ハリー・ポッターシリーズの理想のラストシーンを考えてみる【ネタバレ】
「シリウスは生きているかも」
ハリー・ポッターファンなら1度は思ったことがあるシナリオ。
今回は、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で死んでしまったシリウスが「もし生きていたら」をテーマに二次創作を書かせていただきました。
※本作品はJ・K・ローリング著作ハリー・ポッターシリーズの二次創作物に当たります。二次創作物に関する但し書きなどは末尾をご参照下さい。
- ハリー・ポッターシリーズの理想のラストシーンを考えてみる【ネタバレ】
シリウスが復活するなら!「ホグワーツの戦い」までの条件〜『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』でシリウスは意識不明の重傷を負う
史実通りなら、ハリーの名付け親シリウス・ブラックは、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の「魔法省の戦い」で命を落とします。
魔法省の戦いは、ハリーの記憶を巡り「不死鳥の騎士団」と「死喰い人」が魔法省の神秘部で繰り広げられた戦い。
戦いの中、死喰い人の幹部ベラトリックス・レストレンジの「死の呪文」を受けたシリウスは、神秘部のアーチを超えて「手の届かないところ」へ旅立ったとされています。
死んでしまった後、生き返るのは魔法の世界でも現実的ではないと思います。
そこで、シリウスはハリーを庇い、死喰い人数名の放った失神呪文を受け、いつ目が覚めるか、もう覚めないのかはわからない意識不明の重傷を負って聖マンゴ病院で治療中ということにしておきましょう。
シリウス・ブラックは死なない、ベラトリックス・レストレンジを倒してブラック家の伝統を壊す
物語は、シリウスは意識不明のまま「ホグワーツの戦い」へと向かいます。
ヴォルデモートの分霊箱を全て破壊し、残るのはヴォルデモート自身と分身とも言えるヘビのナギニ。
死喰い人を引き連れ、ホグワーツへハリー遺体(本当は生きている)を目の当たりにしたホグワーツ側の魔法使い。
ネビル・ロングボトムとヴォルデモート卿のやり取りの後、生きていたハリーを目にしたホグワーツ側の反撃から戦いは、最後のシーンに突入。
シリウスは「ホグワーツの戦い」で復帰
徐々に劣勢になる死喰い人。
その中で、杖を鞭のように振い、不死鳥の騎士団を圧倒する魔法使い。
死喰い人の幹部でヴォルデモート卿が最も信頼している副官ベラトリックス・レストレンジ。
狂気を宿した目の先には、ハリーの恋人、親友ロン・ウィーズリーの妹ジニーが…
「汚らしく血を汚す小娘が!」
磔の呪いがジニーを立ったまま茨の十字架にかけて弄ぶ。
2人の間に割り込もうとするハリーを追い抜き、赤い閃光がベラトリックスへ向かった。
仰け反るように失神呪文を避けたベラトリックスの杖が緩み、駆け出したハリーの手に倒れこむジニー。
「私が思うに、これが息子の晴れ舞台を見る父親の気持ちなんだろう?なぁジェームズ」
杖をペン回しのように玩びながら、ハリーに向け父親の名前で呼びかける。
もう慣れてしまった呼び間違い主は、ハリーの名付け親シリウス。
優しさの中に、どこか子ども心が抜けず殺伐とした戦いを楽しんでいるかのような笑顔を見せ、肩に置かれた暖かい手。
「ハリー、こういう汚れ役は、私に任せておくといい」
そのまま力強くハリーを後ろへ追いやると、階段を駆け上がり颯爽と杖を構えた。
