アキラとあきら
著者 池井戸潤
出版社 株式会社 徳間書店
分類 小説
出版日 2017/5/7
読みやすさ ☆☆★読みやすい
今回は、手に取った瞬間に中も読まず衝動買いしてしまった池井戸潤さんの新作文庫、『アキラとあきら』の紹介です。
この本は池井戸潤さんの作品の中でも珍しくなっ2017年5月31日に文庫で初版が販売されたあと、7月9日からWOWOWで連続ドラマ化された作品です。
向井理さんと斎藤工さんの主演でドラマ化されましたが、見た方はいますか?
読み終わると俳優と登場人物が妙に重なる感じがして、ドラマがレンタルされるのも楽しみにしたい1冊ですよ。
登場人物
山崎瑛
1人のアキラは柑橘系の香りと潮風が吹く海沿いの街で部品工場を営む父山崎孝造、母と妹、千春、迷い犬だったチビと暮らす少年。
海沿いの街で浴びる潮風と柑橘系の香りに抱かれる、裕福とまではいかないまでも感受性を高める環境と人としてのあり方を築くには恵まれた環境で暮らす小学生。
父の営む部品工場は地域の有力企業の下請けで生計を立てていましたが、有力企業と下請けの力関係により存続の危機に………小学生の山崎瑛の今後の行き方に影響する出来事が………。
海堂彬
もう1人のあきらは山崎瑛とは対照的な環境で少年時代を過ごしていた。
海運会社の大企業、海堂郵船を収める父の海堂一麿の元、少年時代から大人の欲望の交差する世界に身を置きながら、ビジネスマンとしてのあり方を叩き込まれていた。
海堂彬が人としての心を養うきっかけが、常に味方で1人の孫として接してくれた祖父の死。
大企業の跡取りとして大切に、そして厳格に育てられた海堂彬の進む道は………。
物語の始まり
物語は主人公のアキラとあきらの1人、山崎瑛の少年時代から始まります。
厳しい経営に晒される父山崎孝蔵の営む部品工場。
その仕事のあり方が、少年山崎瑛の日常をも飲み込みつつあった。
場面は変わり、もう1人のあきら海堂彬もまた、裕福で物や暮らしに困ることはなかったが、大人の欲望、人の醜さを当たり前のように見なければならない暮らしを送っていた。
慕っていた祖父の死、唐突な喪失により海堂彬の運命もまた大きく動き出していく。
安定成長期とバブルの好景気、バブル後の景気低迷の波打つ世界
世界観はアキラとあきらの少年時代はおそらく安定成長期と呼ばれる1980年代前半、不景気とは無縁の中で「頑張れば裕福になれる」の価値観の元に社会が回っていた時代。
その後のアキラとあきらの2人が学校を卒業し就職する時期は1980年代後半、バブル景気の真っ只中、誰もが一獲千金を夢見た世の中でした。
2人のアキラとあきらは経済が激しく上下する激動の時代を生き抜いていくことになります。
キーワードは巡り会い、テーマは人のため?
2人の人物の人生が詰まった『アキラとあきら』は一般的な文庫本2冊分の厚さ、その中に込められたキーワードは「巡り会い」。
2人のアキラとあきら、山崎瑛と海堂彬はお互いを知る前から幾度となく同じ場所に存在していました。
お互いの立場が違うと同じ場所にいても知ることはできないもの、それを2人は覚えているのだろうか?
そして『アキラとあきら』に込められた池井戸潤さんの思い、今回のテーマは「人のため」にどうするべきかです。
私も含め、人は自分のことをまず考えがち、仕事でもそうなりがちですね。
厳しい日常を過ごした山崎瑛、暮らしには恵まれたが人の醜さに晒された海堂彬、2人が「人のため」に考えつく答えが物語のラストにあります。
池井戸潤さんの作品は「ビジネス小説」と呼ばれるジャンルだけあって、ビジネス業界の仕組みを勉強するのにも役に立ちますね。
知らない業界の勉強はためになります。
それでは、また次回!
池井戸潤さんの作品はこちらでも紹介しています。
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