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根性論はなぜ時代に取り残されてしまったのか?

根性論と時代背景

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読書コラム


今どき、根性論で練習をされている部活動やビジネスの現場は多くはないのかもしれません。

2回にわたり更新させていただいた、根性論シリーズの3回目は、根性論が主流だった当時の時代背景を紐解いてみることにします。

根性論が主流だった時代

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根性論は今は昔


1960年代に生まれた根性論は、その後30年間にわたり日本国内のスポーツやビジネスの主流になってゆきます。


高度経済成長期

日本国内で根性論(英: die-hard spirit, never-give-up spirit)が生まれたのは、昭和の東京オリンピックの日本代表の活躍とされています。

厳しい我慢に耐えたあとは、努力に見合った成果が得られる。

そう言われた1960年代~1970年代前半は、高度経済成長期と呼ばれ、日本国内が「自然に成長が見込める時代」でもありました。


安定成長期

高度経済成長期に登場した根性論は、努力の量を重ねたアスリート、ビジネスの現場に大きな成果をもたらしました。

「とにかく頑張る」だけで成果が得られるのは、当時としては画期的なシステムに思えたことでしょう。

高度経済成長期に続く1974年~1986年からは、安定成長期と呼ばれ、「自分も頑張ろう」と根性論に夢見る方が増えた時代。


バブル景気

安定成長期を経た日本国内は、続くバブル景気で大盛りあがり。

1986年~1991年の間は、活躍された方には失礼ですが「自然に成長が見込める時代」でもありました。

実は、何もしなくても豊かになれた時代なんです。

ここで、根性論の成果が現れたのかをしっかりと分析すると、後々に根性論が全て否定されることはなかったのかもしれません。

残念なことに、「24時間働けますか」のCMが物語るように自然な成長を「根性論の成果」に置き換えてしまったんですね。



根性論が通用しなくなる時代


1960年代から1980年代にかけて世の中の主流だった根性論は、少しずつ疑問を持たれるようになり、2020年代では「明らかに間違っている」考え方の典型例といえるほど全否定されるようになります。


失われた10年

きっかけは、日本経済に大きな影響を起こしたバブル崩壊です。

バブル崩壊が起きた1991年~2002年にかけては、失われた10年と呼ばれ、ビジネスの現場では「何をしても上手く行かない」苦しい時代が続きます。

世界の経済の流れといった、個人では「どうにもならないこと」に根性論は負けたといえます。

実は、元からチームやさらに大きな業界が一体になって工夫しなければならない物事に個人の努力で向き合ったことに無理があったといえます。

疑問を持つと物事の悪い面ばかりが目立つようになり、根性論の持つ「健康よりも結果」「努力の量だけを大切にする」「工夫のない効率の悪さ」ばかりが注目されるようになります。


多様化の始まりと見直されるメンタル

さらに多様化の時代といわれる2010年~2020年の現代、根性論は危険な考え方とされ全てが否定されるようになります。

根性論を称えると、「ブラック○○」と呼ばれ世の中から後ろ指をさされるほどです。

スポーツ業界では、根性論が主流の時代に選手だった協会幹部や指導者による暴力とパワハラの問題が続きます。

2013年に女子柔道日本代表のパワハラ問題、2017年の相撲業界の暴力問題とはじめは犯罪でもある暴力が注目され、2018年のレスリング協会のように後々に脅迫のようなパワハラ問題が明らかになります。

根性論が終わりを告げたのは、新しい方法の方が成果を上げた事実が積み重なったからでもあります。

2008年には北京オリンピックで水泳日本代表のメダルラッシュに沸きました。

代表選手の北島康介選手を支えた平井伯昌コーチは、根性論とは反対の「選手に寄り添う」タイプの指導者といわれています。

2015年のラグビーワールドカップでは、五郎丸歩選手が活躍され、スポーツでのメンタルトレーニングの大切さが具体的に世の中に広まったともいえます。

さらに、2016年の羽生結弦選手の4連覇、2018年に池江璃花子選手の世界大会6冠、大谷翔平選手の新人王獲得は「本当に競技を楽しんでいる選手」が成果を残し、「スポーツは楽しむもの」という考え方が再認識されます。


Tokyo2020時代

令和の2020年代では、今まで注目されていなかったスポーツや新しい競技が始まり、指導者が選手を指導するというやり方が全く通用しない競技もあります。

選手の方は、他の有力選手のプレーを自身で研究したり、指導者と一緒に答えを探す対等な関係が築かれ、結果を残していますよね。




根性論は「ある時代」で効果的

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根性論が主流で、成果があると思われていた時代にはどんな特徴があったのでしょうか?

