『ハングリーであれ、愚かであれ。スティーブ・ジョブス 最強脳は不合理に働く』
著者 竹内一正
出版社 朝日新聞出版
分類 ビジネス書
出版日 2011/7/30
読みやすさ
今回の本の紹介は、偉人スティーブ・ジョブスの功績を経営の専門家が解説されたビジネス書です。
10年前に初めて読んでから、本棚から取り出しては度々読んでいた本。
身近にありすぎて、紹介が遅れてしまいました。
著者はビジネスの専門家 竹内一正さん
著者の竹内一正さんは、アップルに勤務されたこともあるビジネスコンサルタントさんです。
ビジネスコンサルタント竹内一正さん
著者は、経営に関するビジネス書を手掛けるビジネスコンサルタントの竹内一正さん。
大学を卒業後、松下電気で新規事業と海外進出に携わった竹内さんは、何と偉人スティーブ・ジョブスが現役だった頃のアップルに勤務された経験もあります。
アップルの中にいたからこそ体験できたスティーブ・ジョブスの存在感が、専門の経営学とともに語り尽くされています。
竹内一正さんの本の紹介
アメリカのIT企業に精通した竹内一正さんの本は、スティーブ・ジョブスについて書かれた本が多くを占めています。
スティーブ・ジョブスが亡くなった後は、イーロン・マスク氏やGoogleの動向に注目したビジネス書を出版されています。
『スティーブ・ジョブズ 神の策略』
『イーロン・マスクはスティーブ・ジョブズを超えたのか』
『サイテーの偉人 スティーブ・ジョブズに学ぶ これからを生きる7つのレッスン (世の中への扉)』
スティーブ・ジョブスの人生に照らし合わせた読みやすいビジネス書
『ハングリーであれ、愚かであれ。スティーブ・ジョブス 最強脳は不合理に働く』は、スティーブ・ジョブスの一生を描いた功績を、著者の経済学や心理学の専門知識を元に解説された読み進めやすいビジネス書です。
「Stay Hungry,Stay Foolish」をテーマにした7章構成
・はじめに p9~p16
・1.金欲 p18~p33
・2.浮上 p39~p58
・3.失墜 p60~p82
・4.復活 p84~p117
・5.創造 p120~p155
・6.変化 p158~p183
・7.突破 p186~p220
・スティーブ・ジョブス略歴 p221~p223
・おわりに p224~p238
『ハングリーであれ、愚かであれ。スティーブ・ジョブス 最強脳は不合理に働く』は、スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業生へ向けたスピーチの名言「Stay Hungry,Stay Foolish」を元にアップルの創業から、解任されてから荒廃した会社を立て直すまでを書き残した1冊です。
☆☆★読みやすい
竹内一正さんの専門はビジネスコンサルタントですが、本の内容は経済用語が例えや置き換えで解説されています。
心理学や有名な物語に例えられたスティーブ・ジョブスの偉業の理由は、経営やITにうとい私でもわかりやすい内容でした。
それぞれの章も20ページ前後にまとめられ、普段本を読まない方でもスキマ時間で読み進められるビジネス書です。
本に出会ったのはスティーブ・ジョブスの亡くなったあと
2010年当時iPhoneを利用していた私は、仕事に必要なプレゼンテーションを学ぶため、『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』を教科書に勉強していました。
既に偉人スティーブ・ジョブスは亡くなっていて、功績や伝説を書き残した本が多く出版されていました。
プレゼンテーションの教科書に取り上げられるお手本の人物で、iPhoneを作ったタートルネックのアップル創業者。
私がスティーブ・ジョブスについて知ってるたのは、その程度のことでした。
プレゼンテーションを学ぶうち、お手本になっていた人物を知りたくなり手に取った本が『ハングリーであれ、愚かであれ。スティーブ・ジョブス 最強脳は不合理に働く』です。
なぜハングリーで愚かな方が良いのか?
