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国とは?「人のつながり・歴史・意志」、安倍晋三元総理が残した1冊

『新しい国へ 美しい国へ 完全版』

新しい国へ 美しい国へ 完全版 (文春新書 903)

著者 安倍晋三
株式会社文藝春秋
分類 政治と経済の本
出版日 2013/1/20
読みやすさ ☆☆★読みやすい


2022年9月27日、世界各国の要人の方に見送られながら次の世界へと旅立たれた安倍晋三元総理。

私たちにとって、「総理」といえば顔が思い浮かぶほど身近な存在でした。

アベノミクス桜を見る会など、良くも悪くも大きなイベントが目立ってしまい、安倍晋三元総理が「なぜ政治家になったのか?」「どんな国を目指したのか?」は遠い過去となってしまいそうです。

そうならないためにも、読書ブログとして本を紹介させていただきます。

安倍晋三元総理の紹介


『新しい国へ 美しい国へ 完全版』の著者は、歴代最長の総理大臣を務められた安倍晋三さん。

今回は、私たちに馴染みのある安倍総理安倍元総理と書かせていただきますね。

安倍元総理の経歴

・1954年、東京都出身、政治家の父 安倍晋太郎と母方の祖父 岸信介とともに政治が身近な少年時代を過ごす
・1977年、成蹊大学法学部政治学科を卒業後、南カリフォルニア大学に留学
・1978年、神戸製鋼所に入社、国内の工場や営業所、海外勤務を経験する
・1982年、父 安倍晋太郎に誘われ政治秘書になる
・1987年、妻 昭恵夫人と結婚
・1993年、急死した安倍晋太郎の後を継ぎ衆議院議員に初当選
・2002年、小泉首相金正日総書記との首脳会談に内閣官房副長官として同行、拉致被害者問題に携わる
・2005年、内閣官房長官に就任
・2006年、戦後最年少の内閣総理大臣に就任、『美しい国へ』を出発しベストセラーとなる
・2007年、自民党内で相次いだ不祥事による支持率低下と体調不良で辞任
・2012年、12月16日衆議院議員選挙で自民党が勝利、アベノミクスをスローガンに第二次安倍内閣が発足
・2013年、東京オリンピックの誘致が決定。第42回ベストドレッサー賞を受賞
・2015年、従軍慰安婦問題で関係が悪化していた韓国と日韓合意が取り交わされる
・2016年、リオオリンピックの閉会式にスーパーマリオのコスプレで登場。日曜午前中の人気番組『ワイドナショー(フジテレビ)』に出演する
・2017年11月5日、トランプ大統領が初来日、ゴルフで対戦しながら安全保障と経済連携について重要な提言が行われる
・2018年、世界で最も影響力のある100人に選ばれる
・2019年、いわゆる「桜を見る会」が問題視される
・2020年、世界的に新型コロナが流行、緊急事態宣言などの法整備を行う。体調不良のため内閣総理大臣を辞任
・2022年7月8日、街頭演説中の奈良県で銃撃を受け亡くなる
・2022年7月12日、東京都の増上寺で葬儀が行われる
・2022年9月27日、日本武道館国葬が行われる

安倍総理の経歴は箇条書きでまとめさせていただきますね。


安倍元総理の他の本の紹介

安倍総理の著書は、亡くなられるまで現役の政治家だったこともあってか多くはありません。

もし健在なまま引退されていたら、政治や日本の未来を描いた本を執筆されていたのかなぁと思います。


『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』安倍晋三百田尚樹
日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ

『日本の決意』安倍晋三
日本の決意




『新しい国へ 美しい国へ 完全版』は「聞くように読む」ことがおすすめ


『新しい国へ 美しい国へ 完全版』は、政治と経済の本のジャンルのため所々に難しい用語や畏まった表現が使われています。

本を読みやすくするポイントは、4つのテーマに分けて読んでみることと「聞くように読む」ことです。

「国」「世界情勢」「少子化問題」「教育」の4つのテーマで構成

・まえがき p3~p5
・はじめに−「闘う政治家」「闘わない政治家」p7~p8
・第一章 私の原点 p20~p45
・第二章 自立する国家 p48~p78
・第三章 ナショナリズムとははにか p80~p112
・第四章 日米同盟の構図 p114~p148
・第五章 日本とアジアそして中国 p150~p164
・第六章 少子国家の未来 p166~p202
・第七章 教育の再生 p204~p230
・おわりに p231~p233
・補増最終章 新しい国へp236~p254