先ほどの1960年代から1990年代を振り返ってみると、「試行錯誤の時代」「努力の量の差が大きな時代」「自然に成長が見込める時代」と3つの特徴がありました。


試行錯誤の時代

試行錯誤の時代というのは、「どうすれば」成果が得られるかがわからない時代です。

過去の成功を詳しく分析して、時間をかけながら答えを見つけることも1つの方法です。

とにかく何でも試してみて、失敗を繰り返しながらいい方法を見つける試行錯誤(英:trial and error)はもう1つの方法で、日本国内ではこちらが好まれているようです。

試行錯誤は、「過程を工夫する」「とにかく量をこなす」2つのやり方がありますが、根性論では「とにかく量をこなす」方法がとられました。

1つの成果にたどり着きたい場合、「過程を工夫する」と10回の失敗、「とにかく量をこなす」なら100回の失敗があるとします。

現代なら、失敗は少なく時間もかけない方が良いのですが、「過程を工夫する」ことも知らなかった当時は「とにかく量をこなす」方法が主流になります。

それだけ、失敗が許されていた時代背景ともいえるでしょう。


努力の量の差が大きな時代

努力の量のさが大きな時代というのは、何かの目標を目指す業界やチームの中で目立った工夫や画期的な方法が見つからず、練習量や仕事の量に差がある場合です。

例えば、練習内容がほとんど変わらない時代、県大会を毎年優勝する強豪校は週5日の練習、他の学校は週3日なら2日分の練習量の差は結果に現れます。

そうなると、どの高校ま週5日の練習になり、優勝が危ぶまれる強豪校は週6日、そして休みなく毎日練習へと練習量を増やし、努力の量の差は小さくなります。

時間や場所には限りがありますから、努力の量の差が小さくなると、根性論は行き詰まってしまうでしょう。


自然に成長が見込める時代

自然に成長が見込める時代というのは、ビジネスの分野なら高度経済成長期やバブル期がそういえます。

何もしなくても毎年1.5倍ずつ売り上げが増えるなら、根性論で働く人の労働時間を伸ばしても、変えなくても1.5倍売り上げは増えます。

本当の理由は、「自然に成長が見込める」ためなのですが、根性論で労働時間を伸ばした企業が1.6倍の売り上げだったとすると、「労働時間を伸ばした効果」とすり替えることもできます。




根性論は「かつては主流で今は通用しない方法」

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時代を振り返ってみると、根性論が主流だった頃は「試行錯誤の時代」「努力の量の差が大きな時代」「自然に成長が見込める時代」と根性論が成果を残しやすい時代背景でした。

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令和の現代はどうかというと、試行錯誤の時代は終わり「工夫とアイデアの時代」。

努力の量の差が小さく「努力の質の時代」で、「自然な成長は見込めない時代」といえます。

努力の方向を間違ってはいけない
自分にとって無理な願望に向かって努力するのは、努力の方向が悪いということだ。しかし、無理だと思えないような願望なのに、それに向かって努力してもよい結果が出ないとすれば、それは間接の努力が欠けているのだ。
三輪祐範、幸田露伴超訳 努力論』p3

幸田露伴超訳によると、努力には「直接の努力」と「間接の努力」の2種類があると書かれています。

バッティングが上手くなりない場合、バッティング練習をすることが直接の努力に当たります。

間接の努力というのは、バッティングに関するその他のこと。

全力を出せる健康な体、落ち着ける心、フォームを分析できる冷静な判断力です。

根性論では、直接の努力ばかりが大切にされ、こうしたその他のことが疎かになっていることも、成果が上がらない原因といえるでしょう。

成果を上げられず、デメリットばかり目立つ根性論は、今の時代には向いていないといえるでしょう。



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参考にした本はこちらです

葛西紀明『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』
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平井伯昌『見抜く力―夢を叶えるコーチング』
見抜く力―夢を叶えるコーチング (幻冬舎新書)


堀江貴文『ゼロからはじめる力〜空想を現実化する僕らの方法』
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三輪祐範、幸田露伴超訳 努力論』
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鈴木博毅『 シャアに学ぶ“逆境”に克つ仕事術』
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