「Stay Hungry,Stay Foolish(ハングリーであれ、愚かであれ)」
スタンフォード大学の卒業生へ向けたスピーチの名言が生まれた背景には、アップルを創業してから、暴風と荒波の中を駆け抜けたスティーブ・ジョブスの経験から生まれたものでした。
著者の竹内一正さんは、「失墜」「暗黒の9年」「切り替え」の3つのポイントに注目して解説されています。
敗北
社内で暴走するジョブズと、それを止められないスカリーに、アップル社員たちからも批判が公然と起こり、ジョブズとスカリーはついに全面対決となった。
ジョブズのわがままに何年間も振り回され嫌気がさしていたアップル幹部たちが、紳士的な経営者スカリーの側についたのは当然の成り行きだった。1985年、アップルを創業し時代の寵児となった若き億万長者スティーブ・ジョブスは自らが作った会社を追放された。
3.失墜 p66
1976年にジョブズが創業した株式会社アップルは、1977年にパソコンの基礎になった「Apple II」のヒットとともにアメリカを代表するIT企業へと成長します。
1985年、世界へ向けて販売された「Macintosh」の販売不振と社内の経営権争いの結果、ジョブズはアップルをおわれることになってしまいます。
著者の竹内一正さんは、ジョブズの成功から転落までを「失墜」と表現し書き残しています。
暗黒の9年
アップルを強く愛し過ぎたゆえに、アップルへの欲求不満と攻撃性は極めて強くなってしまい、そのためネクストでのジョブズのあらゆる行動はいつでもアップルが比較対象となった。その後ジョブズが「暗黒の9年」を過ごすことになる原因はここにあった。
3.失墜 p73~p74
アップルを去ったジョブズは、アニメ制作会社ピクサーを買収し、自分でもソフトウェア開発会社NeXTを設立します。
設立当初のNeXTを第二のアップルに成長させようとしたジョブズは、アメリカ国内や海外の大規模な企業との競争に悩まされる「暗黒の9年」を過ごしたとあります。
切り替え
最強の経営者ジョブズとて、時代の変化に逆らって勝利したことはない。パソコンがハードウェアの時代からソフトウェアの時代に変わったのに、ハードで商売をやり続けようとしたジョブズはネクストで大失敗した。逆にiPodにしてもiPhoneにしても市場の変化を認識したから、その波に乗ることができジョブズは成功できたのだ。
4.復活 p110~p117
「暗黒の9年」の中で、時代の変化を敏感に感じ取ったジョブズは、NeXTをソフトウェアの開発へ切り替えることを決断します。
新しく開発されたオペレーティングシステム(OS)は、ジョブズが去り経営不振に陥っていたアップルを救うことになります。
古巣に求められ、年俸1ドルでCEOに就任したジョブズは、iPodとiPhoneの大ヒットを生むことになります。
スティーブ・ジョブズがこだわったこと
華やかなiPhone発表の舞台に立つタートルネックのスティーブ・ジョブスは、普段はどんなことを大切に仕事に取り組んでいたのでしょう?
私が、今とこれからに大切だなぁと思うことに「現場主義」「ユーザー目線」「失敗」の3つ内容を取り上げさせていただきますね。
現場主義のメリットとデメリット
経営トップでありながら、設計の細部に口を出すジョブズ流のマネジメントはリスクが高いことも確かだ。ジョブズの直感がピタリと的中しているうちはいいが、外れると被害は甚大になる。ネスクトキューブでハードウェアのデザインに懲り過ぎたり、ピクサー・イメージ・コンピューターの製品価格を高く設定し過ぎたり、ユーザー感覚と違う着地点にジョブズの直感が突き刺さってしまったときは、悲惨な結果をもたらし会社は赤字に陥った。ただし、21世紀に入ってからのジョブズは直感がピタリと当たっていることは、これまた紛れもない事実だ。
7.突破 p207~p208
スティーブ・ジョブスがマネジメントで最もこだわったことに、経営者が現場に出向く現場主義があります。
中小企業の多い日本国内では、経営者も従業員とともに汗を流す働き方は一般的ですが、欧米では経営者は企業の意思決定と収益に集中する働き方が一般的とされています。