死喰い人の副官ベラトリックス・レストレンジを打ち破る
ハリーがヴォルデモート卿のヘビを仕留めるため後にした動く階段では、死と生が交差するように赤と緑の閃光が飛び交う。
「ブラック家の汚点、貴様と血が繋がっていると思うだけで!アバダケダブラ!」
「どーした、息が上がったか?私に言わせれば、ブラック家の方が汚点のようなものだ」
死喰い人の中でも、ヴォルデモート卿から直接闇の魔術の手ほどきを受けたベラトリックスも両手で数えるほどの闘いの後では、1つ1つの魔法を放つのに時間がかかるほど疲労を見せている。
一方で、今さっき闘いに到着したシリウスは緑の閃光を避け、それ以外の魔法は盾の呪文で軽々捌く余裕を見せる。
互いに詠唱を行わない、素早い無言呪文の応酬。
「これで…(レヴィコーパス:身体浮上)、良い眺めだ!」
「おのれ!(リベラコーパス:身体自由)、ふざけた真似を!(ディフィンド:裂けよ)」
足を空中に吊り下げられたベラトリックスが、素早く反対呪文で元に戻ると同時にシリウスの首を目がけ「切り裂きの呪い」を放つ。
パンチをかわすように避けた、シリウスの長髪がわずかに切れる。
着地したベラトリックスは階段を駆け降りようと、そのままの体勢で両膝と左手をついてしまった。
「永久粘着呪文、お前の大好きなブラック家に伝わる魔法さ」
「おのれぇ!アバダケダブラ!」
不完全な体勢から、右手だけで放たれた緑色の閃光を難なく避けるシリウス。
「(ペトリフィカス・トタルス:石になれ)、お前に聞くのもどうかと思うが、何か言うことは………ないか(エクスパルソ:爆破)」
膝をついた体勢から、「全身金縛り術」を受け、問いかけに答える間も無く「爆破呪文」で粉々に砕け散る1人の女性。
彼女の生き様を表しているかのような黒光りする砂が、さらさらと地面に落ちた。
「ブラック家は、自分たちが滅びるべきだと知らなかったようだな」
砂になったベラトリックスに向かってか、それとも最後の1人となった自分に向かってか、他の誰にも聞こえないほどの声を向け、シリウスは闘いの場を後にした。
ヴォルデモート卿、ニワトコの杖の持ち主ではなくても………最後の声は?
「分霊箱を壊しただけで、俺様を葬れると本気で思ったのかハリー・ポッター!」
最後の分霊箱、ヘビのナギニを失った闇の帝王。
持っている命は、今の体に宿る1つだけ。
スネイプから奪ったニワトコの杖、本当の持ち主ではないと告げられ、薄々感じていた不安が全て現実となってゆく。
それでも、目の前の子どもを退けるだけの魔法力も積み上げた呪文も余るほど持ち合わせていた。
「母親の守りが闇を退け、老人どもの悪知恵が、杖の悪戯が貴様を守った!その時、お前は何をしていた?」
緑の閃光がハリーをかすめる。
人の持つかけがえのない生を、ただ掠め取るだけの残酷な光。
「ただの子どもが、世の中が褒め称えた“だけ”の愚かな英雄が、闇の魔術の全てを知る帝王を倒せると!?大きな思い上がりというものだハリー・ポッター」
瞳孔が縦に締まり、獲物から片時も離れることのない残酷な目線。
もう、どちらかが死ぬことでしか2人に先はないのだろう…
瓦礫を押しのけ立ち上がろうとするハリーの耳に、懐かしいような、そうではないような声が響く。
「(わしの方が、多くを見て、多くを語った。きみには、死に対して支払うべき経験が、まだ足らんようじゃな)」
「禁じられた森」でヴォルデモート卿の「死の呪い」を受けて見た、キングズクロス駅の声が再び聞こえた。
夢の中のような、曖昧で哲学的ではないダンブルドアの「生きろ」という思いが問いかけてきた………そして………………。
