本の賞の種類には何がある?注目したい8つの大衆文学の文学賞
「小説の賞シリーズ」、今回は大衆文学の賞のお話です。
多くのジャンルがあって、ひとまとめにできない大衆文学・エンタメ小説。
そこで人気作品も多く有名な、直木賞と角川春樹小説賞をはじめ8つの賞を選びましたよ。
文学賞の特徴と大賞作品を紹介していきますね。
ひとまとめにできない大衆文学
純文学が小説の芸術性を重視しているのに比べ、小説のテーマとストーリーの面白さを重視しているのが大衆文学と言われています。
以前、純文学と大衆文学のお話をさせていただきましたが、新たな発見もありました。
それは「エンターテインメント作品」「エンターテイメント小説」と呼ばれる呼び方。
最近では、推理小説、SF小説、ファンタジー小説とジャンルの広まった大衆文学をまとめる用語としてはエンターテインメント作品、エンターテイメント小説と呼ばれているようですね。
文学賞の募集でも、ほとんどの賞で「エンターテインメント作品(エンターテイメント小説)を募集します」とありました。
細かく分類はしないで、広く楽しみのある小説を募集しますよということなのでしょう。
既に発表された小説が対象の文学賞
単行本や雑誌連載のように、既に出版・発表された小説が大賞の文学賞では直木三十五賞が有名ですね。
他にも、山本周五郎賞、吉川英治文学賞のように大正から昭和にかけて活躍された文豪にちなんだ文学賞が知られています。
直木三十五賞(直木賞)
対象: 既に発表された長編小説もしくは短編集
主催: 公益財団法人 日本文学振興会
選考: 浅田次郎、伊集院静、北方謙三、桐野夏生、髙村薫、林真理子、東野圭吾、宮城谷昌光、宮部みゆき
賞金:正賞は懐中時計、副賞100万円
公式サイト: 直木三十五賞|公益財団法人日本文学振興会
芥川賞と同じくらい有名で、年に2回の受賞作が気になるのは直木三十五賞(直木賞)ではないでしょうか?
本来の対象は、「新人作家よる大衆小説作品」といわれていました。
現在では、新人作家さんというよりもベテランの作家さんの文学賞になっています。
現在の対象では、「新人及び中堅作家による大衆小説作品に与えられる文学賞」とあり、ベテランの人気作家さんの文学賞と位置付けられています。
選考は芥川賞と同じ年2回、12月から5月までの上半期は7月、6月から11月までの下半期は翌年の1月に発表されています。
選考委員に東野圭吾さん、宮部みゆきさんがいることで「芸術性よりもストーリー重視」の大衆文学らしさがあるのではないでしょうか?
山本周五郎賞
対象:既に発表された小説、その他の作品
主催: 一般財団法人 新潮文芸振興会
選考: 石田衣良、荻原浩、角田光代、佐々木譲、唯川恵
賞金: 記念品、副賞100万円
公式サイト: 山本周五郎賞 | 新潮社
対象は既に発表された小説とありますが、選考期間内に販売された単行本から選ばれることがほとんどです。
選考は4月から次の年の3月まで、選考会の記録や選考委員の書評を新潮社の雑誌『小説新潮』に掲載して、どのように選考したかを明らかにしていることが直木賞との違いといわれています。
選考委員には、多くの方に読まれた『池袋ウエストゲートパーク』の石田衣良さんが有名ですね。
吉川英治文学賞
対象:既に発表された小説、大衆文学
主催: 公益財団法人吉川英治国民文化振興会
選考: 浅田次郎、五木寛之、林真理子、各出版社の編集者、一般文化人
賞金: 賞牌、副賞300万円
公式サイト::https://www.kodansha.co.jp/award/yoshikawa_bg.html
吉川英治文学賞は、講談社が後援する公益財団法人吉川英治国民文化振興会が運営する文学賞です。
対象作品は、1月1日から12月31日に出版された大衆文学から選ばれます。
受賞者にはベテラン作家さんが多く、直木賞に近い印象を受けますが、1つだけ特徴があります。
2014年に東野圭吾さんの『祈りの幕が下りる時』、2010年に重松清さんの『十字架』が受賞されているように、ミステリ作品が選ばれることもある文学賞でもあります。
読み応えのあるベテラン作家さんの作品に出会える、とても歴史のある文学賞といえるでしょう。
公募の新人文学賞
公募の新人文学賞とは、文学賞主催者が小説の原稿を募集して審査する文学賞です。
新しい作家さんを発見する目的も兼ねていて、受賞作品は実際に単行本として出版されています。
他にも注目の文学賞は、ポプラ社小説新人賞、日本エンタメ小説大賞、暮らしの小説大賞を選んでみました。
角川春樹小説賞
対象:未発表の長編小説((ミステリー小説、時代小説、ホラー小説、ファンタジー小説、SF小説、その他)
主催: 株式会社 角川春樹事務所
選考: 北方謙三、今野 敏、角川春樹
賞金:記念品、賞金100万円、単行本化の際の印税
公式サイト: https://www.kadokawaharuki.co.jp/newcomer/
角川春樹小説賞は、角川春樹事務所が主催する、未発表の長編小説を対象にした文学賞です。
興味深いところは、小説のジャンルは問わないとされているところではないでしょうか?