現場主義は、商品づくりと企業の目的が一致すると業績は上がり、現場も上手く回るメリットがあります。
一方、竹内一正さんが指摘されているように経営者の「悪いこだわり」や「頻繁な方針変更」が起きると、現場は混乱し悲惨な結果をもたらすとされています。
ユーザー目線
マッキントッシュもiPhoneも「普通の人が使う」という極めて当たり前ながら困難な制約から作り出された製品だった。「普通の人」は気まぐれで移り気だ。なにより努力を嫌がる。専門家なら製品と人とのギャップを努力で埋めるのだが、わがまま極まりない普通の人はそんなことはしてくれない。だから、普通の人が使う環境とは困難で複雑な制約そのものだ。しかし、そんな大変な制約があるからこそ、人は頭を絞り、独創的なものが生み出せるのである。
5.創造 p152
また、ジョブズがこだわったことに「徹底したユーザー目線」があります。
業績悪化の責任を追ってアップルを去ることになった出来事、「暗黒の9年」の中NeXTで重ねた苦労からジョブズが行き着いたものづくりの答えと解説されています。
私も含めて、「普段使い」のものを求めているユーザーは、とてもわがままです。
IT機器として高性能でも使い方が難しければ、「使い勝手が良くない」と不満をいだきます。
使い勝手もデザインも良くても、値段が高ければ「コスパが悪い」と買ってはくれないでしょう。
失敗、諦めの悪さ
人生のスタートに多少つまずいても、諦めず努力することで脳は機能を高めていく。カネなし、コネなしで大学中退の私生児ジョブズが成し遂げた輝く多くの成功には、それ以上の数の失敗があることを思い出して欲しい。ネクストでもピクサーでもジョブズは手痛い失敗をしても諦めず努力を続けたから稀代の栄光を手にできたのだ。
5.創造 p155
成功の影には、失敗がある。
偉人スティーブ・ジョブスでさえ、功績以上の失敗があったことが『ハングリーであれ、愚かであれ。スティーブ・ジョブス 最強脳は不合理に働く』には書かれています。
失敗を繰り返すことはもちろん、1回の失敗さえ許されない日本の環境は、工夫と努力をくじいてしまうのかもしれません。
諦めず努力を続けるためには、失敗を取り返せる環境が大切なのでしょう。
Stay Hungry,Stay Foolishの受け取り方
「Stay Hungry,Stay Foolish(ハングリーであれ、愚かであれ)」
スティーブ・ジョブズ
スタンフォード大学の卒業生へ向けたスピーチは、直訳すると「ハングリーであれ、愚かであれ」が正しい翻訳とされています。
ですが、ジョブスのファンの方のコラム、経営者の方のサイトでは受け取り方が違う方もいらっしゃるようです。
【熱中】
「Stay Hungry,Stay Foolish(貪欲に求めて、バカになるほど熱中しよう)」
Foolishという単語は、「愚か」という意味の他に「野球バカ」「サッカーバカ」のように「熱中する」という意味もあるようです。
10代の方が夢を持って行動するときに、勇気づけられる言葉ですよね。
【継続】
「Stay Hungry,Stay Foolish(根気よく、バカと思われても続けよう)」
また、Stayを「継続」と受け取るなら、先ほどの「○○バカ」と合わせて継続が大切と受け取ることもできます。
【一途】
「Stay Hungry,Stay Foolish(呆れられても一途になろう)」
Foolishを「○○バカ」、Stay Hungryを「一途」と受け取るなら、私はこの意味が1番好きです。
人間関係では少々危うい意味になってしまいますが、仕事や趣味なら「まっすぐ進め」と背中を力強く押してくれるようで、とても好きです。
一歩が踏み出せない時、勇気をくれる1冊
『ハングリーであれ、愚かであれ。スティーブ・ジョブス 最強脳は不合理に働く』を読んでから10年が過ぎますが、当時のスティーブ・ジョブスが時代の先に進んでいたこともあり、いつ読んでも勇気をもらえる1冊です。
進路に悩む10代の方、仕事に初めてつまづいた20代の方、将来が気になる30代の方、何かを始めたくなった40代の方。
どの世代の方にも、おすすめの本ですよ。