国の名前をそのまま使っています。
戦後70年が経った現代でも、世界の中での日本はまだまだ「枢軸国だった国」として扱われているんですね。
私が小中学生の頃には、第二次大戦後に国際連合が出来て世界は平和になったと教わっていましたが………実は戦争で勝った国の都合に合わせて仕組みが作られ、今も大きく変わっていない事実を知ることができます。
イギリスの嘘から始まったパレスチナ問題
戦後の中東世界を巻き込んだ宗教対立問題がパレスチナ問題です。
事の発端ら、第一次大戦中、イギリスが戦争への協力を取りつけるため、ユダヤ教徒(ユダヤ人)とイスラーム教徒(アラブ人)の両方にオスマン帝国が支配していたパレスチナの地への建国を認める約束をしたことによります。
第10章 現代の世界 p326〜p327
中東というとイスラム教の原理主義組織によるテロが起き、周辺国やアメリカ、ロシアが攻撃する出来事が繰り返し起きています。
中でも、古くから問題が絶えず、イスラエル寄りかパレスチナ寄りかで政権のあり方が問われるのはパレスチナ問題。
第二次大戦後に起こった問題のように考えていましたが、実は原因は第一次大戦にまで遡ります。
当時、ドイツの陣営と戦争をしていたイギリスが、周辺国の協力を取り付けるためにユダヤ教とイスラム教の勢力の両方に「パレスチナ地区に国を建国して構いませんよ」と約束したことが始まりと書かれています。
宗教の違い、地域の大きさや政治体制の違いに目が行きがちですが、当時の大国の都合で引き起こされた問題であることがわかります。
世界史を学び直したい人におすすめ
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』が、今の高校受験やセンター試験に向いているかというと、それはわかりません。
受験勉強よりも役に立つ、これからの教養として読んでみることをおすすめします。
特に、世界史に興味はあっても学生の頃に世界史が苦手だった方は1度手に取ってもいいのではないでしょうか?