アナザーストーリーのその後
闇の帝王は、「ホグワーツの戦い」でハリー・ポッターと決闘し破れた。
今は存在しない「ニワトコの杖」の所有権の違いで、ヴォルデモート卿の呪文が自分へと跳ね返ったためと言われている。
当事者のハリーには、最後に聞こえた飄々としていて、どこか安心させてくれるダンブルドアの声が幻だったのか、ニワトコの杖に最後に残していた魔法だったのかは、今もわからない。
たしかに言えるのは、多くの犠牲で得られた残された者への幸せだけ。
ハリーとシリウスのその後
「ホグワーツの戦い」が終わり数カ月、ハリーと名付け親のシリウスは「ゴドリックの谷」にあるポッター家を改修して暮らしていた。
18年前の「ポッター家襲撃」後そのままにされていた家は、遊び心の絶えない建物に修復される。
元々の建物に増築を加えて、隣り合わせになったガレージ付きの離れも建てられた。
食事を共にし、修理された魔法のバイクでツーリングに出かけ、訪れる友人達と庭でパーティを楽しむ。
ありふれた、だが子どもの頃の大半が孤児だったハリー、青年のほとんどを囚人として暮らしていたシリウスには新鮮な日常だった。
ハリーがホグワーツの最後の学期、特別の補習期間へ出かける前日にも客人は訪れた。
キングズリーの訪問
何度か訪れたことのあるキングズリー、今日は手荷物もなく、朝食の片付けもすまない時間に訪れた。
玄関先から居間までの廊下で何度かやり取りがあったのだろう。
シリウスとキングズリーの2人は、談笑とはいえない目線を交わしていた。
「ダンブルドア襲撃に関わった死喰い人は、“シリウス・ブラックが学生時代に使っていた魔法のキャビネットを使いホグワーツに侵入した”と証言している」
「まさか、次期魔法大臣が決まっているような君が、そんなたわ言を信じてるわけじゃないだろう?」
「もちろん。だか、魔法のキャビネットはブラック家の所有物。そして君は襲撃の夜、聖マンゴにはいなかった」
シリウスの「馬鹿げている」といった身ぶりに一度目を閉じたキングズリー、深みのある低い声で応じていた。
「私は、たしかに聖マンゴにはいなかった。その頃にはベッドを抜け出し、ダンブルドアの命令でリーマスと旅に出ていたからな」
シリウスの目が覚め、ハリーたちが「死の秘宝」を探す旅に出るときには独自に行動していたことは何度も聞いていた。
それが、今さら何の問題があるのだろうか?
「ダンブルドアの死を知ったのは旅先でだ。その後は、ニワトコの杖の情報を手に入れるためにリータ・スキーターに小銭を渡しダンブルドアの関係者を探っていた。もっとも、あの女記者は私の得たい情報で金儲けをしただけだが、ヴォルデモートが杖の情報を手にするまでの時間稼ぎにはなったはずだ」
「リータ・スキーターは君から金をもらいバチルダ・バッグショットに忘却術をかけたとは証言しないだろう」
2人の会話からは、ダンブルドア襲撃事件の時にシリウスの行方が明らかになっていないことが問題ということのようだ。
「つまり、キングズリーはシリウスおじさんがダンブルドア襲撃の手伝いをした、そう言った死喰い人の証言を信じている。そういうこと?」
ハリーのもっともな問いかけに再び目を閉じるキングズリー。
「私は、死喰い人の証言は信用していない。だか、シリウスの潔白も証明できない。その事実を伝えにきた」
ゆっくりと、1つ1つの物事を整理するように深い声が流れる。
「そうだろうな。リーマスもダンブルドアももう死んでしまった」
うつむくシリウス。
絶対に、もう2度と無実の罪をシリウスに負わせたりしない!
