本当に本が読みたくなる読書のブログ

読書好きのための本当に読みたい本が見つかる書評ブログです。小説、実用書、ビジネス書ジャンルを問わず紹介。読書にまつわる豆知識のお話、文章の書き方のお話もありますよ。

青春小説とは?定義と「年齢」「心」「感性」「体験」の4つの条件

青春小説とは?定義と「年齢」「心」「感性」「体験」の4つの条件


今回は、12の小説のジャンルの中から、中学生・高校生など若者世代の読者さんに人気の青春小説を取り上げさせていただきます。

青春の定義を深掘りして、青春小説の4つの条件を見つけてみました。

青春小説とは?青春の意味を深掘りした青春小説の定義


まずは、青春小説の定義とテーマになる「青春」について深掘りしてみます。

青春小説とは?

青春小説とは、若者の成長、仲間との友情、思春期の恋愛、家族関係、学校生活や将来の夢をテーマにした、若い世代特有の体験を描いた小説とされています。


青春とは?

青春の辞書的な意味は、「夢や希望を抱いて、エネルギーが満ち溢れた青年時代を人生の春に例えたもの」とされています。

青春について語られていたり、書籍に書かれていることも参考にしています。

青春とは時に甘酸っぱく 時に厳しいものだよ
出典:『NARUTOマイト・ガイ

こちらは、人気漫画『NARUTO』の熱血教師キャラ マイト・ガイが10代の登場人物へ向けたセリフです。

青春につきものの友情や恋愛は、優しい「甘さ」だけではなく、若者同士の鋭い感情がぶつかり合う「酸っぱさ」があり、若いというだけで苦労する厳しさもあるとされています。

歳をとっていくら地位や名誉や財力があったところで、足腰が立たなければ楽しみが薄まってしまうのは目に見えているから、楽しみは後に取っておこうなどと思わない方がいい
志村けん

また、コメディアンの志村けんさんは仕事やプライベートでの楽しみに積極的に取り組むことを心がけていらっしゃったようです。

青春は年齢に関係がないことは、日本の青春の定義を示した松下幸之助さんの名言にも残されています。

青春とは心の若さである。
信念と希望にあふれ、勇気にみちて
日に新たな活動を続けるかぎり、
青春は永遠にその人のものである
松下幸之助

松下幸之助さんの「心の若さ」「希望にあふれ、勇気に満ちて」という表現は青春の定義には欠かせないといえますよね。


まとめてみると、青春とは?
・心が若く元気
・希望と勇気があり、時には無謀な挑戦もできる
・感情が鋭く多感な時期
ということになります。


青春小説の条件は10代から20代前半の主人公

青春に年齢は関係ないとは言っても、「40代の主人公が夢を追いかけ恋をする小説」を10代の読者さんが読んだとしたら……。

「親と同じ年の大人が何やってるんだか」

と冷めた目で見られてしまうことでしょう。

青春小説は、中学生・高校生・大学生くらいの10代から20代前半を読者層の対象にしていることもあり、文学賞の募集要項ではいくつかの条件があります。

みずみずしい感性で青春を描いた物語
出典:川端康成青春文学賞
川端康成青春文学賞/茨木市

主人公の年齢:高校生~大学生
主人公の等身大の悩みを深く掘り下げた小説。
出典:青春小説大賞2022
青春小説大賞2022 byスターツ出版 | 小説サイト ノベマ!

青春小説大賞と川端康成青春文学賞の募集要項では、登場人物の中でも主人公が10代から20代前半で、若い世代特有の体験を共感できる作品とされています。




青春小説の条件は「年齢の若さ」「心の若さ」「感性の豊かさ」「特有の体験」の4つ


若者の成長、仲間との友情、思春期の恋愛、家族関係、学校生活や将来の夢をテーマにした、若い世代特有の体験を描いた青春小説。

青春小説とは?の答えに、次の4つの条件があるといえます。

年齢の若さ〜主に青少年の時期(10代から20代前半)
心の若さ〜心が若く元気、希望と勇気があり、時には無謀な挑戦
感性の豊かさ〜感情が鋭く多感な時期
特有の体験〜若い世代特有の体験(友情や恋愛など)


年齢の若さ

青春小説では、主に青少年の時期(10代から20代前半)の主人公が活き活きと描かれています。

「青春そのもの」に年齢的な制限はありませんが、青春小説を読む読者さんが共感しやすいよう、登場人物の中でも主人公の役割には中学生、高校生、大学生、社会人の年齢層が担っています。

青春小説大賞で「等身大」という表現がされているように、読者さんに近い目線で活躍してくれる登場人物が欠かせません。


心の若さ

心が若く元気で希望と勇気を持って、時には無謀な挑戦ができることは青春の醍醐味です。

主人公や準主人公が10代でも、社会の現実を知り過ぎていて、半ばあきらめムードでは青春小説とはいえないはずです。

年齢の若さ以上に、心の若さは青春小説に欠かせない条件です。


感性の豊かさ

青春を思い返してみると、感情が鋭く多感な時期だったなぁと思うのは大人から私だけではないはずです。

素敵なことは涙を流して感動し、悲しいことは大きな声を上げて悲しむ。

いい意味でも、悪い意味でも感情が鋭く、受け取ることも表現することも多感な気持ちで表現されていることが、青春小説では大切なことなのではないでしょうか。


特有の体験

青春小説の辞書的な意味に、若い世代特有の体験(友情や恋愛など)が描かれていることとあります。

友達ができることも、恋愛をすることも大人になってもできることです。

若い世代特有の体験とは、「不器用な選択」ではないかと思います。

不器用な選択というのは、友達同士が時間が経てば解決する揉め事をお互いストレートに解決しようとして喧嘩になってしまう。

本当は、相手も自分に好意があって相思相愛になれるのに、一歩進めなくてすれ違ってしまうといった体験です。

なぜ、不器用な選択は起きるのでしょう?

