『スイム!スイム!スイム!』五十嵐貴久
著者 五十嵐貴久
出版社 株式会社 双葉社
分類 小説、青春小説(大人)
出版日 2020/8/10
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
Tokyo2020の熱が冷めない2021年の秋なので、競泳選手の活躍をテーマにした物語『スイム!スイム!スイム!』を紹介させていただきますね。
競泳界の荒波にのまれる10人
登場人物は、主人公の西山大輔を始め、実績と実生活のかけ離れた10人。
全日本水泳協会、日本オリンピック委員会という大人の事情が渦巻く競泳界の荒波は、個人には超えることができない海なのだろうか?
西山大輔
年齢)32歳
専門)200m自由形
経歴)アテネ・北京オリンピック2連覇の金メダリスト
リオでのオリンピック3連覇を目指し現役続投を宣言するも、度重なるビッグマウスと不謹慎な態度が災いし2014年9月に所属するレッドマウンテン社を解雇、路頭に迷うことになる。
「泳ぐ理由」に間違いがなかったことを証明するため、混合メドレーリレーチームドラマチックスを引き連れて2016年2月にオリンピック出場をかけた現役日本代表とのレースに望む。
門脇文彦
年齢)32歳
専門)マネジメント
経歴)MBA資格のあるビジネスマンでチームニシヤマの敏腕マネージャー
西山大輔を支えるレッドマウンテン社のマネージャー。
控え目で大人しい人がらのため、西山の解雇の影響でスポーツ用品店の副店長に異動されてしまう。
事務的な手続きやマネジメントを一手に担うマネージメント力は、混合メドレーリレーチームドラマチックスになくてはならない存在。
木下拳司
年齢)59歳
専門)競泳コーチ
経歴)スイミングスクールのコーチを定年
アルコールが欠かせない、競泳界こ名物コーチ。
根性論とモラハラ、パワハラを改められず仲間内からも直接「あんたは酷いコーチ」と言われるほど指導力に欠けていても、選手の本当の力を見つける目は確かだった。
混合メドレーリレーチームドラマチックス監督に就任し、打倒水泳協会の旗を上げる。
小柳幸男
年齢)22歳
専門)100m自由形
経歴)日本記録に迫るタイムを持つ環境に恵まれない若者
木下のスイミングスクールで、100m自由形の日本記録に迫るタイムを持つ選手。
インド人と日本人のハーフの彼は、宗教の食事制限のため体力が不安定。
ハーフという立場もあり環境に恵まれず、運送会社で派遣社員をしながら泳ぎ続けていた。
差別と立場に偏りがない環境は、見つかるのだろうか?
金城望
年齢)17歳
専門)100m背泳ぎ
経歴)元オリンピック強化選手
100m背泳ぎで才能を開花させオリンピック強化選手に選ばれた彼女は、日焼けした肌にショートカットが似合う通信制高校に通う女子高校生。
複雑な家庭環境、義父のDVがあり気分が不安定だった16歳の頃、オリンピック強化遠征参加中に喫煙が発覚し追放されてしまう。
たった1つ、後先を考えない若者の間違いが許されるのは…。
六車史佳
年齢)29歳
専門)200m背泳ぎ
経歴)ロンドンオリンピックの200m背泳ぎ元銀メダリスト
西山大輔と同世代の六車史佳は、かつてスマイリングマーメイドと呼ばれた美人スイマー。
北京オリンピックで銀メダルを獲得したものの、薬物疑惑で銀メダルを剥奪され、水泳協会からは見放されてしまう。
現在は、アスリート生活とは遠い銀座のクラブで働いていた。
疑惑という偽りの熱狂が晴れた先にあるものは…。
松川恵子
年齢)48歳
専門)200mバタフライ
経歴)ソウルオリンピックの候補選手の大手家電メーカー夫人
200mバタフライ日本記録と2秒ほどしか変わらないマスターズ記録を持つ、スーパーマダム。
その正体は、1970年代のソウルオリンピック直前に交通事故で引退した伝説のスイマーだった。
25mプールのあるお城のような豪邸でセレブな暮らしをおくっていたマダムは、孫に「かっこいいおばあちゃん」の姿を見せるため、競泳界の荒波に身を投じることになる。
五本木マリア
年齢)25歳
専門)200mバタフライ
経歴)ロンドンオリンピックの200mバタフライ銅メダリスト
200mバタフライの現日本記録保持者でロンドンオリンピックの銅メダリストの五本木マリア。
ボーイッシュで中性的な魅力的のある水泳会のアイドルは、オリンピック直後に父親を明かせない妊娠騒動が起こり、スポンサー契約を解除されてしまう。
かつての栄光の名残がないほど、2歳の息子を育てる厳しい暮らしをしていた。
好奇の目に晒された思いの真実は見つかるのだろうか?
黒川響
年齢)19歳
専門)100m平泳ぎ
経歴)100m平泳ぎで現役日本代表を競い合う
“スプラッシュタイガー”
フォームの綺麗さが速さに大きく影響する平泳ぎで、荒削りのめちゃくちゃなフォームで日本代表を競い合っていた黒川響。
オリンピック候補に名前が上がった直後に、父親が暴力団幹部をしていることが広まり強化指定チームから外され、孤独な水泳生活をおくっていた。
自分に非がない罪の行方は…。
岸田舞
年齢)25歳
専門)ライター
経歴)ノンフィクションライター
ノンフィクションライターを名乗る彼女は、アスリートの活躍を追うインタビューで、スキャンダル真っ只中の西山大輔の元に現れる。
後の騒動で明らかになった、自他共認める三流ライターの彼女の目的は…。
2014年の日本
物語の舞台は、2014年の夏。
2年後にリオオリンピックを控え、大手企業レッドマウンテン社でチームニシヤマを率いる西山大輔は、現役続行でのオリンピック出場を心に決めていた。
そして、間違いなくオリンピック代表に選ばれるものと、栄光の道が途切れることはないと思っていた。
都内の1流ホテルに集まっていた競泳界とオリンピック関係者は、西山よりも先を見つめ「東京オリンピック強化選手のコーチ」という事実的な引退を告げる。
今までの経歴と実力に絶対の自信を持つ勝ち気な西山は、競泳界と真っ向から対立してしまう。
アスリートという不安定な仕事
競泳界の宣告に反発した西山は、今までの問題発言と不謹慎な態度が災いし、メディアからの猛バッシングを浴びる。
例えメダリストでも、1人のアスリートにとって操作されたメディア、根回しを受けたスポンサーの力には無力だった。
競泳界の大スターから一転、アルバイトをしながらの不安定なスポーツ活動が始まることに…。