ジャケットのポケットに入れようとした手は、隣にいたシリウスの目配せとともに渡されたクッキーで塞がれてしまう。
「報告書にはこう書いてある“ダンブルドア襲撃事件の重要参考人シリウス・ブラックは、横領した故レストレンジ家の財産を資金に、友人ルーピン夫婦の子テディ・ルーピンを誘拐し国外逃亡した”と」
いつの間にかローブに入れていたキングズリーの手から、1枚のサイン入りの書類が広げられた。
「いい出来だ。“シリウス・ブラックの追跡は現在の人員では困難を極める”と書き加えてくれるなら、私は君を魔法大臣に推薦したいね」
「そのようにする。すまないな」
シリウスの旅立ち
キングズリーが訪れた日の夕方、守護霊の呪文で急いで連絡したロンとウィーズリー一家、ハーマイオニー、ハグリッドたちが集まっていた。
「シリウスおじさん、今度はどこに向かうの?」
「幸い、6億ガリオンの資金付きだ。3年前に見つけたモロッコの別荘に向かうとしよう」
少ない荷物をバイクのサイドカーに乗るウィンキーを避けて放り込むシリウス。
不安がるハリーの視線を背中に感じたのか、ふと振り返る。
「もう会えないような顔をしているな………君は卒業すれば大人の魔法使いだ。好きに来るといい」
「ほんとうかい!?」
「あぁ。君と家族として暮らせたのは、数カ月だが…私にとっては、はじめて心を通わせられた家族だ。2回目だが、いつもそばに、ここ(心に)いる」
子どもの頃には抱きしめられたシリウスの手。
両の手を広げて一度下ろし、変わらない背丈になったハリーの胸を、拳の横で優しく打つ。
「こういうのは、私の役回りらしいが、それも悪くない」
エンジンをかけ、力強く、光のこもった視線を合わせ、赤と薄紫の空へ駆け抜けた。
あとがき
今回は、ハリー・ポッターシリーズの二次創作物で「シリウスが死なないシナリオ」を元に短編を書かせていただきました。
私自身も、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の「魔法省の戦い」のシーンでシリウスは「緑の閃光」を受けベールの向こうへ消えた」という表現は、はじめて読んだときから気になっていました。
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のセドリック・ディゴリー、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』のダンブルドア校長が死亡するシーンでは、亡くなった瞬間と遺体があることが描かれています。
物語のもう1人の主役、ヴォルデモート卿も序盤では「滅びた」と表現されているだけで死亡は確認されていないようでした。
魔法の世界でも、人の死は覆せない現実として描かれているハリー・ポッターシリーズの中で「死」というものは、「死亡する場面が描かれる」「遺体がある」ことが条件にあるのかと考えていた私。
「きっと物語後半でシリウスは蘇る」
そう思い読み進めていたことを思い出します。
妄想をよくする花水(hanami)は、いつしかシリウスが復活するならこんな感じだろうなと頭の中で思い浮かべていました。
シリウスの肉親でもある死喰い人のベラトリックスは、ジニーを攻撃したことで母親モリー・ウィーズリーの怒りを買い殺されるのが本来のストーリー。
シリウスならどうするのか?
彼なら、きっとなんのためらいもなく殺してしまうことはシリウスファンの方ならわかっていただけることでしょう。
「闇の魔術にのめり込んだ」というだけで、スネイプを死んでも構わない扱いをするほど闇の魔法使いを嫌っていたシリウスですから。
今回は、細かい描写の変化や裏付けをさほど行わず頭の中のストーリーをそのまま書き進めてみました。
ハリー・ポッターファンの方には、不快に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
本編とは、なんら関係のない1人のハリー・ポッターファンの妄想と思い、お楽しみいただければ幸いでした。
この記事を、公開するキッカケを作ってくださった井蛙はるさん (id:artart1982)、後押ししてもらえる意見をいただき感謝しております。
花水由宇
井蛙はるさん (id:artart1982)のブログもリンクさせていただきますね。
artart1982.hatenablog.com
二次創作について
本記事は、ハリー・ポッターシリーズを原作として「もしも」をテーマにした二次創作物です。
ハリー・ポッターの著者J・K・ローリングさん、並びに原作出版社は二次創作に対し寛容とのお考えを知り、本ブログの読者さまのご期待に沿えるため作成させていただきました。
記事本文へのWeb広告の表示、原作のアフィリエイトサイトのリンクを控えさせていただくことで商標利用をしていない意志を示させていただきます。
商標利用に関する参照サイト↓
Home - J.K. Rowling
「ハリー・ポッター戦争」で考える”二次創作の自由”|NEWSポストセブン
(PDF) 日本と欧米の二次創作物における物語形式の相違点:「ハリー・ポッター」 を原作として書かれたファン小説と同 人誌を検討 | Nele Noppe - Academia.edu
ハリー・ポッターシリーズの考察はこちら↓
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ハリー・ポッターシリーズのまとめはこちら↓
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