それは、感性が豊かすぎて気持ちのまま突き進んでしまったり、反対に引きすぎてしまったりするからでしょう。

大人目線で清々しい、中学生や高校生の読者さん目線で共感できる体験が青春小説には欠かせない条件といえます。




王道の青春小説と別のテーマを取り込んだ作品


「年齢の若さ」「心の若さ」「感性の豊かさ」「特有の体験」が青春小説の4つの条件でした。

今まで読んだ中から、王道の青春小説、ビジネスのテーマを取り込んだ斬新な青春小説、青春ミステリー小説のジャンルが生まれるきっかけになった作品を紹介させていただきます。

『島はぼくらと』辻村深月

島はぼくらと (講談社文庫)

年齢の若さ☆☆☆〜4人の高校生男女
心の若さ☆☆☆〜好奇心が勝る行動力
感性の豊かさ☆☆☆〜4人それぞれの個性
特有の体験☆☆☆〜限られた3年間の出会いと悩みと感動と旅立ち

王道の青春小説と人気が絶えない作品は、辻村深月さんの『島はぼくらと』でしょう。

関西のとある離島を舞台に、フェリーで通学をする4人の高校生男女の3年間を描いた物語。

登場人物の4人は、1人1人がキラリと光る感性の持ち主。

主人公の女の子朱里は素朴さと素直な感性、おしゃれ女子の衣花は裏表のないストレートな感情、男の子の新はうちに祕めた繊細さを演劇の才能に活かし、爽やかさと高揚する感情でときに悪ぶる源樹。

島の暮らしと通学先の街との差を感じ、大人の世界と触れた反発と、大人に近づくにつれ受け入れながら前へ進む姿。

決められているかのように訪れる、旅立ちへ向けて過ぎる時間、いつまでも読み続けたいと思える作品です。


小説の神様相沢沙呼

小説の神様 (講談社タイガ)

年齢の若さ☆☆☆〜男女の高校生作家のダブル主人公と文芸部員
心の若さ☆☆☆〜家庭の事情、個人の事情に向き合う勇気
感性の豊かさ☆☆☆〜ネガティブで優柔不断、アクティブで繊細と対象的な2人
特有の体験☆☆★〜小説執筆の分担は経験豊富なプロ作家顔負け

ビジネスのテーマを若者目線で描く斬新な青春小説が、相沢沙呼さんの『小説の神様』。

男子高校生作家 千谷一也は、3年前に新人賞デビュー以降は売れない小説家へ転落し、冴えないと実感しながらも、どこか諦めた暮らしを送っていた。

そんなある日、クラスに芸能人のような美人転校生の小余綾詩凪が現れた。

実は彼女は、ストーリー構成に定評のある大人気女子高校生作家という肩書きで人気作品を何作も生み出していた。

妹の治療費を稼ぐため、何としても次回作をヒットさせたい千谷一也。

ストーリー構成のアイデアは抜群でも、ある理由で続編を書かなくなった小余綾詩凪は、共同作業でとある物語にとりかかることに……。

経済小説のような細かな設定も組み込まれていますが、ストーリーは清々しい青春小説。
映画化もされ、人気の絶えない作品です。


『砂漠』伊坂幸太郎

www.yu-hanami.com

年齢の若さ☆☆☆〜麻雀にちなんだ名前の男女6人の登場人物
心の若さ☆☆☆〜身近な生活圏を飛び出す勢い
感性の豊かさ☆☆★〜理性的な登場人物で大人のやり取りも垣間見える
特有の体験☆☆☆〜恋愛も入り交じる10代後半の友人関係

青春小説の新しいジャンルとされている作品が、伊坂幸太郎さんの青春ミステリー小説『砂漠』です。

麻雀にちなんだ名前の男性3人女性3人の登場人物は、大学入試や就職で集った仙台で出会う。

何かの目的のために意気投合というより、たまたまがきっかけで生まれた友情。
10代後半の友人関係って何故か自然に生まれる、ふと懐かしさを思い出させてくれる作品です。

ストーリーに散りばめられた伏線回収にも目が離せない、謎解きの楽しみもある青春ミステリー小説です。



青春小説とは?つまり?


青春小説とは?

若者の成長、仲間との友情、思春期の恋愛、家族関係、学校生活や将来の夢をテーマにした、若い世代特有の体験を描いた小説とされています。

青春小説として認められるには、「年齢の若さ」「心の若さ」「感性の豊かさ」「特有の体験」の4つの条件が必要です。

もちろん、4つの条件があってもストーリーは様々で魅力的。

『島はぼくらと』のような王道青春小説、ビジネスの要素もある『小説の神様』、青春ミステリー小説というジャンルが生まれた『砂漠』は条件を満たしながら独自のテーマをストーリーの中に溶け込ませた作品といえますよね。

さらに他のジャンルのテーマも含んだ青春小説については、次回の更新でまとめさせていただきますね。


にほんブログ村 本ブログへ