冬におすすめの小説特集
実用書、思想と哲学・考え方の本、一般教養・サブカルと雑学の本、読書の効果と読書術の本、ビジネス書・政治と経済の本、エッセイとノンフィクション、小説の7つのジャンルから紹介させていただきます。
最終回の第7回は、恒例の小説の特集です。
冬におすすめの小説
冬におすすめの小説は、短編ミステリ2作品、社会小説2作品、日常ミステリ1作品、ある青年がお坊さんになるまでを描いた1作品を選んでみました。
『阪堺電車177号の追憶』山本巧次
1つ1つのエピソードがとてもリアルで、世界観に入り込みたくなる作品が『阪堺電車177号の追憶』。
暮らしの中に敷かれたレールを通して、出会った人々の不思議な日常に触れる短編集です。
『エアー2.0』榎本憲男
夢のようで、夢だけでは終わらせたくない物語があります。
謎の老人から託された大穴馬券で突然5000万円を目の前にした作業員の中谷。
再び現れた老人は、人の感情を予想する市場システム「エアー」の運営を任せたいと申し出る。
国家予算を超える「エアー」の利益を元に、福島県の原発事故で失った帰還困難区域の再生を目指す物語。
本当にこんなことが起こったら、そう期待させてくれる作品でした。
『トップリーグ2』相場英雄
前作トップリーグは、東京都内の工事現場から発見された1億5000万円から暴かれた官邸の謎。
その後、若手新聞記者だった松岡直樹は編集長に、雑誌記者の酒井祐治は出版社を辞め塾の先生に転身していた。
政治の裏に隠された、5年前の事件のラストに迫る物語です。
『小説版 ボクは坊さん。』岡田裕蔵
映画化もされた「ボクは坊さん」。
24歳の若さで突然住職を継いだ若者のボク。
地域の人たちや親友、古くからの檀家さんに支えられ、お坊さんとして成長してゆく。
お坊さんというと、「初めから」お坊さんだったも思えてしまいますが、一般企業に勤める私たちのように苦労があって、努力も欠かせない。
お坊さんが見せてくれる、人間的な姿が描かれた物語。
注目は『エアー2.0』
坂木司ファンの花水(hanami)としては、『先生と僕』をおすすめしたいのですが、今回は違う作品をおすすめしてみます。
福島原発事故の帰還困難区域という、とても深刻なテーマですが、そこに希望を持たせてくれる。
起こらなさそうで、数年先には起こっていそうな『エアー2.0』の世界観を楽しみたいですね。