小説が大衆文学と純文学に分けられる理由
芥川賞や直木賞が近づくと、本好きとしては純文学と大衆文学の違いが気になったりします。
小説が身近ではない方にとっては、ちょっとわかりづらい小説の分け方でもあります。
今回は、2つの分け方はいつから始まったのかをテーマにお話をさせていただきますね。
芥川賞は純文学、直木三十五賞は大衆文学、具体的な分け方は?
文学賞の季節になると、「純文学」「大衆文学」といった小説のジャンルが注目を集めます。
2000年代では、垣根が曖昧になったといわれていますが、芥川龍之介賞は純文学、直木三十五賞は大衆文学の小説を対象にしています。
文学は明治から大正にかけて純文学と大衆文学に分けられた
純文学と大衆文学の違いは、小説のブームが沸き起こった明治から大正、そして昭和の戦前の間に確立されたのが有力な説といわれています。
純文学の確立
日本の純文学の定義は、明治時代の作家 北村透谷によって「学問のための文章でなく美的形成に重点を置いた文学作品」とされました。
大衆文学の確立
純文学と比較して、「娯楽性」を重視した作品が大衆文学と呼ばれるようになったのも明治の終わりから大正にかけてです。
大衆文学の面白さを世の中に広めた作家さんでは、谷崎潤一郎さんが知られています。
純文学と大衆文学は作風の違い
純文学は作品の「芸術的な表現」を大切にしています。
また、大衆文学が大切にする娯楽性は、取り上げる「テーマ」であったり、物語の「ストーリー」であったり、登場人物の「キャラクター」であったりします。
2つの文学の違いは、小説の作風にあるということになります。
現代では曖昧な純文学と大衆文学の垣根
純文学は、芸術的な表現と世界観が描かれた作品。
大衆文学は、テーマやストーリーの面白さが含まれる娯楽性の高い作品。
ですが、ここ10数年は純文学を対象にした芥川賞でストーリーの面白さが売りの作品が受賞することもあります。
その逆も起こっていて、大衆文学作品を対象にした直木賞や山本周五郎賞で独特の世界観が描かれた作品が受賞することも珍しくはありません。
純文学と大衆文学の垣根は、より曖昧になりつつあります。
なぜ残っているのだろう?
垣根が曖昧になった現代で、なぜ純文学と大衆文学という小説の種類が残っているのでしょう?
時代に合わせて、ビジネス小説、ミステリ小説、青春小説の分け方がわかりやすいのではと思われるかもしれません。
作風にこだわりなく小説を読む花水(hanami)も、実はそう思っています。
やっぱり文学賞の選考基準
読者目線では、垣根が曖昧になったなら純文学と大衆文学という分け方をなくしてもいいのかもしれません。
作家さん目線では、やはり作品を仕上げるためにわかりやすい目安があった方がいいのでしょう。
純文学の芥川賞や大衆文学の直木賞を目指して、作品を書かれている作家さんもおられるはず。
見ていて違いが少ないから、砲丸投げと円盤投げを同じ競技にするわけにはいかないはず。
作品選びというより、文学賞の選考基準の役割が大きい純文学と大衆文学も、大切な小説の分け方には違いがありません。
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