著作権の期限と文豪の作品
読書感想文のシーズンになると、夏目漱石や太宰治と文豪といわれる方の作品が文庫化されて並んでいます。
気になったのは、複数の出版社から同じ作品が出版されているのことです。
いくつもの出版社が文庫版を増版するのは著作権法違反にならないの?
その謎に迫るために、著作権について調べてみましたよ。
著作権とは?
著作権(copyright)は、国内の著作権法、国際法で保護される芸術作品の作者の権利のことです。
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著作権法第17条
著作者は、次条第1項、第19条第1項及び第20条第1項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第21条から第28条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
日本の著作権法では、芸術作品に対する作者の財産権を主に定めています。
Webや紙の本に関する著作権では、本を含む書物、スピーチや記事を含む言葉の情報、音楽や絵画、ロゴなどの商標などです。
日本国内の著作物は、公開されるとすぐに著作権が生まれます。
紙の媒体や公的な記録のほか、もちろんWebコンテンツ内での公開でも著作権は発生します。
歴史的な作家さんの著作権は?
紙の本やWebサイトの情報は、公開されるとすぐに著作権が生まれます。
Webサイトのコピーや漫画の無断掲載は著作権法違反で問題視されていますが、紙の本はどうなのでしょうか?
夏目漱石の著書を再版するのは著作権違反?
読書感想文のシーズンになると気になることは、夏目漱石の『こころ』や『坊ちゃん』の文庫版が複数の出版社から表紙と解説を変えて出版されていることです。
夏目漱石の『こころ』『坊ちゃん』は新潮文庫と集英社文庫からブックカバーの違う本が出版されています。
同じように、太宰治の『人間失格』は角川文庫と新潮文庫から出版されていました。
なぜ、明治から昭和にかけての文豪の作品は複数の出版社から文庫化されるのでしょう。
大手出版社が、著作権法を知らないはずはないですよね。
文豪の子孫の方が、複数の出版社に著作権を譲ったのでしょうか?
著作権には期限があった
その答えは、著作権の期限にありました。
著作権法第17条
著作者は、次条第1項、第19条第1項及び第20条第1項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第21条から第28条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
著作権の期限
実名の作家:著作者の死後70年
変名・無名の作家: 作品の公表後70年、死後70年が明らかな場合は死後70年
団体: 作品の公表後70年、創作後70年以内に公表されない場合は創作後70年
著作権法によると、作品の著作権は実名の作家さんの死後70年で権利が失われるとあります。
また、ペンネームや無名の作家さん、亡くなったことが公表されない方は作品の公表後70年で著作権が失われるとあります。
夏目漱石や森鴎外などの文豪は、亡くなってから70年は過ぎていて、既に著作権が失われているのですね。
著作権と作品の引用
著作権のある作品をそのまま出版したり、Webサイトに掲載するのは著作権法違反になってしまいます。
ですが、著作権法では「引用」という形で著作権のある作品を利用することができます。
引用の目的
⑴目的:引用を行う必然性のあるときに行う
⑵対象:出版、公開された作品を引用する
⑶内容:紹介、参照、論評の目的で自作の内容と引用の内容を「主従関係」にする
⑷引用と本文の区別
著作権のある作品を、「紹介、参照、論評の目的」で自分の文章と作品の文章を区別することで、ご自分の作品やWebサイトに引用することができます。
引用に必要な情報
①著作物名
②出所
③著作者名(わかっている場合)
著作権のある作品を引用する場合、3つのことを書くことが必要です。
著作物名は本のタイトル、出所は単行本のタイトル、連載作品なら掲載されている雑誌や新聞のタイトルになります。
著作者名は、作家さんの名前です。
最近の作家さんは、何かしらの名前を名乗って本を書かれているのでわかりやすいですね。
引用のお話はこちらにも詳しくまとめてありますので、ご参考になればと思います。