全7章と最終章で、それぞれ「国」「世界情勢」「少子化問題」「教育」の4つのテーマで構成されています。

第一章は、安倍総理の紹介も兼ねた政治家を志したきっかけがつづられ、第二章と第三章は「国」のあり方についてまとめられています。

第四章と第五章は、北朝鮮問題や対中関係など日本を取り巻く「世界情勢」をテーマに外交の大切さについて書かれています。

第六章は「少子化問題」、第七章は未来へ向けた「教育」のあり方で他の章よりもページ数が多く、少子化問題と教育、そして若い世代の活躍できる社会を目指すことが安倍総理にとって大切な取り組みだったことを知ることができます。


☆☆★読みやすい

『新しい国へ 美しい国へ 完全版』は、経済用語、政治用語もあり、スラスラ読めるほど簡単に書かれてはいません。

論文のような畏まった文章の中に、力強いメッセージを感じる内容です。

おすすめの読み方は、頭の中で安倍総理のスピーチを思い浮かべ「聞くように読む」と読み進めやすいはずですよ。


安倍総理とは、どんな人だったのだろう?


安倍総理が総理大臣を務められたのは、2006年9月26日から2007年9月26日と2012年12月26日から2020年9月16日でした。

その間に、日本は不景気から立ち直れず、世界は不安定で後半には新型コロナの流行もありました。

期間が長すぎたのでしょうか、アベノミクス桜を見る会といった言葉、東京オリンピック2020の誘致でスーパーマリオのコスプレをされた姿ばかりが印象に残り、「どんな人だった?」のかはうろ覚えです。

安倍総理は、どんな思いを抱いて政治家になり、どんな国を目指したのでしょう?

お身体を悪くされてもお仕事を続けられる真面目な姿や、メッセージを伝える力強い姿の中には、どんな人柄が隠れていたのでしょう?

そんなことを知りたくなり、本を1冊読んでみることにしました。




安倍晋三元総理が政治家を目指した理由


安倍晋三元総理はお父さんが安倍晋太郎さん、お祖父さんは岸信介さんという政治家一族で生まれ育ったことは誰もが知っていることです。

安倍総理ほどの交渉術と発信力があるなら、ビジネスの世界でも実績を残せたはず。

なぜ、政治家という仕事を選んだのでしょう?

安倍晋三さんが政治家を目指した理由

わたしが政治家を志したのは、ほかでもない、わたしがこうありたいと願う国をつくるためにこの道を選んだのだ。政治家は実現したいと思う政策と実行力が全てである。確たる信念に裏打ちされているなら、批判はもとより覚悟のうえだ。
・第一章 私の原点 p44~p45


安倍総理が政治家を志したのは、お父さんの安倍晋太郎に誘われ政治秘書になってからでした。

政治家一家で育った安倍総理は、幼い頃目の当たりにした日米安全保障条約への反対運動、学生時代に起こった学生闘争から、「どんな国がいいのか?」という疑問を抱いていました。

おおよそ10年間、安倍晋太郎さんに付き添い政治の世界を体験され、ご自身が「こうありたいと願う国」をつくるため政治家になられたことが書かれています。


政治家 安倍晋三テーマは?

「自ら反りみて縮くんば千万人といえども吾んかん」
わたしの郷土である長州が生んだ俊才、吉田松陰先生が好んで使った孟子の言葉である。自分なりに熟慮した結果、自分が間違っていないという信念を抱いたら、断固として前進すべし、という意味である。
中略)
古今東西の政治家のなかで、わたしがもっとも決断力に富んでいたと思うのは、英国の首相チャーチルである。
中略)
チャーチルは若い頃から、すぐれた伝統と文化をもつ大英帝国の力を維持するには、国民生活の安定が不可欠だと考え、社会保障の充実を唱えてきた。安全保障と社会保障、実はこれこそが政治家としてのわたしのテーマなのである。
・第一章 私の原点 p44~p45