募集期間は11月の第4木曜日、発表は翌年の6月下旬。
受賞作は単行本化され、角川春樹事務所の規定の印税が支払われるようです。
ポプラ社小説新人賞
対象:未発表の長編小説(ジャンルは問わず)
主催: 株式会社 ポプラ社
選考:ポプラ社編集部
賞金:記念品、賞金200万円、出版後の印税
公式サイト: ポプラ社
ポプラ小説新人賞は、かつてはポプラ社小説大賞と呼ばれていた文学賞。
ジャンルを問わない未発表の長編小説を対象にしています。
他の文学賞に比べて特徴があるのは、選考方法です。
現役のポプラ社編集部が、作品の出来栄えから、「多くの方に読まれる作品か?」といった実際に出版後に売れるのかまでを審査する点。
自称作はポプラ社から出版されますが、実際の出版会議を経たお墨付きもあり小説家として暮らしていきたい作家さんには魅力的な賞なのではないでしょうか?
募集は6月末日、その年の12月に発表が行われています。
日本エンタメ小説大賞
対象:未発表の長編小説(ジャンルは問わず)
主催: 日本エンタメ小説大賞実行委員会(カルチュア・コンビニエンス・クラブ、ニッポン放送、リンダパブリッシャーズ)
選考:石田雄治(第1回)、久保田修(第2回)
賞金:20万円
公式サイト: 日本エンタメ小説大賞受賞作・候補作一覧1-4回|文学賞の世界
日本エンタメ小説大賞は、他の文学賞とは大きく異なる特徴があります。
それは、作品の面白さだけではなく、「映画の原作小説」として映画化をする目的で作品を募集していること。
審査委員も『のぼうの城』や『るろうに剣心』の映画プロデューサー久保田修さんが務めています。
他にも受賞作品の著作権は作家さんが持っていていいとされています。
小説家デビューとシナリオライターデビューの両方が叶うかもしれませんね。
募集締め切りは3月末日、発表は6月になっていましたよ。
暮らしの小説大賞
対象:未発表の中編小説、長編小説
主催:産業編集センター出版部
選考: 産業編集センター出版部
賞金:100万円
公式サイト: 暮らしの小説大賞
暮らしの小説大賞は、私も今回調べてみて初めて目にした文学賞でした。
「生活の、もっと身近に小説を」をテーマに、ジャンルを問わない「心をゆさぶるエンタテインメント小説」を募集しています。
募集の締め切りは11月末日、翌年の5月に発表、そして産業編集センター出版部から単行本が出版されます。
今年2019年の発表が第6回と、まだまだ始まって間もない文学賞ですが、受賞作には興味を惹かれる作品が多くありました。
花水(hanami)の興味が湧く作品もあったので、面白そうな作品を取り上げて紹介していきたいですね。
注目の大衆文学(エンターテイメント作品)の文学賞は?
今回紹介させていただいただけでも、8つもある大衆文学の文学賞。
大衆文学の文学賞には、直木賞のように既に発表された小説が対象の文学賞。
角川春樹小説賞のように、作品の原稿を募集して新人作家さんを発見する目的の文学賞があります。
本当に本が読みたくなる読書のブログでは、今年は吉川英治文学新人賞と山本周五郎賞に注目して受賞予想に取り組んでいます。
もうひとつ面白いなぁと思えたのは、暮らしの小説大賞です。
こちらは、公式ページから過去の受賞作品を見てみるとすごく興味の湧く作品ばかりでした。
また、過去の受賞作品も本屋さんで探してみて紹介させていただきますよ。
芥川賞・直木賞・吉川英治文学新人賞・本屋大賞の関連リンクはこちら
文学賞のまとめ
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暮らしの小説大賞
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吉川英治文学賞・吉川英治文学新人賞
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