『ツナグ 想い人の心得』
著者 辻村深月
出版社 株式会社新潮社
分類 ファンタジー小説
出版日 2022/7/1
読みやすさ ☆☆☆とても読みやすい
生きている間も
死んでしまってからでも
1度だけ会えるとしたら
あなたは誰に会いますか?
その相手は、会ってくれますか?
120万部を記録した辻村深月さんのベストセラー『ツナグ』の続編、『ツナグ 想い人の心得』を紹介させていただきますね。
『ツナグ 想い人の心得』の登場人物
『ツナグ』で祖母から受継いだ使者(ツナグ)の主人公 渋谷歩美。
依頼人と使者(ツナグ)として出会った誰かとは、縁が紡ぐこの世での巡り合わせでもある。
渋谷歩美(しぶや あゆみ)
代官山のおもちゃメーカー『つみきの森』で企画担当として働く、社会人2年目の24歳。
端正な顔立ちと穏やかな物腰で、周りの人々との信頼関係を築いている。
デザイン学科の大学を卒業し、子どもから親まで評判がいい人気おもちゃメーカーで入社初めての商品企画を進めている。
死者との面会を叶える、使者(ツナグ)の役目を引き継いで7年。
相談に来る人々の、「生」と「死」に向き合い続けていた。
秋山杏奈(あきやま あんな)
渋谷歩美の親戚に当たる、由緒ある占い師の家系の当主。
8歳らしい可愛らしい服装と、子どもらしくない言葉づかいと頭の回転で初対面の大人を驚かせることもしばしば。
家では、まだまだ身の回りのお世話が必要で人気テレビ番組にのめり込む子どもらしい姿を見せる。
紙谷ゆずる(かみや ゆずる)
「プロポーズの心得」に登場する24歳の新人俳優。
10代から俳優を目指し貪欲に努力を重ね、戦隊ヒーロー番組に出演し子どもたちと母親からの人気を集めている。
気になる女性が抱える過去の出来事を解決するため、都市伝説と半信半疑ながら使者(ツナグ)を探していた。
嵐美砂(あらし みさ)
紙谷ゆずるとともに、役者の道を進む24歳の新人俳優。
学生時代から演劇学校で下積みを重ね、舞台で演技力が輝く本格派女優と呼ばれている。
紙谷ゆずるからの告白を、「幸せになってはいけない」という理由で断り続けていた……。
鮫川老人(さめかわ)
「歴史研究者の心得」に登場する、70代の元校長先生。
分厚い眼鏡と、上ボタンまで留めた威厳の漂う風格。
教諭時代は古典を担当し、定年退職後は新潟県で歴史の研究をしながら暮している。
戦国武将に平和主義を貫いた武士 上川岳満(うえかわ がくまん)との面会を臨んでいた。
重田美里(しげた みさと)
「母の心得」に登場する、やつれた印象を受ける30代後半の女性。
夫 重田彰一(しげた しょういち)とともに、5年前に水難事故にあった当時6歳の娘 重田芽生(しげた めい)との面会を望んでいた。
夢で頻繁に見るほど止まった時間、縁が手繰りよせた使者(ツナグ)との出会いで進む先は……。
小笠原時子(おがさわら ときこ)
「母の心得」に登場する、70代とは思えないほど姿勢がよく気品のある服装の女性。
ドイツ人との国際結婚し、20年前に病気で亡くなった娘の瑛子・ビルクナーとの面会に希望を抱いていた。
初対面で常識的には異質な使者(ツナグ)にも、柔らかな笑みと上品な物腰で接する。
鶏野奈緒(とりの なお)
『つみきの森』の商品を製作する、軽井沢の家族経営の鶏野工房で働く27歳の看板娘。
細やかな気遣いで評判が良く、経理や事務をこなす傍ら密かに職人を目指している。
インテリアデザイナーの父親の代から付き合いのあるおもちゃ製作所は、白樺の森と加工中の生木の香りが重なる「生きた職場」でもあった。
蜂屋茂(はちや しげる)
「想い人の心得」に登場する85歳を迎えた料亭のオーナー。
何度も断られ続けても、数年に1度同じ相手に面会を申し込む祖母アイ子の頃からの使者(ツナグ)のお得意様。
今回の面会は、はたして……。
使者(ツナグ)との縁
何度願っても、使者(ツナグ)を見つけられない人も、使者(ツナグ)との電話につながらない人もいる。
特に必要に迫られていなくても、ふとしたつながりがきっかけで使者(ツナグ)にたどり着く人もいる。
一直線の線ではない、立体的に交差し影響し合うつながり、それが使者(ツナグ)との縁と呼ばれていた。
舞台は東京、この世とあの世の中間の一室
会いたいと思う想い人とこの世を離れた人、
ただ1回会えるのは東京都品川区内のホテルの一室。
月の光が照らす満月の夜、夜空に月が登り薄明かりに消えるまでの限られた時間、生きていた頃と変わらない姿で会話を交わし、触れ合うことができる。
この世の心得とあの世の想い人
この世を離れあの世へ旅立った人、この世に残る人、命が限られているこの世と、時間の概念が曖昧なあの世とでは時間の限られた別れなのかもしれない。
この世に残る人にとっての感じ方は、永遠の別れ……。
自身の命が続く限り、もう会うこはできない、そう受け入れることが会いたい側の心得なのかもしれない。
あの世へ旅立った人にとっては、会いたい人からの申し入れがあるまで待ち続けることも、断ることもできる。
ただ、この世に残る人と会えるのは1回だけ。
その1回が、この世とつながれる最後の機会。
待ち続ける側の方が、もしかすると想い人なのかもしれない。
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