安倍総理といえば、アベノミクスのように経済を第一にした政治がテーマが印象的です。

テレビで放送される内容は、経済発展の話題が多く、その他のことはどう考えていらっしゃったかは定かではありませんでした。

第一章の終わりには、政治家 安倍晋三としてのテーマは「安全保障と社会保障」なのだと力強く書き残されています。

経済発展は、安全保障の基盤であり社会保障の収入の元、こうありたいと願う国は「国民自身が誇れる暮らしのある国」を目指していたんですね。


安倍晋三元総理が描いた日本「つながり」「歴史」「意志」


「こうありたいと願う国をつくる」ため政治家になられた安倍総理

目指していた「国」というのは、私たちには漠然としていて実体が浮かびにくいのも事実です。

国とは、暮らしている人の「つながり」であり、「歴史」であり、「意志」なのだと本にはつづられています。

人のつながりが国

そもそも、人間はひとりで生きているわけではないし、ひとりでは生きられない。その人の両親、生まれた土地、その人が育まれた地域のコミュニティ、そして、それらをとりまいている文化や歴史から、個人を独立させて、切り離すことはできないのだ。
人は、「個」として存在しているように見えるが、その実体は、さまざものとつながっていて、けっして「個」ではない。国もまた、同じだ。
・第三章 ナショナリズムとははにか p100

私たちには大切な人がいて、住んでいる土地があって、続けている習慣があります。

そこには、培われた歴史があって、これからも変化する文化があります。

そうした「人のつながり」が国の実体、そう言われると曖昧な国という存在がはっきりと見えてきます。


国は人が作り出した歴史

ここでいう国とは統治機構としてのそれではない。悠久の歴史をもった日本という土地柄である。そこにはわたしたちの慣れ親しんだ自然があり、祖先があり、家族がいて、地域のコミュニティがある。その国を守るということは、自分の存在の基盤である家族を守ること、自分の存在の記録である地域の歴史を守ることにつながるのである。
・第三章 ナショナリズムとははにか p100


そして国は、過去から積み重なった現在、そして選択肢がある未来。

国は、政府や国会ではなく、私たちの生活基盤そのものととらえることができます。

国を守るということは、「歴史」を守ることで、それは私たちの存在を守ることにもなっているんですね。


国の存在は平和を守る意志

日本の国は、戦後半世紀以上にわたって、自由と民主主義、そして基本的人権を守り、国際平和に貢献していきた。当たり前のようだが、世界は、日本人のそうした行動をしっかりみているのである。日本人自身がつくりあげたこの国のかたちに、わたしたちは堂々と胸を張るべきであろう。わたしたちは、こういう国のありかたを、今後もけっして変えるつもりはないのだから。
・第二章 自立する国家 p73

わたしたちは、いま自由で平和な国に暮らしている。しかしこの自由や民主主義をわたしたちの手で守らなければならない。そして、わたしたちの大切な価値や理想を守ることは、郷土を守ることであり、それはまた、愛おしい家族を守ることでもあるのだ。
・第三章 ナショナリズムとははにか p112

平和憲法を守る日本は戦後、他の国に力づくで言うことを聞かせたりはしていません。

海外へ軍事力を向けることは、私たちも望んでいることではありません。

ですが、自分たちの大切な人、平和な暮らし、「人のつながり」と「歴史」は、自分たちの手で守らなければならないのでしょう。

もし、海外の国が領土や資源のために私たちの国を奪おうとするなら、侵略者に武器を向けることは、自分の愛するものを守ることそのもののはず。

平和は、自分たちの「意志」で守らなければ保つことはできない。

2022年のウクライナ危機もあり、安倍総理の書かれたことに実感が持てるようになりました。




20代・30代の方へ向けた遺言


『新しい国へ 美しい国へ 完全版』野紹介の最後は、安倍晋三元総理の言葉で締めくくらせていただきます。

国民の前でメッセージを発信することはできなくなりましたが、この本をきっかけに政治に向き合うとはどういうことなのかを考えてみるのも、必要なことではないでしょうか?

本書は、いわゆる政策提言のための本ではない。わたしが十代、二十代の頃、どんなことを考えていたか、私の生まれたこの国に対してどんな感情を抱いていたか、そしていま、政治家としてどう行動すべきなのか、を正直につづったものだ。だから若い人たちに読んでほしいと思って書いた。この国を自信と誇りの持てる国にしたいという気持ちを、少しでも若い世代に伝えたかったからである。
・おわりに p232~p233

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